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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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412/621

412:78-1

【AIOライト 78日目 07:22 (1/6・雨) ドウの地・北西の森】


「さあ、今日も東へ進むわよ」

 遠征六日目。

 外の安全を確かめた俺たちは、ヘスペリデスをしまうと、東に向かって移動を始めた。


「今日でもう六日目かー、トウの地の方はどうなっているんだろうね?」

「さあ?ただ一日動けない日があったとしても、六日も有ればやる気のあるプレイヤーならそれなりに進めるでしょうね」

「そうですね。新規組は私たち先行組の情報もあって効率よく進められているようですし、今頃は右角山か左角山の攻略に取りかかるプレイヤーが出て来ていてもおかしくはないかと」

 周囲の警戒に、方向の確認は怠っていない。

 ただ、丸五日も一緒に行動していれば、自然と役割分担も力の抜き方も効率の良い連携と言うのも出来てくる。

 そんなわけで、この日の探索は今まで以上にスムーズな運びとなっていた。

 そうして今までよりも移動が速くなったおかげかは分からないが、代わり映えのしない森の風景にも少しずつ変化が生じてくる。


「マスター、何だか寒くなってきましたね」

「そうだな。少し気温が下がってきたような気がする」

 まず初めに息に白いものが混じり始め、肌寒さを感じるようになってきた。


「東に向かって気温が下がる……ね。こういう所はゲームなのよねぇ」

「そう言えば外の季節とは全く連動してないよね。『AIOライト』」

「ソシャゲにしては珍しいですけど……まあ、そこはGMの目的故に、と言う物でしょうね」

 続けて降ってくる雨が今まで以上に冷たくなると共に、少しずつ(みぞれ)のようになっていく。

 この時点で全員がこの先に広がっているであろう光景について一つの予想を持ち始めただろう。


「完璧に雪になってますね」

「寒いな……」

 そして、その予想が正しいことを裏付けるように霙は雪に変化し、森の木々の葉の上や地面にも白いものが混ざり始めてくる。


「雪中行軍……は考えなくてもよさそうね」

「流石にここはユーザーの楽さを考えてくれたらしいな」

 そうして出発から四時間ほど経った頃。

 雨は完全に雪となり、地面には足首ほどの高さまでではあるが、雪が積もるようになった。

 メニュー画面の天候表示も雨ではなく雪となっている。

 それでも幸いにしてと言うか、ゲーム的な仕様のおかげか、今以上に雪が積もる事はないらしく、雪の深さが変化する様子は見られない。

 だがそれでもこれだけは言えるだろう。

 此処から先は今までのマップとはまた違う物になる、と。



----------



【AIOライト 78日目 15:45 (1/6・雪) ドウの地・北西の森】


「足首程度の深さとは言え、何処までもこうだと流石に面倒ね」

「そうですね。マスターなんかはまるで気にしていないようですけど、これはちょっと……」

 天候が雪に変化してからも歩くこと4時間ほど。

 出来れば雪以外にも変化が欲しい、そんな風に俺たちが少し感じ始めた頃だった。


「これは……急ぐわよ!」

「ようやくですね」

 どうやら何かしらの変化が生じたらしい。

 グランギニョルとミストアイランドさんが少し興奮した様子で俺たちを急かし始める。

 俺たちはその事に少々疑問を感じつつも、二人の案内に応じて東へと向かう。

 すると少しずつ、ほんの少しずつだが樹木の密度が減っていく。


「これって……」

「ああ、本当にようやくだね……」

「長かったですね……」

「ふぅ……」

 そうして見えてきたのは……


「雪原か」

 何処までも白い大地が広がる広大な雪原だった。



----------



【AIOライト 78日目 16:02 (1/6・雪) ドウの地・北の雪原】


「正にようやくと言う感じね」

 新たなマップの名称はドウの地・北の雪原。

 その名の通り、雪が積もって白くなった平原が何処までも続くような場所だった。


「何か目標になりそうな物の類は?」

「ちょっと待って……あー、南の方になんかありそうな感じはするわね」

「ありそうな感じ、ですか?」

「ええ、何となくだけど、周囲に比べて盛り上がっている感じがあるわね」

 勿論、ただの平原と言うわけではない。

 今俺たちが立っているのは北西の森との境界線上だが、この場所から見渡しても多少の起伏や崖、それにモンスターの姿は見えている。


「では、そちらに……」

 この分だと……そうだな、逆に雪に隠れて見えなくなっている亀裂や崖の類なども用意されている気がする。

 あのGMならそれぐらいは仕込むだろう。


「森の中から向かいましょうか」

「と言うか、今日の探索はもう切り上げて、明日の新月を待ちましょう」

「今日これからだと絶対に途中で夜になっちゃいますもんね」

「それとあのGMなら、都市の前にワンダリングステルスモンスターとか置いていても不自然じゃないよね。ケイカの時は居なかったけど」

「同意する」

「そうだな、そうする方がいいだろう」

 で、当然ながらGMに対するそんな認識は俺たち全員の共通認識である。


「……。あの、自分が言うのもなんですけど、皆さん訓練され過ぎじゃありませんか?」

 と言うわけで、俺たちはぼやくロラ助を無視して、今日の探索は切り上げ。

 ヘスペリデスに移動して、明日に備えることにしたのだった。

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