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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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474:89-1

【AIOライト 89日目 13:24 (2/6・晴れ) ドウの地・南西の草原】


 ウハイへの移動四日目。

 午前中はこれといった変化は見られなかったが、午後になってくると周囲の風景に変化が生じ始める。


「何だか緑が少なくなってきた感じがありますね」

「そうだな。茶色の部分が増えて来ているし、空気も乾燥してきている」

 南西の草原はサバンナモチーフであるため、元々茶色が多めの場所ではある。

 だがその茶色は岩や草木の色であり、地面の色ではなく、茶色は茶色でも緑に近い茶色の方が多かった。

 しかし、今俺たちの周囲では確実に黄色に近い茶色が増えて来ており、それに合わせるように空気の乾燥度合いも強まっていた。


「だがまあ、ウハイに近づくのならば当然の事なのかもな」

 もちろん、空気と風景に変化が生じた理由に心当たりはある。


「南の砂漠、でしたっけ」

「ああそうだ」

 俺たちは今同盟街・ウハイに向かっている。

 だが、ドウの地はそこで終わりではなく、もっと先にまで続いている。

 そして、ウハイがある場所よりも更に東に向かった先にあるのは……ドウの地・南の砂漠。

 どこまでも乾燥した砂の大地が続き、昼は暑さに、夜は寒さに襲われる過酷な環境である。


「死に戻り前提で挑んだ調査班が掲示板に上げてくれた情報によれば、少なくとも丸三日の間は目標物になるようなものはなにもなく、ただひたすらに砂の砂漠か岩の砂漠が続くらしい」

「岩の砂漠?」

「砂漠と言う言葉自体には極端に乾燥した場所と言う意味しかないからな。まあ、岩が多くても砂が多くても過酷な環境には変わりない」

「なるほど」

 踏破には自らの現在地を知るための手段が必要なのは当然の事として、レベル30代のモンスターとやり合えるだけの実力、最低でも暑さか寒さのどちらかに対処する装備品やアイテムの類が必要になるという予測が立っている。

 また、予測には出ていなかったが、流砂のような天然の罠にも注意が必要になる事だろう。

 なお、最終的に調査班はワンダリングモンスターであろうプレンセンティピードLv.50に遭遇し、壊滅、全員が死に戻りしたとの事である。


「でもそうなるとサハイの方の雪原も……」

「まあ、雪か砂かという差はあれど、だいたいは同じようなものだろうな」

 で、対を為すであろう南の砂漠がそんな状況であるならば、北の雪原も同じようなものであると考えるのは至極妥当な流れだろう。

 現にこちらも死に戻り前提の調査班が出ているのだが、少なくとも二日で行ける範囲には何も無い事が分かっている。

 気候関係の対策が寒さだけで済むのは北の雪原のいいところだが、それ以上にクレバスのような天然の罠が多く、罠対策は必須であるという結論が出ている。


「ま、俺たちが行くならメンテナンス後に同盟の彩砂を手に入れてからだ。それにたぶんだが、その頃には攻略組がどちらかは踏破しているだろ」

「そうだといいんですけど……」

 どちらの調査もメンテナンスが近いために死に戻りは勿論の事、時間切れになったらなったでと言うスタンスで行われた物であるが、とても有意義な情報である。

 なので、俺としては存分にそれを生かさせてもらうつもりである。

 幸いにして、暑さ対策については少し考え付いたことがあるしな。


「と、そろそろだな」

「そろそろ?あっ……」

 さて、そうして話をしつつ、採取と戦闘もやり、移動を続ける事数時間。

 日が傾いてきた頃、俺たちはちょっとした岩の丘の頂上に立つ。


「これが……砂漠……」

「ああそうだ」

 そこから見えたのは、夕陽に照らされてオレンジ色になった砂の大地が見渡す限り何処までも続く光景。

 風によって大きく波打った砂の山はそれだけでプレイヤーの行く手を遮る壁となり、目標の見えない旅路はそれだけでプレイヤーの精神を大きく削ることになるだろう。


「でだ」

 が、今の俺たちの目標はこの砂漠に挑む事ではない。

 なので俺は視線を北に向ける。


「あそこに見える岩のドームの中にウハイがある」

 十数キロメートルほど離れた場所に在るのは巨大な岩山であり、背後にそびえる山脈よりもかなり小さくはあるが、それでもなお巨大とは言える岩の塊。


「え?どう見てもただの岩山なんですけど……」

 当然ながら、俺の言葉にシアは疑問の色を呈する。

 実際俺も掲示板で知らなければ、見過ごしていただろう。


「此処から見る分にはな。ただ、上から見ると分かるらしいが、採光用の穴が幾つも開いていて、麓の部分には中に入るための洞窟もあるそうだ」

 だが、間違いなく同盟街・ウハイはあの岩山の中に在る。

 そこはスクショ他、番茶さんたちの書き込みでも確認済みである。


「ま、そう言うわけでだネクタール」

「ーーーーー」

「あれ?行かないんですか?」

「ああ、今日は此処までだ」

 俺はネクタールを展開する。

 ここからウハイに辿り着くだけでも後一時間はかかるし、その後は錬金術師ギルド・ウハイ支部に辿り着かないといけないからな。

 そこまで考えると、流石に今からじゃ時間が遅すぎる。

 それにだ。


「たぶんだが、色々と準備を整えてから行った方が良さそうだからな」

「準備ですか?」

「ーーー?」

 ウハイの目前、小さ目の岩が乱立している辺りから、微妙に嫌な気配が漂ってきている。

 そう、一筋縄ではいかないという気配が。


「じゃ、移動するぞ」

「あ、はい。分かりました」

「ーーー」

 そうして俺たちは今日の移動を切り上げた。

08/09誤字訂正

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