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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編
458/621

458:84-2

【AIOライト 84日目 17:52 (5/6・雨) ドウの地・北西の森】


「さて、この辺りがそうだな」

 直に日も暮れようかという頃。

 俺たちは還元の白枝があるであろう領域にやって来ていた。


「ふうん、ここがそうなのね」

「さて、ある意味ここからが本番だよねぇ」

「ただの森にしか見えないですね」

 特徴らしい特徴は何も無い。

 地形にも、周囲の植生にも、徘徊しているモンスターに、発生している自動生成ダンジョンについても、目立った変化は見られない。

 極々普通の森としか思えない光景がそこには広がっていた。


「そうだな……ただの森にしか、見えてないだろうな」

「「「?」」」

 俺以外の面々の目には。


「さて、どうしたものかな……」

 そう、俺の目には目の前の領域に存在している全ての木々が、還元の白枝として……幹も葉も根も何もかもが白一色の木として見え、しかも光り輝いているように見えていた。

 だが、グランギニョルたちの目には、それに少し意識をずらして見れば、俺の目にもこの領域の木々は極々普通の木にしか見えなかった。

 さて、GMの仕掛けなのは間違いないが、これはいったいどういう事だろうな。


「……。マスター、何が見えているんですか?」

「んー、何がと言われれば還元の白枝が見えている。としか言いようが無いな」

「見えているって……どこにもそれらしい代物なんて無いわよ」

 俺は森の様子を改めて観察する。

 まずこの場の木々全てが還元の白枝である事は間違いない。

 そして、どれを使ってもミデンに新たな機能を追加すること自体は出来ると言うのも間違いない。


「ふうむ、『思索無き者の手が及ばぬ場所』……ね」

「あ、駄目だわ。シュヴァリエ。ゾッタ兄がこうなった時は教えてもらっても、自分でよく考えないと意味がないパターンだわ」

「うん、僕にもそれは何となく分かる」

「えーと、マスターは大丈夫そうですし、私はギニョールとシュヴァリエの手伝いをしますね」

 まあ、あくまでも追加できるだけだ。

 この辺にあるのでは、俺が求めている水準には届かない。

 そう考えると、途端に視界にある殆どの木々は輝きを失い、普通の木になる。


「相性、とでも言えばいいのかもな」

「は?相性?」

 恐らくだが還元の白枝には、枝一本一本とプレイヤー一人一人の間で相性という物があるのだろう。

 だが、それは当然の事と言えるのかもしれない。

 還元の白枝を手に入れる事によって出来るようになるのは、レア度の低いアイテムから所有者の知るレア度の高いアイテムを作り出せるようになる事である。

 では、全てのプレイヤーが全てのアイテムに対して同一の知識と所見を有しているだろうか?

 答えはNo、そんな事は有り得ない。

 となれば必然的に生み出せるアイテムはプレイヤーごとに異なるようになり、プレイヤーごとに生み出せるアイテムが異なる以上は、その手助けをする還元の白枝にも差が生じて然るべきだろう。

 だから、この領域の何処かに還元の白枝があるのは確かだが、どの木が還元の白枝を持つかはプレイヤーごとに異なる事になるのだろう。


「そうだな。もう日も暮れた。とりあえず今日の探索は止めておくことをオススメする。ネクタール」

「ーーーーー」

 俺はネクタールを展開し、ヘスペリデスを開く準備をする。

 そして、シアたちにどうするかを視線で問いかける。


「……。分かりました、今日はもう休みましょうか。マスター」

「そうね、この闇の中で探すのは止めておいた方が良さそうだわ」

「ちょっと師匠の言葉を考える必要があるのかもね」

「分かった。じゃ、全員でヘスペリデスに移動だ」

 そうして俺たちは揃ってヘスペリデスに移動した。



----------



【AIOライト 84日目 17:52 (5/6・雨) ドウの地・北西の森-ヘスペリデス】


「ふぅ……」

 夕食後。

 俺は浴場で一人ゆったりと湯に浸かっていた。

 そうして考えるのは、還元の白枝についてである。


「使うだけならどの枝でもいいと言うあたりは……まあ、俺が人間を辞めているからだろうな」

 還元の白枝とプレイヤーの間には相性がある。

 自分で気づかなければ意味がない事なのでグランギニョルたちには説明しなかったが、それは間違いない。

 だが、その相性というのも、所有者の側の実力次第では無視してしまえるのだろう。

 だから、最初の時点では俺の目には全ての枝が使えるように映っていたに違いない。


「もしくは掲示板で話題に出ていたリアル魔力の関係……と、これだと結局変わらないか」

 あるいはドウの地掲示板で昨日の夜遅くに話題になっていた自家製ミスリル関係の話題に出ていたリアル魔力。

 アレの影響もあるのだろう。

 尤も、俺のリアル魔力とやらについては、間違いなく人間を辞めた影響が出ているはずなので、結論は変わらなさそうだが。


「さて、俺が求める還元の白枝はあるのかね。無ければ……ま、その時はその時だな」

 さてそうなると問題は俺が求めるような性質を有する還元の白枝が存在するかどうかだが……まあ、こればかりは明日一日かけて探してみるしかないだろう。

 仮に無かったら……その時はいっそのこと、何本かの還元の白枝から自分で作ってしまうのもありかもしれないな。

 そうして俺は風呂を上がると、カプノスで一服してから眠った。

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