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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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446/621

446:82-8

【AIOライト 82日目 11:15 (半月・晴れ) 還元街・サハイ-ヘスペリデス】


「と言うわけだな」

「なるほど。となれば順当に考えて還元の白枝は3の塔の窓の方向に向けて直進した先にあると言う事になるのか」

「まあ、そう言う事だな」

 さて、還元の白枝の入手方法についての情報だが、俺の情報については簡単に話し終わった。

 と言うのも、地図付きのスクショは撮ってあったし、情報の内容自体も北西の森の何処かに還元の白枝があるのではないかと言うシンプルな物だったからだ。


「グランギニョルの方はどうなんだ?」

「私たちが得た情報は……そうね。使い方と言うのが正しいのかも」

「使い方?」

 と言うわけで、俺は早々に場所をグランギニョルに渡し、茶を飲む。

 気が付けばもう昼前であるし、これは情報交換が終わったらまずは昼食かもしれないな。


「1の塔ではボスを倒した後の部屋に窓や地図の類はなかったの。けれど代わりにこんな絵が飾られていたのよ」

 そう言うとグランギニョルは全員が見れる形でスクショを表示する。


「ふうん……」

 そこに表示されていたのは白い枝状の物体を、縦に二つに割り、片方を地中へ、もう片方を錬金術の釜の中へと入れている絵であり、俺の目が正しければ二つの枝の間には魔力的な繋がりが存在しているようだった。

 なるほど、これは確かに還元の白枝の使い方だな。

 そして、還元の白枝がこの絵が示している通りの物であるならば……と、通常の使い方の先にまで俺の思考が及ぼうとした時だった。


「ん?グランギニョル?スクリーンショットはもう表示しているのか?」

 トロヘルがとても不思議そうな顔をする。

 そしてよく見てみれば、トロヘル以外にも殆どのプレイヤーは困惑の表情を浮かべているし、グランギニョルとシュヴァリエの二人はやっぱりかと言うような表情を浮かべていた。

 これはどういう事だろうか?


「一つ確認させて。ゾッタ兄、ゾッタ兄には私たちのスクショは見えているのよね」

「ん?ああ、勿論見えているぞ」

「そう、ならやっぱりそう言う事なんでしょうね」

「あー、なるほどな。そう言う事か……」

 俺の言葉にグランギニョルもトロヘルも納得と同時に落胆するような表情を浮かべる。

 いや、本当にどういう……ああいや待て、もしかしなくてもそう言う事か。


「10ある還元の白枝の塔の内、どれか一つでもクリアしなければ最も重要な使い方の情報は得られない。そう言う事か?」

「正解よ。ゾッタ兄、実を言えばね。絵の横にこんな文章もあったのよ」

 俺の言葉に頷いて見せた後、グランギニョルはもう一枚のスクショを表示する。

 そこには『思索無き者、力を示さぬ者に知識の開示は出来ぬし、させぬ』との文字があった。

 要するに、特性:ヌル関係と同じように、資格がない人間には情報の取得制限がかかっているという事である。


「はあぁぁ……まあ、あのGMなら当然と言えば当然の措置か」

「そうだよなぁ。そんな楽を許すようなGMじゃないよなぁ……」

「まあ、知ってました。だよな」

「だなー」

 ただまあ、落胆と言っても、プレイヤーたちの表情はそれほど落ち込んではいない。

 どうやら、これまでの流れからしてそう甘くはないと思ってはいたらしい。


「だがまあ、これで攻略をするのに躊躇いは無くなったな」

 そして、そう甘くはないと思っていたからこそ、トロヘルたちは攻略の必要性が確定した時点で完全に思考を切り替えることが出来たようだった。

 流石は攻略組と言う所である。


「よし、それじゃあ、此処から先は具体的な攻略方法だが……ま、一番手っ取り早い方法はアレだろうな」

「そりゃあそうだろ」

「仕掛けが分かっているなら他に方法なんて無いって」

 なお、実を言ってしまえば、還元の白枝の塔を攻略すること自体はさほど難しくない。

 と言うのも、最初の部屋に次の階層に繋がる階段と、階段を開放するためのコンソールが置かれているのは確定しているのだ。

 となれば話は単純で、ダンジョン突入前に第一階層から第十階層までの間に必要になるアイテムを事前に集めておけば、一直線にボスまで向かえるのである。

 こうなれば後必要な対策は強制的に戦闘になる巣マップとボス戦の二つだけ。

 これで、苦戦するのは別としても、攻略出来ないと嘆くようなのは攻略組には居なかった。


「目指すべきはレア度:3で未踏破の2の塔だな」

「必要なアイテムの数は……4×3、5×3、7×3だから……48か。ホムンクルスに持たせたり、ボックスを利用すれば余裕だな」

 そんなわけで、プレイヤーたちは全員ラードーンから昼食を貰いつつ、作戦会議にいそしんでいた。

 で、その光景を見て気づく。


「ん?これ、今日はもう俺は動けないか?」

 他のプレイヤーたちが居る以上ヘスペリデスは収納できないし、迂闊に外に出ていくわけにもいかないという事実に。


「……。悪いゾッタ。事後承諾に近い形になっちまってるが、今日一日はヘスペリデスを使わせてもらっていいか?サイズと言い例の風呂と言い、士気を養うためにはここにしか無いものが必要なんだ」

「いやまあ、今日はどうせこの後はもう外で活動する気はなかったから風呂含めて構わないが……」

「そうか、本当に助かる。この礼は何時か必ずさせてもらうな」

 実の所を言えば俺は管理者として、他プレイヤーに対する強制退出権限も持っている。

 持っているが……うん、ちょっと使えないな。

 今日だけとは言え風呂に入れると分かった瞬間、かなりの数のプレイヤーが奇声を上げるレベルで喜んでる。


「えーと、いいんですか?マスター」

「まあ、俺に損がある話じゃないからな」

 その後、一応の取り決めとしてグランギニョル、シュヴァリエ、ロラ助、それに女性陣以外……つまりは男性陣や動物型ホムンクルスの部屋は各自の携帯工房で。

 ヘスペリデス内に居られるのは明日の朝の八時までと定めた。

 そして俺は昼食を食べるべく、屋敷の方へと向かった。

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