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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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417/621

417:80-2

本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 80日目 09:27 (1/6・晴れ) 還元街・サハイ】


「さて、着いたな」

「こうして見ると、随分と高い塔なんですね」

「全くだな」

 移動すること約一時間半。

 俺たちはサハイに幾つか建っている塔の根本部分にまでやってきていた。


「高さは……おおよそ20から30メートルと言うところか」

 こうして間近で見るとサハイの塔はかなりデカい。

 ヘスペリデスの大樹と比べるのはアレだが、現実世界のちょっとしたビルや農場のサイロぐらいの大きさは間違いなくあるだろう。

 石造り特有の重厚さと雪の重量感が合わさる事によって、圧倒されるような気配もしなくない。


「で、マスターアレって」

「……。うんまあ、何かある事は分かっていたしな」

 さて、そんな塔だが……入り口と思しき部分にとあるものがある。


「自動生成ダンジョンの入り口……ではないんですよね」

「違うな。どちらかと言えばパイライト・ドームの入口の扉に近い」

 塔の入り口には、自動生成ダンジョンの入り口である白磁の門によく似た、白地に水色で樹の枝のような物が描かれた門があり、現在その門は固く閉ざされている。

 この門から感じる繋がりは塔の内部ではなく、それ専用の領域に繋がっている感じであるし、まず間違いなくイベントを進めるための特別なエリアにこの門は繋がっていると考えるべきだ。


「まあ、触ってみなければ進まないな」

「警戒しておきますね。マスター」

「ああ、よろしく頼む」

 俺は門にゆっくりと近づくと、軽く触れてみる。

 すると目の前にメッセージを伝えるための画面が現れる。

 そこにはこう書かれていた。


【『還元の白枝-3の塔』 レア度:3 階層:10 残り時間:∞】

【注意:このダンジョンの各階層への移動は一方通行となっています】

【注意:このダンジョンに進入するためには、プレイヤー1人につきレア度の和が10以上になるようにアイテムを捧げる必要があります ※一部アイテムを捧げるのには制限がかかります】

【注意:このダンジョンはPT単位での進入しか出来ません】

「えーと、これはつまり……」

「ふうむ」

 表示された画面の内容にシアが困惑する横で、俺はこの画面から幾つかの情報を読み取ると、これまでの経験と傾向からこの先についても含めて頭の中でまとめあげる。


「簡単に纏めてしまうのであれば、制限つき、恒常設置型の特殊ダンジョン、と言う所か」

「制限つき、ですか」

「ああそうだ」

 そしてまとめあげた物についてシアに話し始める。


「まずこのダンジョンは3の塔だ。となれば恐らくだが、サハイに建っている他の塔も似たようなダンジョンで、番号違いの同じような名前が付けられていると考えていい」

「なるほど」

「ダンジョン攻略で得られるのは……順当に行けば還元の白枝に関する情報の一部、と言う所だろうな。還元の白枝と言う塔の名前もそれを示していると考えていい」

「一部、なんですか」

「全部が一度に得られるなんて期待はあのGMに対してはするべきじゃないからな」

 このダンジョンが還元の白枝に関わっている事は間違いない。

 でなければ、ダンジョンの名前自体がおかしいからだ。


「次に一方通行だが、これは全部で10ある階層を全てクリアするまで脱出は出来ないし、後戻りも許さないという事だな」

「随分と厳しいですね」

「まあ、代わりに一つ一つの階層を短くするような調整は施してあるだろうけどな。でないと制限時間が無いにしても長すぎる」

「それは……そうですね」

 脱出不可については、パイライト・ドームもある意味ではそうだったし、ケイカからサハイまでの道中で見かけた自動生成ダンジョンもグランギニョル曰く、開始地点と脱出可能地点が一致しないようになっていたそうだから、その辺りから考えればこの先では割とデフォルトの仕様なのかもしれない。

 そうなると例のMPKが使っていたような脱出アイテムが欲しくなるところだが、さて、レア度:PMでなくてもああいうアイテムは造れるのか、あるいは入手できるのか、少々気になるところではあるな。


「PT制限については単純に数の暴力を許さない為だろうな」

「フルアライアンスで簡単に、と言うのは許さないという事ですね」

「そう言う事だな。ま、妥当と言えば妥当だな」

 この手の試練を脳筋ゴリ押し数の暴力だヒャッハーで攻略して欲しくないというのはGMとしては極自然な思考と言えば思考だろう。

 尤も、サハイまで来れた時点でそんな脳筋は……後続組だと居ないとは言い切れなくなってくるのか。

 パイライト・ドームもその気になればレベル、装備、ステータスでのゴリ押しが利くだろうしな。


「最後にアイテムを捧げるという事だが……たぶん、これはこのダンジョンの中で求められることでもあるんだと思う」

「つまり、内部で採取なり剥ぎ取りなりでアイテムを回収。それを捧げることで先に進めるようになる。と言う事ですか?」

「勘に近い予想だから、外れている可能性もあるが、たぶんそうなっていると思う」

 アイテムの消費については……還元の白枝で携帯錬金炉に追加できる機能から考えても、ダンジョン内で常々同じことを求めてくるのだろう。

 事前にアイテムを大量に持ち込めばある程度は簡単に進めるだろうが、いずれはそうもいかなくなってくるんだろうな。

 なお、制限の内容としては修理結晶が使えないと言うのがあるが、その理由についてはサハイ支部でレア度:3までなら無償で入手できるからだろう。

 使えてしまったらこの制限の意味が無いからな。

 他にも投擲分類のようなスタック可能なアイテムや、レア度:PMのアイテム、それに携帯工房で採取したアイテムについても制限がかかっているようだ。


「それでマスター、どうしますか?」

「勿論入る。でないと進めないからな」

 いずれにしてもやる事は変わらない。

 ダンジョンに進入して、攻略をする。

 ただこれだけである。


「とりあえず今回の進入の為のコストは……そこら辺で転がっている雪でいいか」

「あ、光の反射に混じって、採取ポイントもありますね」

 そうして俺たちは適当に雪を掻き集めると、掲示板に書き込みを行ってから『還元の白枝-3の塔』に進入した。

 ちなみに雪についてだが……もしかしたら暑さ対策に使えるかもしれないと思ったのは、今はまだ此処だけの話である。

06/25誤字訂正

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