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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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439:82-1-S21

【AIOライト 82日目 07:27 (半月・晴れ) WB3・『光力溢れる??』】


「さて……準備は良いな」

「はい、マスター」

「ーーーーー」

 翌日。

 俺たちは錠前付きの扉の前に立つと、HPバーを始めとした各種準備が十分整っている事を確認、ヘスペリデスの黒葉も勿論インベントリに入っている。

 そうして、問題がない事を確かめた俺は錠前付きの扉に触れた。


「これは……」

 視界が白一色の光に包まれる。

 そうして光が収まってまず感じたのは?


「光が……」

 まずは強烈としか称しようのない日差し。

 特性:シャインの効果で強化されていると考えてもなお強烈な日差しが俺たち全員に向かって降り注いでいた。


「ーーー……」

 次に感じたのは熱。

 日差しによる熱だけではなく、空気と地面が熱せられ、まるで焼けつくような熱が皮膚から伝わってきている。


「なるほどな」

 続けて乾き。

 水分と言う物を含まないその空気は鼻や口内の粘膜から水分を奪い取りつつ、独特の感覚を俺たちに与えていた。


「『光力溢れる砂漠の神殿』か」

 そうして日差しに慣れてきた俺たちの目に映ったのは、迂闊に踏み込めば足を滑らせそうなほどに細かくて黄色い砂と、光を反射する白色の岩が幾つか置かれた広場。

 それからその広場を囲むように作られた回廊。

 尤も、回廊については柱と天井の殆どが崩れているため、この強烈な日差しから逃れる為のスペースにはならないようだが。

 いずれにしても、これでこのマップの名称は『光力溢れる砂漠の神殿』で確定した。

 後はどんなモンスターが来るかだが……。


『還元の秘奥を求める探究者が来たか』

「来たか」

「そうみたいですね」

 陽炎のように空気が一瞬揺らいだ後、その場に人影が三つ現れる。


『新しき錬金術師と言う名の略奪者が来たか』

『我らが王に仇なす反逆者が来たか』

 影の一つは金属製の鎧を全身に纏い、巨大な剣と盾を持っている騎士風の男だった。

 影の一つは革製の鎧を身に着け、両手に金属製の拳甲を填めた格闘家風の男だった。

 影の一つは布製のローブと帽子を身に着け、両手で金属製の杖を握った魔法使い風の男だった。


『『『ああ、許しがたき許しがたき。九の迷宮を抜けてこの場に辿り着くとは真に許しがたき』』』

 男たちの表情に個性の類は見えない。

 だが、どの男の表情も明らかに正気を逸しており、目には怪しげな……少なくとも善や光といった要素とは対局を為すような輝きが宿っている。


「シア、ネクタール、構えろ」

「はい」

「ーーー」

『侵入者には』

『略奪者には』

『反逆者には』

 俺たちは武器を構え、ネクタールもヘイトコントロールを始める。

 そして男たちも武器を構え、名前が表示される。

 騎士風の男は光力溢れる還元の騎士Lv.30。

 格闘家風の男は光力溢れる還元の格闘家Lv.30。

 魔法使い風の男は光力溢れる還元の魔道士Lv.30。

 で、一つ思う事があったので俺は……


『『死をっ!』』

『死……ぐっ!?』

 男たちに向けて駆け出しつつ視線に魔力を乗せて、騎士に向けて投射、その動きをほんの一時ではあるが止める。


『ぐがっ……!?』

「ネクタール」

「ーーー」

 そうして初動が乱れた為に、一人だけで俺に向かってきた格闘家に向けてネクタールがゼロ距離から槍を突き出し、大きく吹き飛ばす。


「すぅ……」

「『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』」

『ーーーーー』

 結果、何かしらの魔法の詠唱を始めた様子の魔道士に近づく俺を止めるものはおらず、俺は余裕で魔道士に近づく事が出来た。


「はぁ……」

 だから俺は普段以上に集中をする。

 確実に魔道士を仕留められるように、魔道士を殺す事だけを考えて、特性:バーサークを今の装備の限界まで発動させる。


「行くぞ」

 俺は左手にヘスペリデスの黒葉を取り出し、大量の魔力を注ぎ込み、破裂させる。

 だが、その魔力は拡散させない。

 むしろ他の男たちが俺に向けているヘイトも巻き込みつつ圧縮する。

 そして右手に持った斧へと一切のロスなく注ぎ込み、赤黒い魔力で出来た刃を、光力溢れる還元の魔道士を殺すためだけの刃を生み出す。


「ヘスペリデス・フォボス」

『!?』

 右手に持った斧を振り下ろす。


「キャアッ!?」

「ーーー!?」

『『!?』』

 ただそれだけの動作で周囲に赤黒い閃光が撒き散らされ、爆音が鳴り響き、爆風が吹き荒れ、マップの影響もあって日を遮るほどの砂塵も舞い上がる。

 しかし、派手なエフェクトはそれだけエネルギーのロスが生じているという事でもある。

 だから俺は左手に短剣を持つと、それを魔道士に向けて振るおうとする。


『……』

「ん?死んでたか」

 が、光が収まった後、光力溢れる還元の魔道士の姿は無く、壊れた杖と数枚の布切れがその場に転がってるだけだった。

 どうやら魔道士と言う姿と名前からイメージできる通りに、防御力もHPも少なかったらしい。


「ま、それならそれで結構だ」

 いずれにしてもこれで後方からの魔法攻撃による支援は潰せた。

 だから俺は残りの二人に向きなおると腰を少しだけ低くした状態で武器を構え、己を鼓舞するように笑みを浮かべる。


『ぬおおおおぉぉぉ!』

『よくも我が同胞を!』

 対する光力溢れる還元の騎士と光力溢れる還元の格闘家も、仲間の死に反応するようにその身に宿す魔力の強さを跳ね上げると、俺に向かって駆け出してくる。


「来いっ!」

『ふんっ!』

『ぬおらぁ!』

 そうして白い光を宿した騎士の剣と俺の斧が、黄色い光を宿した格闘家の拳と俺の短剣がぶつかり合った。

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