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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編
466/621

466:86-1

【AIOライト 86日目 06:15 (5/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】


「そうか、もうそんな時期だったか」

「何の話ですか?」

 翌朝、食堂で朝食を摂っていた俺の下に一件のメッセージが飛んでくる。

 差出人はGM。

 内容は……


「『メンテナンスのお知らせ』が来た」

 丁度一週間後、93日目にメンテナンスが行われるというお知らせだった。


「へ?あ、そう言えば……そうですね」

「ーーーーー」

「メンテナンスですかー?」

「ああ、ラードーンは初めてだったか。まあ、簡単に言ってしまえば、俺たちは一日中だらりとしていられる時間だ」

「素晴らしいですねー♪」

 詳しい内容としては、現実時間2021年10月1日、ゲーム時間93日目、丸一日を使ってメンテナンスを行う。

 メンテナンスの内容としては新モンスター、新アイテム、新ダンジョン、新特性の追加、一部UIの調整と変更。

 ま、この辺りはいつも通りだな。

 問題はプレイヤーの入れ替えが在るかどうかだが……


「マスター、プレイヤーの入れ替えについてはどうなんですか?」

「んー、今回のメンテナンスではプレイヤーの入れ替えは無しみたいだな」

「そうなんですか」

 どうやらないらしい。

 そして、俺の言葉にほっとしたのか、シアが安心したような表情を見せている。

 ただ……問題が無いわけでもない。


「代わりにユーザー数6万人を上限として、現在空いている枠に新規プレイヤーを募集、受け入れるとは書いてあるな」

「えーと、それって……」

「だいたい3000人ぐらいの新規プレイヤーが入ってくる。と言う事にはなると思う」

「トラブルが起きますか?」

「ほぼ確実に起きるな。ま、最悪、前回と同じように朝一でヒタイ全域にメッセージを飛ばして、面倒事の芽を潰すだけだな」

 今回のメンテナンスでは新規プレイヤーの参入がある。

 これで問題が起きない方がおかしいだろう。

 ただ、現実の政治がらみのトラブルについては……向こうで何とかしてほしいものである。

 それでもゲーム全体の流れが良くない方に向かおうとするならば、その流れはシアの為にも、俺自身の為にも、無理矢理にでも終わらさせてもらうが。


「後、気になるのはメンテナンス中にヘスペリデスがどうなっているかだが……ああ、追加のメッセージが来たか」

「なんて書いてありますか?」

「えーと、ヘスペリデスは俺のスマホに入りきらない量の情報を有しているので、こちらで別途サーバーを用意します。だそうだ。それで、俺のスマホは観察用の窓代わりになって、シアたちは一日ヘスペリデスの中で過ごしてもらう事になりそうだな」

 と、ここで明らかに俺個人向けのメッセージでGMから追加のメッセージが来る。

 基本的な内容は俺が言った通りだが……まあ、実際の所ヘスペリデスはそれ一つで独立した世界だからな。

 別サーバーを用意するなど当然出来ないし、する必要もない。

 そもそも最近じゃ『AIOライト』が普通の人間が想像するようなサーバーで運用されているのかも割と怪しくなってきている。

 となればこのメッセージはシアに対する偽装工作を目的としたものと考えるのが妥当だろう。


「それってつまりー?」

「ラードーンはメンテナンスの日も仕事有りだな」

「そんなー……」

 それと、ラードーン、休みが無くなったと嘆いているようだが、俺は知っているぞ。

 昼間、俺たちが居ない間はミニラドンたちに任せて自分はグータラし続け、夜も隙を見ては休んでいる事を。

 ミニラドンは自分の一部であると言う言い訳が通用するかも怪しいくらいグータラしているせいで、付いても良い部分と付いてほしくない部分の両方にちょっと肉が付き始めているのを。

 うん、いい機会だから、メンテナンスの日にはシアに指導されるといい。


「ま、メンテナンスについてはこれくらいだな。後は今日の予定だが……とりあえず還元炉の方を色々と確認しないとな」

「あれ?昨日、機能を追加した時に確かめなかったんですか?」

 さて、今日の予定だが、まずは還元炉のチェックである。

 と言うのもだ。


「なんだかんだで死に戻りをして疲れていたみたいでな。確かめるのをすっかり忘れてた」

 昨日やるをの忘れていたからである。


「何だかマスターにしては珍しい気がしますね」

「まあ、急いで確かめるような事でもなかったからな」

 そんなわけで、今日はまず還元炉のチェックである。

 何が作れて、何が作れないかによって、その後にするべき事も大きく変わって来るので、これは当然とも言えるだろう。


「そう言うわけだから、シアも午前中の時間で、自分で確かめられることについては確かめておいてくれ」

「んー、そうですね。昨日の内に確かめられた事以外もあるかもしれないので、そうさせてもらいますね」

 俺はシアが新たに造り出した杖、アナスタシアに目を向ける。

 金と白の二色で彩られた装飾らしい装飾のない杖だが……うん、俺が作って与えた『呪詛招く樹の王』の礫蔓杖とは出来の次元が違うな。

 とても強い繋がりもシアとの間にあるようだし、その力の隅々まで把握しておくことはシアにとって必要な事だろう。


「それでマスター、午後はどうしますか?」

「現状の予定ではケイカに飛んでから、同盟街・ウハイを目指す。どうにもサハイから東に進むには、相応の対策が必要そうだからな。その為のアイテムを集めるついでに、ウハイを目指した方が効率が良い」

「分かりましたマスター」

「ーーーーー」

「了解ですー」

 そうして朝食を摂り終えた俺たちは、それぞれに行動を始めた。

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