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AIOライト  作者: 栗木下
1章:始まりの街・ヒタイ

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44:8-4

「一応聞くが。ゾッタ、お前がチートを使っていたり、運営側の人間だったりはしないんだよな」

「は?」

「ああいや、違うならそれでいいんだ。よくはないが問題はない」

 数分程フリーズしていたトロヘルが復帰した直後に言った言葉がこれである。

 チートや運営側って……後者はまあ、有り得なくはないが、前者は有り得ないだろう。

 あのGM(ゲームマスター)がそんな下らないものを許すとは思えない。

 有利にするタイプのチートなんてのはゲームバランスを崩壊させた挙句に、他のプレイヤーのやる気を損ねるだけの、この状況においてはGM側にとって百害あって一利なしの物だろうし。


「とりあえずゾッタ。この情報は今はまだ表に出さないでおいた方がいい。確実に変なのに絡まれる」

「俺もむやみやたらに出すつもりはないから大丈夫だ」

「ああ、そうしておいてくれ」

 なお、新芽の指輪と新緑の杖の情報については、トロヘル以外に出す可能性がある相手と言えば番茶さんぐらいである。

 その場合は……たぶん、どんな作り方をしたかまで話す事になるだろう。

 尤も、あの時の感覚からして、同じ素材を揃えて、同じ方法でやったとしても、失敗するだけだと思っているが。


「それであー、ボスの情報とホムンクルスについてだったな」

「ああ、よろしく頼む」

 さて、此処からはトロヘルの話す番である。


「そうだな、まずはホムンクルスについてから話しておくか」

「分かった」

 そうしてトロヘルの話が始まった。



------------------



「と言うわけだな」

「なるほど」

「まあ、後数時間もしない内に消滅するダンジョンのボスについてだ。大した情報ではねえよ」

 トロヘルの話は中々に興味深いものだった。

 ホムンクルスについては……まあ、ダンジョンのボスから核か素材かの選択制で入手できて、他プレイヤーへの譲渡、交換、その他諸々が不可能であるという点以外は、現状の俺にとってはそれほど重要ではなかった。

 興味深かったのは自動生成ダンジョン『愚かな岩の洞窟』のボス『愚かな鶏の王』についてだ。


「それにしても簡単に挑発に乗って、挑発に乗った相手を追い続ける単純なAI……か。もしかしなくてもそんなに苦戦しなかった感じか?」

「そうだな、はっきり言ってそこまでの苦労は無かった」

 『愚かな鶏の王』は体高が2メートルを超すような巨大な鶏であるらしい。

 攻撃は強力で、爪と嘴、どちらの攻撃も直撃すれば一撃で半分以上持って行かれるようなものだったそうだ。

 だが、そんな強さを台無しにするぐらいには『愚かな鶏の王』のAIは酷かった。

 なにせ遠くから良い攻撃を一度当てるだけで攻撃の目標を変えてしまうどころか、変えた目標に攻撃が当たる前に別のプレイヤーがまた良い攻撃をすると、そちらへと目標を変えてしまうのだから。


「正直に言って、ガチガチに戦略を組めば、1パーティノーダメージ撃破も出来たかもしれないぐらいだった」

「特性:フールは伊達じゃないって事か」

「まあ、そう言う事だろうな」

 何故そんなAIになってしまっているのか。

 それはほぼ間違いなくダンジョン名にも和訳された形で付いている特性:フールのせいだろう。

 トロヘルの話では、『愚かな岩の洞窟』内に出現するモンスターはどれもAIが単純であったし、特性:フールが付いているアイテムはマスクデータの部分でマイナスの補正が掛かっているとの事だったから、その影響がボスに出ていてもおかしくはない。


「でだ、これは俺個人で思っている事だが……レア度:1のダンジョンについては場合によってはソロ攻略も可能じゃないかと思っている」

「AIが単純……いや、特性とモンスターの組み合わせ次第によっては著しく難易度が下がっているって事か?」

「ああそうだ」

 あくまでも推測だと前置きをした上でトロヘルは話をしてくれる。


「まずレア度:1の自動生成ダンジョンの中に出てくるモンスターは、出現した場で戦っているなら基本的に一対一だ。どうにも複数体で出現するのはレア度:2かららしい」

 基本的には一対一なのは、ソロにとってはこの上なく嬉しい事である。

 注意や対処が一気に簡単になるからだ。


「そしてダンジョン内に出てくるものには、全部ダンジョン名に付いている特性が加わっている。プラスの物もマイナスの物もだ」

 これはまあ、俺も良く知っている。

 と言うかリジェネパンプキンなんて言う凶悪な組み合わせを忘れられるはずがない。


「となればだ。自分と相性のいい……そうだな、特に相手の火力が抑えられて、回復が間に合うようになるような特性相手だったら、他の雑魚と比べてステータスが高くなっているボス相手でもどうにかなるんじゃないかと俺は踏んでいる」

「へぇ……」

 そしてダンジョンの特性次第ではプレイヤーが一人でも十分に勝ちの目はある……か。

 確かに有りそうな話ではある。

 なにせダンジョン攻略の報酬は、どう考えても今後のゲームプレイに必須になりそうなホムンクルスに関わる物なのだから。

 傾向と対策を十分に練れば多少の縛りプレイもどうにか出来るような難易度に調整するというのも、あのGMなら出来そうだ。


「まあ、あくまでも一プレイヤーの勝手な意見だ。特にこだわりが無いのなら、パーティを組むことを俺はオススメする。『愚かな鶏の王』だってAIが鳥頭だっただけで、ステータス自体は高かったしな」

「いや、良い話を聞かせて貰った。ありがとうなトロヘル」

「まあ、お前のアレにはまるで釣り合っていない情報だけどな」

「そうか?まあいいや、じゃあまたなトロヘル」

「おう、またな。ゾッタ」

 そうして俺は若干の希望を持ちつつも、トロヘルと別れた。

 思えばこの時には既に察していたのだろう。

 俺の求める物を創るためには、俺自身の手で一から集めなければいけない、と。

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