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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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407/621

407:76-1

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 76日目 07:12 (半月・雨) ドウの地・北西の森】


「何だこりゃ……」

「ほへー……」

 遠征四日目。

 ヘスペリデスを出た俺たちの頭上では、巨大な何かが通り過ぎている真っ最中だった。


「恐らくはプレンワームのワンダリングモンスターでしょう。それならばこのサイズも納得です」

 ミストアイランドさんがそう言う中、俺は恐らくプレンワームの頭がある方であろうへと視線を向ける。

 だが見えない。

 先端は勿論の事、レベル表示もHPバーも見えない。

 だがそれも当然の事なのかもしれない。


「ワーム種ってレベルの上昇によってステータスと一緒にサイズも大きくなるんでしたっけ?」

「ええ、その通りです。レベル10程度までならばソロやPTでもどうにか戦えるサイズですが、レベル20を超えたあたりから全体像の確認すら難しくなります」

 今俺たちの頭上を通っているプレンワームの直径はどれだけ小さく見積もっても10メートル近い。

 となれば、その全長は短く見積もっても500メートル、下手をすればキロの単位になるかもしれない。

 此処まで来ると……うん、もはや戦おうと言う気も起きないというか、地形として認識する方が正しいのではないかと思えてくる。


「そして恐らくですがこの個体のレベルは50。現状確認されている『AIOライト』のモンスターの中でも、間違いなく最大級と言っていいでしょう」

「と言うか、こんなのどうやって戦えばいいのかしらね。巨大ロボットでも持って来いって言うのかしら」

「後、これだけ大きいと僕たちがちょっと攻撃したくらいじゃ攻撃したと認識されなさそうな気がするよね」

 そんな俺の認識は他のメンバーも抱いているのだろう。

 全員が頭上のワームの身体を見つめ、何処か呆れた様子を見せている。

 ああそれと、うん、今思い出したが、二日目ぐらいの頃に俺はプレンワームLv.2をトロヘルと一緒に倒した事があったが、あの時のプレンワームは多少大きめの蛇ぐらいのサイズでしかなかったな。

 それが特性は同じなのにレベルが上がっただけでこうなる辺り……。


「レベル100のプレンワームとか俺たちは生物として認識出来んのか?」

「「「……」」」

 俺の言葉に全員が黙る。

 だがそれも当然の事だろう。

 なにせ俺の予測が正しければプレンワームLv.100は……もはや地形としか認識できないであろうサイズだからだ。


「ま、まあ、そんなのに出会うのは当分先の話だよな」

「そうだな。当分は考えなくてもいいだろう」

「そうね。そんな話は出会ってからでいいわ」

 と、此処で遂にプレンワームの末尾が現れ、西の彼方へと消え去っていく。

 思い返せばプレンワームが移動している間、地面とプレンワームの身体が擦れて生じるような振動の類は一切感じなかったな。

 それはつまり、そんな振動も感じ取れない程に遠くの場所から遠くの場所へとプレンワームが移動していた事になるわけだが……ああうん、変な事は考えない方がいいな。

 気が遠くなりそうだ。


「それでギニョール。今日の予定は昨日の夕食に話し合った通りですか?」

「そうね。ちょっと面食らったけど、この後は予定通りに東に向かう事にしましょう」

 シアとグランギニョルの言葉にプレンワームに気を取られ続けていた俺たちは探索の目的を思い出し、頷き合う。


「まず第一に私たちが今居る場所はドウの地・北西の森のど真ん中。上空から周囲を見渡しても、森以外にはさっきのプレンワーム以外何も見えないわ」

 俺たちは東に進路を取りつつ、昨日の話し合いの復習を始める。


「そうですね。少なく見積もっても周囲数キロメートル圏内には他には何もありません。妙な盛り上がりの類も上から見る限りでは見つかりませんね」

「木々の下に都市が埋もれている可能性は?」

「当然あるわね。けれど、私たちの探索方法でそれを見つけ出すのは限りなく難しいし、虱潰しに探すにはこの森は広すぎるわ」

「まあ、その辺は他のチームがどうにかしてくれることを期待するしかないですよね」

 俺たちが認識している範囲しか表示されないという『AIOライト』のマップの仕様上、俺たちがどの程度まで森の奥にまで踏み入ったのかは分からない。

 ただ、ケイカから真っ直ぐ北上することに成功しているのは確かなので、北に向かうにしろ、東に向かうにしろ、そのまま真っ直ぐ進む事さえできれば、何かしらの進展は望めるだろう。


「そう言うわけだから、今日はひたすら東に向かうわ。ただ……たぶんだけど今日も移動だけで終わるでしょうね。あまりにも広すぎるもの」

「まったくだな」

 そう言うわけでこの日の俺たちはひたすら東に向かう事ととなった。

 食料や戦闘の面で不安はないがただひたすらに移動をし続けることになるというのは……ちょっと精神的に拙いかもしれないな。

 もしも次の都市に着いた後も、また遠くまで出かけることになるのであれば、何かしらの高速移動手段は考えるべきだろう。

 幾らなんでも時間がかかり過ぎる。


「はぁ、これは今日はもう無理だし、明日は77日目だから、一日ヘスペリデスに籠る事も考慮するべきかもしれないわね」

 そして、この日も結局何も見つけられずに、探索は終了することになった。

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