表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

426/621

426:81-2-S8

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

「グルアァ!」

「ふんっ!」

「ーーー!」

 飛びかかってきたワクチンレオパルドの攻撃を俺とネクタールは先程と同じように防ぐ。


「シャア!」

「『ブート』!」

「むんっ!」

 そんな俺の隙を突くように、脇からワクチンラミアが鋭い爪の付いた手を振りかぶりながら迫ってくる。

 それに対してシアが『ブート』で攻撃し、俺も特性:ワクチンの効果で防御される事は分かっているが、視線に魔力を乗せて叩き込む。


「シャアッ!」

 オレンジ色の半透明の薄膜を砕け散らせながら、ワクチンラミアが俺に爪を振るう。

 受けたダメージは僅か。


「ちっ……」

 だが状態異常:チャーム……状態異常:パニックの実質上位互換と言ってもいい状態異常が表示されている。


「身体が勝手に……!?」

「グル……」

「アハハ……」

 状態異常:チャームの効果、それはその名から思いつくように精神状態をおかしくするのではなく、敵の利になるように身体が勝手に動くという極めて機械的な処理を為される状態異常である。

 故に状態異常:ペインや状態異常:ノイズのように無視することは出来ず、俺の身体は相手の利になるように……つまり、防御行動を解いて、ワクチンレオパルドとワクチンラミアの攻撃をノーガードで受けるように動き出している。


「ーーーーー!」

「『カース』!」

「ルガッ!?」

「ハギャッ!?」

 尤も、俺たちにとって状態異常:チャームが致命傷になるのは、俺以外にかかったパターンの方なのだが。


「ーーーーー!」

「グルアッ!?」

「……」

 ネクタールは状態異常:チャームを治すべく俺の後頭部を布の一部でドツきつつ、三本の槍と自前の刃でワクチンレオパルドの攻撃を捌くどころかダメージを与えている。


「『癒しをもたらせ』『ブート』『力を和らげよ』『ブート』」

「ラミ……ギャッ!?シ……キャイン!?」

 シアはシアで、俺に補助魔法をかけつつ、ワクチンラミアを攻撃している。

 当然ながらネクタールのヘイトコントロールがある以上ワクチンラミアの攻撃は俺に向いているし、状態異常:カースがワクチンラミアにはかかっているから、反射ダメージによって確実にHPバーは削れていっている。


「お、治ったな。ふんっ!」

「ラギャ!?」

 で、俺の回復力だとどうやら防御行動を解除するぐらいの時間は操れても、シアとネクタールに危害を加えたり、二人の攻撃に割り込んで受け止めたりするような時間は無いらしい。

 と言うわけで、治ると同時に斧を振り下ろし、ワクチンラミアにトドメを刺す。


「じゃ、残りだな」

「はい、マスター。『ブート』」

「ーーーーー!?」

「ギニャアアァァァ!?」

 そうしてネクタールによって十分なダメージが入っていたワクチンレオパルドも呆気なく沈む。

 うん、次からは気を付けようと思うが、大した相手ではなかった。


「剥ぎ取りは……毛皮と鱗か」

「防具に使えそうですね」

「だな」

 俺は早速アイテムを剥ぎ取る。

 すると獲れたのはワクチンレオパルドの毛皮と、ワクチンラミアの鱗だった。

 ワクチンレオパルドの毛皮は……シアの新しい雨具にしてもいいかもな。

 今着ているのはもうだいぶ前に作った奴だし。


「さて、それじゃあ……」

 探索を再開しよう。

 俺はそう言おうと思った。

 だが、それよりも早く、こちらに近づいてくる足音を俺の耳は捉えており、シアとネクタールも戦闘態勢に入っていた。


「「グルルルル」」

「ウフフフフ」

 現れたのはワクチンレオパルドが二体に、ワクチンラミアが一体。

 急いできた様子もあるし、俺たちが居ることを事前に知っていた感じもある。


「……。マスター、おかしいですよね。これ」

「ああそうだな。明らかに異常だ」

 剥ぎ取りは終わっても休憩や移動はさせないという絶妙なタイミングの良さに、現れたモンスターたちの反応。

 そしてこれが一度ではなく二度となれば……まあ、シアも俺も疑って当然だし、実際にそうであると思わざるを得ない。


「「グルアッ!!」」

「アハハハハ!」

「となれば、何処かに一匹隠れている……なっ!」

 何処かにモンスターが隠れていて、そいつが他のモンスターを呼び寄せている。

 そう判断した俺たちはワクチンレオパルドたちの攻撃を捌きつつ、周囲を素早く見渡す。

 床、壁、天井、それに天井にあるシャンデリアに、通路に置かれている調度品や絵画の類まで素早く見る。

 だがどれにも異常の類は見られない。


「だったら……」

 だから俺は少し見方を変える。

 俺に向けられている繋がりだけを見る。

 そして、その繋がりを仕分けていく。

 シアとのPTとしての繋がり、ネクタールとの直接的な繋がり、ワクチンレオパルド二体にワクチンラミアの敵意と言う名の繋がり、GMからの監視と言う繋がり、その他諸々エフィルたちの物を含む俺への興味関心悪意等々。

 そうして俺は一つ、ワクチンレオパルドたちのものによく似た、けれどそれらとは異なる繋がりを見出す。


「見つけた」

 そして見つけると同時に全力でその繋がりの先に居る存在に向けて魔力を放つ。


「!?」

「壁の中から!?」

「ーーーーー!?」

 そいつは壁の中に潜んでいた。

 そいつは存在感が極端に薄く、今にも消えてしまいそうな気配すら漂わせていた。

 だが同時にそいつは、侵入者を狩ると言う純粋な想念を有していた。


「あおぁああいいうぉあああぁぃぇ……」

「思念体……といったところか」

 名称はワクチン?Lv.25。

 人型の輪郭部分にだけ薄い靄のようなものが見え、他には瞳一つだけしか見えないナニカが、オレンジ色の半透明の膜を消しつつ、壁の中から俺たちの前に現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ