434:81-10-S16
本日は二話更新になります。
こちらは一話目です。
【AIOライト 81日目 15:42 (2/6・晴れ) WB3・『上位殺しの清流の洞窟』】
「モスウゥゥ……」
「よし、片付いたな」
キルエルダホーネットの戦闘からおおよそ一時間。
あれからも探索を続け、今はキルエルダモスの群を片付けた所だった。
「お疲れ様です。マスター」
「シアも支援ありがとうな。ネクタールも庇ってくれて助かった」
「ーーー」
キルエルダモスとの戦闘も厄介だった。
動作そのものは遅かったが、キルエルダモスの攻撃は特性:キルエルダの効果で俺に対してのみ威力が向上していたし、キルエルダモスの水爆弾攻撃はキルエルダモス同士ではFFが発生しないどころか、HPを微量ながら回復する効果を持っていた。
おかげで、タンク役は俺なのに何度かネクタールに前に出て、攻撃を受けてもらうような場面も出来てしまった。
まったく、厄介な相手である。
「キルエルダモスも厄介でしたけど、キルエルダホーネットも厄介でしたよね」
「そうだな。まさか、特性:キルエルダの効果で、俺だけ喰らう状態異常の種類が増えるとは思ってなかった」
「ーーー」
「んー、恐らくだが特性:キルエルダの効果で、本来ならもう少しレベルが高くなってから追加される効果を得ていた、とかじゃないか?処理的にもそっちの方が楽だろう」
「マスターが言っている事が正しいなら、ホーネット種はその内状態異常:ポイズンに加えて、状態異常:パライズも使いだす事になるんですけどね……」
俺はキルエルダモスたちからアイテムを剥ぎ取る。
剥ぎ取れたアイテムは……キルエルダモスの苔皮、キルエルダモスの種子、キルエルダモスの体液は……容器が無いから流れたか。
まあ、基本的に捧げてしまっていいアイテムばかりだな。
「ま、いずれにしてもこれでこの階層の探索は終わりだな。一通り回ったし、アイテムも二階層連続で突破できるようになってる」
「そうですね。次の階層に向かってもいいと思います」
そして今回の戦闘で必要な量のアイテムも集まった。
と言うわけで、俺たちは最初の部屋に戻ると、コンソールでアイテムを捧げて、第九階層に続く階段を開放する。
「……」
「マスター?」
で、解放した以上は次の階層に行くべきなのだが……何か嫌な予感がする。
「シア、HPが全回復してから行こう」
「えーと、階段が閉じる様子は無さそうなので、私は構いませんけど。どうしたんですか?」
「何か嫌な予感がする」
「嫌な……予感ですか」
「ああ、何となく。だけどな」
俺は階段を登ろうとしたシアを止めると、その場で腰を下ろして、自然回復によるHPバーとMPバーの回復を始める。
「根拠、と言うよりは何が待っているとマスターは思っているんですか?」
「そうだな……嫌な予感がする原因になりそうなものは色々とあるが……一番有り得そうなのは巣マップか」
「……。確かに無いとは言えませんね」
今更言う事ではないが、ここ、『還元の白枝-3の塔』は階層ごとに異なる自動生成ダンジョンが展開され、侵入者を拒むように作られている。
その階層に規則性の類がない事は、これまでの道のり……
・火傷招く常闇の街
・貫通する岩の洞窟
・愚かな凍土の神殿
・?湿地の農場
・抗体作る機械の屋敷
・貧しい森の洞窟
・?天空の船
・上位殺しの清流の洞窟
……の内容を考えれば、直ぐに分かるだろう。
で、規則性はないが、今までに出ていないマップの中に、遭遇したら確実に拙いと言えるマップが一つある。
それが大量のモンスターがひしめき合う巣マップだ。
そして、以前挑んだ巣マップの自動生成ダンジョンから考えると、階段を上った直後に戦闘が始まる可能性は高い。
「こんなピンポイントで巣マップを引くというのは流石に考えづらいが……」
「無いとは言い切れない。ですか」
「ああ、流石に此処まで来たら探索を失敗したくないと言うのもあるけどな」
特性も地形の概要も分からない状態で大量のモンスターが一度に襲い掛かってくる。
それは明らかに危険などと言う次元では済まない戦闘になるだろう。
そう考えたら……可能な限り万全の状態で次の階層に挑むのが、正解だろう。
「そう言うわけだからな。少し待つぞ」
「はいマスター」
「ーーー」
そうして俺たちはHPとMPが全回復するまで、暫くの間階段の上で待つことにした。
----------
【AIOライト 81日目 16:37 (2/6・晴れ) WB3・『???』】
「……。行くぞ」
「はい」
「ーーー」
十分に休憩した後、俺たちは階段を上り始めた。
そして、階層が切り替わる境目を勢いよく飛び抜けた。
そうして見えたのは?
「グル?」「メ?」「シャ?」
「うげ……」
まず見えたのは獅子の頭と山羊の頭、それに蛇の尾を生やした、一目でキメラあるいはキマイラと呼ばれる生物だと分かる、体高が俺の身長ほどもある大型モンスター。
「「「ガア?」」」
「「「ガアガア」」」
「うわぁ……」
そのモンスターの奥に見えたのは複数体のオストリッチ種。
「「「……」」」
「ー、ーーーーー」
さらにその奥に見えたのは、こちらもまた複数存在するエルフ種。
「へ……」
「グ……」
地形は所々で溶岩が流れているのが見える事からして火山のであるが、壁の類は見当たらなかった。
それはつまり?
俺が危惧していた巣マップが来てしまったと言う事でもあった。
「ヘスペリデス・ディモス!」
「グルアアァ!?」
「「「!?」」」
故に俺はノータイムでヘスペリデスの黒葉に大量の魔力を流し込み、ディモスを発動。
左手から放たれた赤黒い光の弾丸によって全ての敵に先制打を叩き込むのも当然の流れだった。
07/09誤字訂正




