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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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450/621

450:83-2-S2

本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 83日目 12:25 (4/6・晴れ) WB2・『?清流の巣』】


「で、結局さっきの人型生物は何だったんだろうね?」

 戦闘終了後。

 折角なので俺たちは剥ぎ取りと採取を行っていく。

 外からの持ち込みで先に進むためのアイテムは揃っているので、これは純粋に持ち帰るためのアイテムと言う事になる。


「魔法らしきものは使っていたし、魔力の量はかなり多そうだったな」

「つまり、一気に押し切らず、マトモにやりあっていたらそれなりの被害を受けていた可能性はあるわけね」

 そんな中で話題に上るのは先程の戦闘に出現していた半透明の人型生物だ。

 俺の記憶が確かならば、番茶さんがまとめて、掲示板に上げてくれている『AIOライト』モンスター一覧にも載っていない新種である。

 今回は幸いにして行動らしい行動もさせずに倒す事が出来たが……それはこのメンバーだから出来た事、俺、シア、ネクタールの三人だけじゃ無理だったな。


「ふむ、我が思索の末に辿り着いた答えとしては、彼の者は精霊だったのではないかと思う」

「精霊?」

 と、ここで†黒炎導師†さんが新種についての意見を出す。


「根拠は?」

「そんなもの真理に辿り着かんとしている我が慧眼と深淵に臨もうとする我が知識を……」

「こ、ん、きょ、は?」

「あ、はい。根拠としてはですね。『AIOライト』では錬金術師(アルケミスト)ギルドの名前の一部に俗に四大精霊と呼ばれる存在の名前が付けられています。そして、『AIOライト』はゲームとして色々と拘っているようですので、『AIOライト』の何処かにその名の由来となるような存在が居るのではないかと以前から思っていたのです。ですが、この名前を持つモンスターは未だ確認されていません。これは色々と拘っているあのGMとしてはおかしいです」

 グランギニョルに睨まれた†黒炎導師†さんは極々一般的な口調で説明をする。

 その説明自体は非常に分かり易いもので、納得もいくものだったが……うん、何処となく†黒炎導師†さんの背中に哀愁の色が見えるな。


「ふうん、それで?」

「だから、結論として我は先程の人型生物の内、黄色い方を風の精霊シルフ、青い方を水の精霊ウンディーネと断言する。まあ、電脳世界の理上、表記される名前はエレメントかエレメンタル辺りが妥当ではあるだろうがな」

 あ、戻った。

 流石に最後まで素の口調で居続けるのは†黒炎導師†さんのプライドが許さなかったらしい。


「なるほどね。そう言う事ならさっきのモンスターの素材は色々と期待できそうな感じかしら」

「そうだね。シルフとウンディーネって言うのが本当なら、期待はしていいと思う」

 ちなみに、俺が人型生物から剥ぎ取ったアイテムは、どちらも??の欠片であり、特に繋がりの類は見えなかった。

 まあ、適当に普通のアイテムにするとしよう。


「あのー、私からも一ついいですか?」

 さて、剥ぎ取りと採取が終わったところで俺たちは次の階層に移動を始める。

 万が一巣マップが続けて出て来てもいいように、HPとMPの状態も万全にした上でだ。


「何かしら?シア?」

「おや、何かな?麗しき森人の仔よ」

 で、移動を始めたのだが、どうやらシアが何か質問があるらしい。

 片手を上げて全員の注目を集めている。


「あの†黒炎導師†さんはどうして、そんな言葉遣いなんですか?なんだか言うのが非常にツラそうな感じもしているんですけど……」

「「「……」」」

 シアの言葉に場の空気が凍りつく。


「師匠……」

「ノーコメントだ」

 シュヴァリエが俺の事を批判するような目で見てくるが、この状況では俺が何を言っても更に悪い状況に繋がる未来しか見えない。

 この場では俺は沈黙を貫く事が正解だ。


「ふ、ふふふ、麗しき森人の仔よ。一つ覚えておくがいい。漢には周囲からコキュートスの如き怜悧な視線を浴びせかけられようとも、歩く幻想が直ぐ傍に居ようとも、群衆から道化と思われようとも、貫かなければならない己と言う物があるのだ」

 流石と言うべきだろう。

 †黒炎導師†さんはシアの悪意がないが故に容赦のないツッコミにも心が折れることはなかったようだ。

 そして、その志を俺は支持しよう。

 †黒炎導師†さんは必要な時には普通の口調だって使える一般常識のある人であり、実力もきちんとある人なのだから。


「貫かなければならない己……そうですか。頑張ってくださいね†黒炎導師†さん」

「う、うむ……」

 まあ、だからこそ悪意のないシアの言葉は心の奥底にまで突き刺さるようだが。


「歩く幻想と言うか……もはや、顕現している神秘よね」

「まあ、幻想なんて次元じゃないよね」

「ちょっとウルっときました」

「今度一緒に酒でも飲もう」

 その後、どうすればそうなるのかは分からないが、†黒炎導師†さんとロラ助、レティクルさんの間には微かではあるが確かな繋がりが生じたようだった。

 ま、この後にボス戦が控えている事を考えれば、PTメンバーの結びつきが強くなるのは悪い事ではないだろう。


「さて、着いたわね。じゃ、とりあえず内部の状況について調べておくわよ」

 そうして俺たちは第十階層に到達。

 ヘスペリデスでボス戦の準備を整える前に、グランギニョルがコンソールを操作して、ボス戦のフィールドや出現するモンスターがどうなっているのかを調べた。

 結果は……


「ちっ、フィールドは『巨大な草原の墓場』、モンスターは巨大な騎士Lv.30と巨大な猟犬Lv.30。これは厄介な事になるわよ」

 どうやら芳しいものとは言えないようだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しませてもらっています [一言] 何故かたまに、✝️黒炎導師✝️の意地が読みたくなる
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