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本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
【AIOライト 80日目 09:35 (1/6・晴れ) WB3・???】
「さ……ん?」
『還元の白枝-3の塔』に進入した俺がまず察したのは?
このダンジョンはヤバい、油断したらあっさりと死に戻りする、という感想だった。
と言うのもだ。
「マ、マスター。灯りが!?」
ダンジョンに突入した瞬間、灯りが全くない空間に移動させられたからである。
「分かってる。ネクタール、ニフテリザを」
「ーーーーー」
「ほっ」
俺はネクタールにニフテリザを出させて光源を確保すると、周囲の状況を観察する。
床は石畳、壁もよくは見えないが、同様だろう。
天井までの距離はかなりあるか、そもそも存在しないかのようで、ニフテリザを限界まで上に移動させても確認できなかった。
「マスター此処はいったい……」
俺はメニュー画面を開いて場所を確認しようとする。
が、マップ名が表示されている場所に出ていたのはWB3・???と言う一見すると意味の分からない名前だった。
また、もしかしたらと思ってBGMの再生機能を使用、フィールドに合わせる形で音楽を流してみたが、極々一般的などんな自動生成ダンジョンにも使えそうな汎用BGM丸出しの音楽が流れるだけで、BGMの名称も『自動生成ダンジョン1』としか表記されていなかった。
「んー、そうだな……」
まあ、全く手がかりが無いわけではない。
まずマップの名称であるWB3と言うのは『還元の白枝-3の塔』の略称だろう。
つまり俺たちが今居るこの場はパイライト・ドームで言う所の自動生成ダンジョン部分と考えるべきだ。
となれば、その後に続く???には自動生成ダンジョンの名称が入ると考えるのが正解だろう。
「と言う事は?」
「とりあえず一つ確かなのは、此処が常闇系のダンジョンであるという事。これだな」
俺がそう告げると同時に、流しっぱなしにしていたBGMに少しだけ変化が生じ、光の射さない領域である事をイメージさせるような雰囲気が追加される。
また、メニュー画面に表示されるマップ名にも変化が生じる。
「マスターこれって……」
「名前当てに正解したならば隠す必要はありませんって事だろう」
変更されたマップ名はWB3・『?常闇の?』。
なるほど、ハテナ三つはそのまま自動生成ダンジョンの名称パーツで不明になっている部分、という事だな。
BGMの変更も名前当てに正解したが故にだろうな。
「しかしこうなると面倒だな……」
「そうですね。かなり面倒だと思います」
俺の言葉の意味にシアも直ぐに思い至ったのだろう。
若干ではあるが、渋そうな顔している。
「マスター、特性はあると思いますか?」
「ある。まず間違いなくな。それもたぶん名前を当てるまでは未識別の状態でだ」
『還元の白枝-3の塔』。
このダンジョン最大の性質は突入して、名前当てに正解するまでは、どんな特性が付いたダンジョンが、どんな性質と形式で現れているのか分からない。
という点だ。
しかもこの名前当て、恐らくだが確証を以って答えなければ、正解していても正解だとは認めてくれない仕様になっている。
現に今の俺は石畳の床と壁と言う条件から、本命を城と塔の二択、ワンチャンで街か神殿の形式であると考えているが、これだと思って考えても名前が変わる事はない。
そしてこの名前当ては特性に対しても行わなければいけない。
何かしらの形で効果が発揮されるまでは、その正体がまず掴めない特性の力を考えると……迂闊な戦闘やアイテムの使用はかなりのリスクを伴うな。
「救済措置の類は……ああ、一応あるのか」
幸いにして最初の部屋であるこの場にはモンスターが出現しない以外にも救済措置があるようだった。
「これは階段と……何ですか?」
闇の中から現れたのは、次の階層に繋がるであろう登り階段と腰ぐらいまでの高さがある白色の円筒としか称しようのない物体。
ただし階段の方は見えない壁のようなもので囲まれていて、登る事が出来ないようになっている。
で、白色の円筒の方だが……どうやらこのダンジョン専用のコンソールとでも呼ぶべき代物であるらしい。
「どうやらコイツでアイテムを捧げることと……ダンジョンについての情報を貰えるみたいだな」
「本当ですか?」
「ただし有料だ」
「ですよねー」
白色の円筒で出来ることは二つ。
一つはアイテムを捧げることでゲージを上げ、次の階層に繋がる階段の開放。
今回は捧げたアイテムのレア度の和が10以上になればいいらしい。
もう一つはアイテムを捧げることで今居る階層についての情報を得ることが出来る。
具体的にはダンジョンの名称のハテナを取り払う事と、出現するモンスターについての情報を得ることが出来るようになっている。
ただし、前者は特性部分のハテナを外すのにアイテム五つ、それ以外のハテナ一つにつきアイテムを一つ捧げる必要がある。
そして後者もアイテムを三つ捧げることでモンスターの種類の数をまず開く事が出来、その後に更にアイテムを捧げることによって具体的な名称を知る事が出来ると言う仕様である。
「何と言うか……今までの知識と経験全てを実際の行動に還元できなければマトモに攻略する事も出来ません。そんな感じのダンジョンだな」
「ああ、だからこそダンジョンの名前も還元の白枝なのかもしれませんね」
「かもな」
総評するならば、今までの自動生成ダンジョンとは別格の高難易度ダンジョン。
正に還元の白枝の名に相応しいダンジョンとしか言いようが無かった。
06/25誤字訂正




