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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編
463/621

463:85-5-A1

【AIOライト 85日目 12:45 (満月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】


「それでマスター。この後はどうしますか?」

 ギョクローに対して情報提供を行った後、ゾッタ、シア、ネクタールの三人はヘスペリデスに移動すると、昼食を取った。


「この後か……俺はまず還元の白枝の処理だな。だから、シアとネクタールは自由行動でいいぞ」

「食器おさげしますねー」

「ーーーーー」

 シアの質問に対して、ゾッタはラードーンに食器を渡しつつ答える。

 そして、その質問の答えに応じるようにネクタールはゾッタから離れると、布の身体を巧みに伸び縮みさせることによって自分に与えられている部屋へと向かう。

 ネクタールが自室で何をしているのかはゾッタもシアも知らない事だが、どうやらネクタールはネクタールなりに自分の部屋を快適な環境に調節してあるようだった。


「で、シアはどうする?何か必要な物があれば出しておくが」

「そうですね……」

 ゾッタの質問にシアは少しだけ悩む。

 それから意を決した様子で口を開く。


「マスター、普通の携帯錬金炉を出してもらえますか?一つ、作りたいものがありますので」

「分かった」

 ゾッタがミデンではない特性:リジェネだけが付いている携帯錬金炉をテーブルの上に乗せる。


「じゃ、俺は還元の白枝の方を弄っているから、何か有ったらラードーンに知らせてくれ」

「はい、分かりました。マスター」

 そうしてゾッタは食堂を後にすると、ミデンが置かれている神殿がある場所……中庭へと向かう。


「ではー、この子は置いておくのでー、何か有りましたらー、呼んでくださいねー」

「ありがとうね。ラードーン」

「それが役目ですのでー」

 続けてラードーンがミニラドンを一体シア専属として付けると、食器を持って食堂の外に出ていく。


「さて、と。うん、私も気合を入れないと」

 最後にシアが携帯錬金炉を持って、食堂の外に出ていく。

 そしてシアが向かった先はヘスペリデスの屋敷の外、大樹の周りに広がる森の一角。


「この辺りでいいかな」

 そこは最近ミニラドンたちによって間伐が行われたのか、少し開けた場所となっており、周囲の陽の乏しい森の中と違って、よく陽が射し、丈の低い草花が生えている場所。

 そんな場所の中心に、シアはゾッタから預かった携帯錬金炉を置く。


「すぅ……はぁ……」

 携帯錬金炉を前にシアは自身の武器である『呪詛招く樹の王』の礫蔓杖とドウの地・北西の森で手に入れた還元の白枝を持った状態で立つと、自身の精神を研ぎ澄ますかのように目を瞑って深呼吸を始める。


「大丈夫。私にはマスターのような特別な目は無いけれど、それでも分かっている事はあるし、この還元の白枝も私を選んでくれた子だから」

 シアはゆっくりと目を開くと、携帯錬金炉の中に『呪詛招く樹の王』の礫蔓杖と還元の白枝を入れる。

 そして両手の掌を携帯錬金炉の中に向けると、掌から携帯錬金炉の中に向けて魔力を流し始める。


「私は『AIOライト』で生まれた人造人間(ホムンクルス)。それはれっきとした事実。けれどマスターは言っていた。何を以って終わりとするかを決めてこその人間である、と」

 携帯錬金炉の中の液体が泡立つと共に白く輝き始める。


「マスターは私に私自身が全てを決めるという鎖と祝福を与えてくれた。私に人間となる機会を与えてくれている。けれど、その機会を掴みとるか否か、私が人造人間である事を終わらせるかは私自身が決めること。でなければ私はただ見た目が人間になるだけで、本当の意味で人間になる事は出来ない」

 白い輝きはやがて糸のようになり、その色合いも白から金へと変わり始めていく。


「私はまだ人造人間でいい。私の中に在る錬金術と魔法の知識、それに人造人間としての立場がマスターを助けることに繋がるから。けれど、何時かはマスターが望んでいるように……ううん、私自身の望みとして人間になりたい。人間になって、マスターと、ギニョールと、シュヴァリエと、いろんな人たちと触れ合いたい」

 携帯錬金炉から湧き上がる金の糸が、宙でお互いに結び合い、絡み合い、一つの形を作り上げていく。


「それは人造人間である私の終わりであると同時に、人間である私の始まりでもある。私はそこに至りたい。大それた願いであると、傲慢な思いであると言われてもなお」

 それは一本の杖。

 白と金を主体とした色合いの、装飾らしい装飾などどこにもない簡素な杖。

 けれど見る者が見れば分かるだろう。

 その杖には誰もが羨むような輝きが秘められており、見た目からはとても想像できない程に強固な杖である、と。


「これは私の第一歩」

 そんな杖に向けてシアはゆっくりと手を伸ばす。


「まだまだ至らぬ身ではあるけれど、それでもいいならどうか私と共に歩んで、私を助けて欲しい。私も貴方を大切にするから。行こう、アナスタシア」

 シアがアナスタシアと名付けた杖を手に取る。

 その瞬間、周囲には柔らかな金と白の光が満ち溢れる。


「うん、これからよろしくね。アナスタシア」

 そして光が晴れた後、粉雪のように金と白の光の粒子が舞い踊る中、シアはアナスタシアを両手で抱き寄せ、大切に抱きしめた。



△△△△△

アナスタシア

レア度:Ex

種別:武器-杖

攻撃力:?

耐久度:100/100

特性:カース(傷つけたものを傷つけ返す)

   アブソーブ(力を奪い己の血肉とする)

   リジェネ(回復力を強化する)


それはCommonではなくSoleであり、Extraでもある。

ホムンクルス、アンブロシアが作成した金と白の二色で彩られた簡素な見た目の杖。

所有者の成長に応じてその力を増す性質を有する。

以下の起動文を発声することで、MP消費と引き換えに魔法を発動する。

『ブート』『カース』『アブソーブ』『カースウッドキング・フォースハウル』『アルケミッククリエイト』

▽▽▽▽▽

10/12タイトル変更

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