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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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471/621

471:87-1

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 87日目 07:05 (4/6・雨) ドウの地・南西の草原】


「さて行くか」

「はい、マスター」

「ーーーーー」

 ウハイへの移動二日目。

 俺たちはヘスペリデスの外に出ると、早速移動を開始する。


「ところでマスター、一ついいですか?」

「なんだ?」

 さて、ドウの地・南西の草原であるが、このマップは一言で言ってしまえばサバンナである。

 その事を示すように、大地は空から降ってくる雨を際限なく飲み込み、時折ある木々の他には足首から腰ほどの背丈の草や泥だまりにしか見えないような池があるだけの乾燥したマップである。


「どうして今回の移動では他のプレイヤーと一緒に行こうとしなかったんですか?」

「んー、理由は幾つかあるな」

 そんなマップを時折採取を挟みつつ、俺たちは歩いて移動していく。

 当然ではあるが、人数が少ないためにその移動は速い。


「まず単純にメンテナンスが近くて、ゆっくり行っていると間に合わない可能性があるから」

「それはまあ、ありますね」

「ブモッ!」

 と、ここで巨大なウシ型のモンスターであるプレンバイソンLv.25が俺たちの事を発見して、突っ込んでくる。


「ブモオオオォォォ……ブモッ!?」

「よっと。それから、俺の知り合いがあのタイミングだと誰も居なかったというのもあるな」

「『癒しをもたらせ』。ああ、そう言えばマスターの知り合いにはヒタイでもケイカでも会いませんでしたね」

 俺はネクタールと協力してプレンバイソンの攻撃を正面から受け止める。

 ダメージは殆ど無い。

 体格差は相当あるが、押し負けることもない。

 どうやら戦闘レベルの差がかなり出ているようだ。


「俺と一緒に行動するって事は一日の終わりにはヘスペリデスに招くって事だが、流石に赤の他人をヘスペリデスに招くのはちょっと思う所もあってなぁ」

「主に堕落を招くという意味で、ですか?」

「ブ、ブモオオォォ!?」

 と言うわけで、ネクタールにプレンバイソンを力技で抑えこんで貰いつつ、俺とシアは攻撃。

 プレンバイソンのHPバーを削り切り、沈める。

 剥ぎ取りは……レア度:3のプレンバイソンの肉か。

 今日の素材の集まり具合次第だが、これは昼か夜の食事に使ってもいいかもな。


「そう言う事だな。どうにもトロヘルたちの様子を見る限り、ヘスペリデスは魅力的なんてレベルでは済まないようだし」

「えーと、ギニョールの携帯工房を見た事がある私に言わせてもらうと、ヘスペリデスが桁違いに居心地がいいのは間違いないです」

 さて、剥ぎ取りも負えたところで移動再開である。


「そうなのか?」

「そうですね。ギニョールの携帯工房は錬金術師ギルドのレンタル部屋と同じような感じでしたから」

「そうか、一部屋だけなのか。そうだな……PTのプレイヤーだけ収めるとしても六人があのサイズの部屋に一緒に入って、寝たり食事をしたりってのは、確かにツラいものがあるかもなぁ」

「実際、ツラいとはギニョールは言っていましたよ」

 ここ南西の草原に出現するモンスターは先程のプレンバイソン以外にも当然居る。

 具体的に言えば、


・鬣を持つリーダー個体が鬣を持たない個体を指揮して組織的に襲い掛かってくるプレンライオン

・キロメートル単位で離れていてもこちらを発見し、襲い掛かってくるプレンイーグルにプレンヴァルチャー

・足の速さを生かして集団で突撃してくるプレンオストリッチ

・鎧のような身体と鋭い角を持つプレンライノ


 等であり、他にもプレンゴブリンやプレンウルフ、プレンリザード、プレングラスなど、かなり多様なモンスター構成になっている。


「なので、その内作り直すとは言っていましたね。ヘスペリデスで出来るのかは分かりませんけど、携帯工房を分解することで、携帯錬金炉と結界石を回収する事は出来るそうですから」

「あー、だったら今頃はシュヴァリエと一緒にサハイ周辺からの帰還も兼ねて、自動生成ダンジョンを攻略しているかもしれないな。サハイからケイカまで歩いて行くよりはそっちの方が幾らかは早いし、色々と得がある」

 まあ、当然と言えば当然なのだが、どの敵も今の俺たちにとっては雑魚以外の何ものでもない。

 プレンライオンとプレンヴァルチャーが同時に襲い掛かってきた時ですらも、苦戦をしたとは言い難いレベルだったしな。


「もうじき日が暮れますね」

「そうだな。行程としては、これで全体の半分程度。早ければ明後日には着くかもしれないな」

 そうして戦闘をこなしながら移動し続けていると、やがて地平線の向こうに夕日が沈み始める。

 今日はもう移動を切り上げるべきだろう。


「とは言え、問題はここからか」

「問題?」

 俺はネクタールを展開する前に、今俺たちが居る場所から見て北東の方角、ケイカの真東の辺りへと視線を向ける。

 かなりの距離があるので分かりづらいが、そこには噴煙を上げている火山が存在している。

 そして、火山と俺たちの間には火山ほどではないが高い山々が聳え立ち、普通の方法では侵入する事が出来ないようになっている。


「ローエンが掲示板に書き込んだ通りなら、この辺りから、火山からのモンスターが時折来る事があるらしい。具体的にはプレンドラゴンとかプレンジャイアントだそうだ」

「……」

「そして、そいつらのレベルだが……低いのでも50、高いのだとそれ以上のも居たらしい」

「ワンダリングモンスターですか」

「あるいは火山のモンスターが暇を持て余して、降り易い方に降りてきているんじゃないかって話だ。いずれにしても注意は払っておくべきだろうな」

「そうですね。気を付けます」

 そうして注意を改める事を決めた俺たちはヘスペリデスへと移動し、今日の移動を完了した。

 尤も、夜は夜でやる事があるわけだが。

 なにせ今日の採取と剥ぎ取りで、保持しておきたい分を差し引いても、ヘスペリデス内に存在しているレア度:3のアイテムが100個を超えたのだから。

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