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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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408:77-1

【AIOライト 77日目 06:05 (2/6・雨) ドウの地・北西の森-ヘスペリデス】


「分かってはいた事だけど、やっぱり無理ね」

 遠征五日目。

 ソテニアと言う名前の十体一組の小人型ホムンクルスの一体をヘスペリデスの外に出し、偵察をしていたグランギニョルの第一声がそれだった。


「そんなに外は酷いのか?」

「ええ、これだけ深い森の中だって言うのに70日目並の雨が降っているし、風もそれなりに感じる。木の上の方も激しく揺れているようだし、この分だと何時何が飛んで来たっておかしくはないわね」

 今日は77日目、事前の予測で暴風のような雨風になると言われていた日である。

 なので俺たちは今日も探索を進めるか、それとも今日は一日ヘスペリデスの中に籠っているのかを決めるべく、朝食前に外の様子を調べることにしていた。

 で、念のためにホムンクルスの視界を借りることが出来るグランギニョルに調べて貰ったのだが……正解だったらしい。

 東屋に戻ってきたソテニアは、ほんの一分ほどしかヘスペリデスの外に居なかったというのに、全身ずぶ濡れで、HPバーが最大値の90%ほどにまで削れていたからだ。


「と言うか、雨具が殆ど意味を成してないわね。量産品で質があまり良くないとはいえ、流石にここまでダメージが受けるのは想定外だわ」

「単純計算、十分で戦闘不能か。ステータスや装備の差を考慮するにしても、プレイヤーでも一時間以上外に居るのは自殺行為になりそうだな」

 勿論、ソテニアの装備の質やステータスの低さなどは考慮に入れる。

 グランギニョル曰く、ソテニアは数を頼みとした後方支援型のホムンクルスであるらしいからだ。

 だがそれでも結論は変わらない。

 今日の探索はただの自殺行為、ヘスペリデスの外には出るべきではない、これが俺たちの最終結論だった。



----------



【AIOライト 77日目 07:22 (2/6・雨) ドウの地・北西の森-ヘスペリデス】


「と言うわけで、今日の探索は予定通りなし。今日は一日ヘスペリデスの中でゆっくりとしましょう」

「分かったよ」

「キュイ」

「カァ」

「分かりました。ギニョール」

「了解です」

「承知しました」

「……」

 朝食の席でグランギニョルは今日の探索を中止することを告げる。

 そして、この場に居る全員がそれを受け入れた。

 まあ、当然の反応だろう。

 あの後二体目のソテニアが撮って来てくれたスクショには、とてもではないが今日の探索が行えるとは思えない光景が広がっていたからだ。

 それとだ。


「それで?他の班は今日の探索をどうするって?」

 さて、俺たちの方針が決まったところで他の班がどうしているかだが……。


「マンダリンさんとクリームブランさんの班は南西の草原に居ますけど、今日の探索は止めると言っていましたよ。なんでもプレンバイソンが空を飛んでいる姿を見たそうです」

「ジャックさんたちも中止ですね。今の目的は検証ではなく新たな都市の発見ですから」

「ブルカノの……と言うかトロヘルの班ももう今日は休むって言っているわね」

「ローエンたちも休むと言っているな」

「と言うか、もう掲示板で番茶さんから全ての班に向けて指示みたいなものが出ているね。今日は拠点の外に出るべきじゃない。だってさ」

「まあ、そうだよな」

 やはりどこの班も今日の探索は行わない方針で決定したようだ。

 まあ、今日は既に遠征五日目、死に戻りすればそれまでの四日間の探索行はほぼ無駄になる。

 そんな中で明らかに探索するのが無理だと分かる風雨なのだから、誰も無茶などするはずがないか。


「しかし、バイソン種が空を飛ぶって凄まじい光景だな」

「あ、動画も来ましたよ。ほら」

「ああ、本当だ。これは見事に空を飛んでるな」

 余談だが、バイソン種はその名の通り野牛型モンスターであり、体高は1メートル半程度で、非常に体重が重い。

 それが宙を舞っているというのだから……南西の草原の現状は推して知るべしである。


「コホン。まあ、そんなわけでヘスペリデスの外に出ない限り今日は自由行動よ。じゃ、これにて解散ね」

 そうしてグランギニョルの言葉と共に俺たちはヘスペリデスの中で自由行動を始めることとなった。



----------



【AIOライト 77日目 08:10 (2/6・雨) ドウの地・北西の森-ヘスペリデス】


「これで材料は十分ですかー?」

「ああ、これで大丈夫だ」

 さて、自由行動ではある。

 幸いにして他の班の携帯工房と違ってヘスペリデスは桁違いに広いので、窮屈な思いをする事はないし、それぞれが携帯錬金炉を取り出して錬金しても問題ない。

 その気になれば戦闘訓練だって行えるだろう。

 と言うか、グランギニョルなど自分の携帯工房を試しに展開してみようとしたら出来てしまったとかで、現在進行形で自分の携帯工房に籠って何かをしているぐらいだ。


「それで何をー?」

「家具作りだな。まだまだタンスとか机とか足りていない部屋も多いだろ」

「そーですねー、かなり多いですー」

 で、俺はと言えば、ミデンを使って家具を作るべく、ラードーンに大量の木材を中庭へと運ばせていた。

 拠点内にそのまま置いておくと耐久度が少しずつ下がっていく、最初に置いた場所から動かした時にタグが付いてデスペナの対象に加えられるという問題点もあるが、倉庫ボックスが使えない時でも錬金の素材に出来るのだからそこは一長一短と言っていいだろう。


「じゃ、俺は適当に錬金しているから、昼食の時間になったら呼んでくれ」

「分かりましたー」

 そうして俺は一人家具の錬金を始めた。

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