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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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413/621

413:79-1

【AIOライト 79日目 07:00 (新月・雪) ドウの地・北西の森】


「全員、今日が正念場よ。気合も注意も漲らせておきなさい」

「おうっ」

「「「はいっ!」」」

「分かってるよ」

「……」

「キュイ」

「カー!」

 遠征七日目。

 ヘスペリデスの外に出た俺たちは、直ぐに森の中に移動。

 いつもの探索態勢を整えると、ドウの地・北西の森と北の雪原の境界線上を南に向かって移動し始めた。


「それで?南の方に何があるのかは分かったか?」

「そうね……やっぱりアレは街の跡と見ていいと思うわ」

「そうですね。私も同意見です」

 で、一時間ほど歩き続け、グランギニョルとミストアイランドさんの二人にはある程度目標地点である何かの様子が見えてくる。


「具体的には?」

「まず第一にケイカにもあった城壁みたいなものがあるのよ。雪で隠れている上に、所々崩れているから分かりにくいけどね」

「次に城壁らしきものの向こう側でしょうか。どうにも雪の斜面の形に規則的な物を感じます」

「建物と道の間に生じる高低差、ですか?」

「恐らくはそうだと思います」

 どうやら俺たちが今向かっている何かは、ほぼ間違いなく新たな街であるらしい。

 尤も、その街もケイカと同じで滅んでおり、人の姿は愚か、除雪が行われている様子もないようだが。

 まあ、これについては事前の予想通りなので、気にすることではないだろう。

 恐らくだがケイカと同じで部分的には街の機能が生きているだろうしな。


「敵はどうなっている……?」

「角度と距離の関係で街の中は分からないわ。街の外については……動きが微妙におかしいわね」

「動きがおかしい?」

「ええ、何となくだけど、何か所か避けて移動している感じの場所があるわ。これはもしかしなくてもそう言う事でしょうね」

 街の外については、昨日満場一致で何かがあると話し合っていた予想通り、何かしらの罠や待ち伏せの類があるらしい。

 なので俺たちは知らないよりは知っていた方がいいという事で、ミストアイランドさんにマップをだしてもらい、モンスターたちが避けている箇所についての情報を共有する。


「……。恐らくだがクレバスに類するものがあるな」

「クレバスと言うと……氷河とか雪山にあるアレですか?」

「そうだ」

 情報共有の結果から、レティクルさんが一つの予想を口にする。

 それは、モンスターたちが避けている場所にはクレバスまたはそれに類するもの、つまりは深い穴のような物が、雪に隠れて存在しているのではないかとの事だった。


「無くはないな。古典的だが、有効なトラップだし」

「後考えられるのは、この街が生きていた頃に仕掛けられた恒常的な罠があるパターンとかかしらね」

「その場合だと機械的な物から魔法的なものまで何でもあり得そうだね」

 後考えられるのはグランギニョルの言うような罠だが……まあ、無くはないか。

 そこら辺はファンタジーだし、自動生成ダンジョンの中にだって魔法の罠は有るのだから、通常のフィールドにそれらが存在しない理由はないだろう。


「とりあえず此処から先はこれまで以上に警戒を密に、可能な限りしっかりとした足場の上を進むようにしましょう」

 打ち合わせを終えた俺たちは、移動を再開する。

 これまで以上に慎重に、何が起きても大丈夫なように。



----------



【AIOライト 79日目 09:46 (新月・雪) ドウの地・北西の森】


「さて、ようやくね」

 移動すること約二時間。

 俺たちの前に雪で出来ているかのような城壁が現れる。

 そして城壁の向こうには、雪に埋もれた廃墟の街並みが見えていた。


「本当にようやくだよ」

「まったく、こんなに時間がかかるとは思いませんでしたね」

「ですねー」

 で、街の周囲の罠だが、レティクルさんの予想通りクレバスのような深い穴が何か所も開いていた。

 事前の打ち合わせのおかげで嵌る事は無かったが、適当に地面の雪を突いてみたら、いきなり底が見えないような穴が、前方あるいは横数メートルにわたって開くというのは、中々に心臓に悪いものである。

 と言うか、一体何がどうなったら、あのような穴が開くのだろうか。

 ファンタジーであっても、ファンタジーなりの理屈は必要だと思うのだが。


「さて、周囲に敵影はなし。罠の類もないわね。じゃ、ソテニアを先行させる形で街に入るわよ」

 此処まで来て死に戻りは御免。

 グランギニョルはそんな考えから小人型のホムンクルスを呼びだすと、俺たちの数メートル前方を歩かせる始める。

 そんな考えが正しかったのかは分からないが、ソテニアは難なく街の中に入り、俺たちも無事に街の中に入る。


「街の名前は……還元街・サハイ?」

「サハイ?左の肺って事?」

「嫌な名前だ……」

 街の名前は還元街・サハイ。

 ケイカと同じく街だった場所。

 大量の雪によって建物も道も軒並み埋もれ、時には巨大な獣が爪か何かで引っ掻いたかのように深い深いクレバスが刻まれた、静寂の街。

 北東には雪原が、北西には森が、そして南には高い高い雪山がそびえている。


「まあ、そうだな。ただまあ、とりあえずは……」

 そして街の中には……


「「「ガアガア」」」

「「「フシュルルルル」」」

「「「……」」」

「連中に見つからないように安全圏を探し出さないとな」

 ケイカと同じように大量のモンスターが徘徊していた。

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