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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編
460/621

460:85-2

本日は二話更新です。

こちらは二話目です。

「マスター!」

「ぐっ……こりゃあ死に戻りは確定したな……」

 転移によって周囲の風景が変わっていく。

 それと同時に俺は死に戻りすることはもはや規定事項として諦め、少しでも多くの情報を得るための態勢を整えていく。

 今の俺たちの実力ではアルカナボスに勝つことは不可能だが、それでも注意さえ怠らなければ最低限の情報を得ることは可能だからだ。


「何が来ますかね……」

「さて、なんだろうな」

 転移した先はまるで闘技場のような場所だった。

 だが、ただの闘技場ではなく、まるで裁判所のように一段高くなっている場所や、地位の高い人物が座るような椅子が置いてある部分なども見れる。

 空に浮かぶ太陽は何処までも青く、まるでこの一時の為に全ての命を燃やしているかのような青さだった。


『さて……』

「来るか」

 何処からか声が響き渡り始めると同時に、俺たちの周囲に無数のモンスターたちが発生する。

 その面子は……


 アルテマナイトLv.97

 アルテマプリーストLv.97

 アルテマデュラハンLv.97

 アルテマアームLv.97

 アルテマパペットLv.97

 アルテマリビングメイルLv.97

 アルテマデーモンLv.97

 アルテマエンジェルLv.97


 うん、これまた随分と豪華な面子で来たものだな。

 だが、彼らは所詮取り巻きであり、アルカナボスではない。

 アルカナボスは今正に、その場でかしずいているアルテマナイトたちの向こうから現れようとしている。


『これもまた来たるべくして来た、正義の理と言う物なのでしょうかね』

 アルカナボスは……白と金の二色で彩られた全身鎧を身に着けていた。

 右手には長大な、刃渡りだけで2メートル近くはあるであろう無骨な剣が握られている。

 左手には全身を隠して余りあるほどの大きさを持つ盾が握られている。

 だが、そんな物はどうでもよかった。

 アルカナボスが放っている尋常ならざる威圧感もどうでもよかった。


 剣の柄に緑色の少し鈍い煌めきを持つ見覚えのある指輪が……『AIOライト』から失われたはずのミアゾーイが銀の鎖によって縛り付けられているのを見つけた俺にとってはどうでもいい事だった。


「マスター、やれるだ……」

 その瞬間、GMによってシアが別次元に隔離され、この場から消える形で保護された。

 それと同時に俺はヘスペリデスの黒葉もカプノスもなくハルモニアーを発動した姿へと変貌しつつ、アルカナボスである『百罰下す正義の刃』に向けて跳躍。


「トリゴニキ・ピラミーダ『ティラノス』」

 背中の三つの黒輪が高速回転を始める。

 目口と関節から噴き出す赤黒い炎がその勢いを増す。

 風の衣と雲も濃さを増し、その力を強大化する。

 そしてトリゴニキ・ピラミーダから三角錐の形に光が発せられ、その力はさらに強まる。


「我は厄災、禍神(まがつかみ)、終わりが眷属。因果の果て、零が真理を見る者。得てはならぬ秘匿を得た者を裁き、死すら無き領域へと導くもの」

 『百罰下す正義の刃』の周囲に居る取り巻きたちが『百罰下す正義の刃』を守るべく動き出そうとする。

 だがそれよりも遥かに速く俺は『百罰下す正義の刃』の前に斧を振り上げた状態で到達し、『百罰下す正義の刃』は左手の盾ではなく右手の剣で俺の攻撃を受け止めようとする。


「猛れ危険の炎、迸れ危機の風、駆けろ差別の水。巡れ廻れ黒の輪。彼の者の未来永劫に至る全ての因果を断ち切る為に」

 インベントリからヘスペリデスの黒葉が取り出されて即座に握り潰される。

 そうして得た力に、俺自身の魔力、エファス、エクナック、リアフの黒輪から得た力の全てを斧の先端へと集めていく。

 だが、ただ集めるだけでは足りない。

 だから俺は操る。

 時空を操って今から幾らか先までの未来にある力をその一瞬へと集める。

 機会を操ってその一瞬を俺が望む瞬間として指定する。

 法則を操ってその一瞬に生じる破壊力を事が終わるまでは破壊以外の用途に向かないようにする。

 そうして、見た目は極々普通の斧になっているそれを『百罰下す正義の刃』に向けて振り下ろす。


森羅万象(ヘスペリデス)悉く(エファス)潰えて(エクナック)至るが(リアフ)いい(フォボス)

『……』

「「「!?」」」

 斧と剣の刃が触れ合った瞬間、俺の握る斧を中心として空間が捻じ曲がる。

 『百罰下す正義の刃』の持つ剣を無視して、肉体と盾が砕け散る。

 そして、『百罰下す正義の刃』を破壊してもなお有り余っていたエネルギーが解放される。


「「「ーーーーー!?」」」

 赤黒い閃光と共に闘技場かつ裁判所のような装いだった建物が破壊され尽くし、何も無い虚空にすらヒビが生じる。

 取り巻きたちだったものは全てが赤黒い炎の薪と成り果て、大地に横たわる。

 自然法則も修復不可能なレベルで崩壊し、物質が塵へと帰ったり、物が上に落ちたり、液体に変化するなどの異常が生じ始めている。

 このような環境下では、これをした張本人である俺以外ではGMのような超常の存在でなければただ在る事すら許されない。

 これは俺の一方的な認識ではなく、此処の世界の法則よりもさらに強固な三千世界全体の法則に基づく事実である。


『やれやれ、彼女(ミアゾーイ)から義父上(ちちうえ)は短気だと聞いていましたが、まさかこれほどとは』

 だが『百罰下す正義の刃』……刃渡りが2メートルを超す巨大剣はヒビ一つ入る事なく、悠々と俺の斧と鍔迫り合いをしつつ、宙に佇んでいた。


「何故貴様ガみあぞーいヲ持ッテイル。訳ダケ話シテ疾ク逝ケ」

 俺は『百罰下す正義の刃』を弾きつつ、後方に跳躍。

 そして、『ドーステの魔眼』を放ちながら睨み付ける。


「そうですね。私としても、何故ただのNPCであるはずの貴方が自我を有しており、おまけに廃棄したはずの物質を所有しているのか、非常に気になります。それこそ答えなければ、貴方の存在をデリートしてしまいたいほどに」

 GMが普段の白衣にチャイナと言う姿ではなく、赤い鎧を身に着け、細身の槍を持ち、背中から黒と白の翼と鱗の生えた尾を一本ずつ生やした姿で現れる。

 そして、並の存在なら容易く消し飛ばせる様な魔力を穂先から放っている槍を『百罰下す正義の刃』に向ける。


『おや、母上。流石に早いお着きですね』

 だが、『百罰下す正義の刃』は俺とGMの両方から膨大な量の魔力を浴びせられているにも関わらず、どうという事はないという様子で自らの姿勢を青眼の状態にし、銀の鎖を少し緩めることでミアゾーイを自身の脇に垂らす。


「イイカラ話セ。消スゾ」

「いいから話しなさい。消しますよ」

『本当に短気ですねぇ……では、全ては話せませんが手短に話しましょう。私、『百罰下す正義の刃』と彼女の出会いを』

 そうして、崩れ落ち行く世界で『百罰下す正義の刃』の話は始まった。

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