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【AIOライト 60日目 17:42 (5/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
「なるほど。未遂とは言えMPKが……」
ケイカ南坑道を脱出した俺たちは、番茶さんに連絡を取った上で、錬金術師ギルド・ケイカ支部に移動。
ケイカ支部で何があったのかについて、一通り番茶さんに話した。
「状況的に見て、故意なのは疑いようがないでしょう。俺たちは灯りをつけていて、短剣が飛んで来たのは俺たちの後方の通路ですから」
「そうだね。この件については間違いなく故意だ。その点については疑いようがない」
「一応、報告はしましたが、GMは動くと思いますか?」
「厳しいかな。ゾッタ君の見立て通りに使われたのがレア度:PMのアイテムだとすると、今回の犯人は攻略の意欲もそれなりにはあるとGMは判断するはずだ。となればニラモたちの件でGMが宣言した処分の範囲外に居ることになる」
「つまり、俺たち自身でどうにかするしかない、と」
「そう言う事になるね」
で、そうして話をした結果。
まず今回の件についてはGMは頼りにならないと判断された。
これについては当然だろう。
処分するのは不特定多数に迷惑をかけている上にクリアへの貢献をする気がないプレイヤーと言っていたからな。
そして此処で言うやる気のないプレイヤーに、レア度:PM……それも恐らくは独自効果持ちの投擲用短剣を作れる犯人が含まれるとは思えない。
「他のプレイヤーへの周知はどうしますか?」
「基本的には君たちには口を噤んでおいてもらいたい。掲示板にも私が書き込んでおこう。で、今後のためにも君たちの名前や状況、場所については書かないでおく」
「分かりました。それでお願いします」
「?」
次に周知はどうするか。
これについては番茶さんに任せることになった。
掲示板ならば、俺たちの側からも書きこんだことは確認できるので、問題は起きないだろう。
が、シアはどうして俺たちがこうするのかがよく分かっていないようだった。
「番茶さんだけが書き込むのは犯人への牽制と、後続への抑止。ですね」
「その通りだゾッタ君」
「えーと?」
「シア、説明をするとだ」
と言うわけで、俺はシアに説明をする事にする。
まず、犯人への牽制。
これは今回の件がケイカ南坑道の中で起き、そう言う事件が起きたと知っているプレイヤーがこの場に居る俺、番茶さん、ローエンとその仲間たちと言うごく限られたメンバーであるからできる事であり、もしもこの件について言いふらすプレイヤーがいるならば……そいつは犯人あるいは犯人の周囲に居るプレイヤーと推定できるという事である。
まあ、レア度:PMの投擲用短剣を作り、それを秘密裏に持っているようなプレイヤーがそんなヘマをするとは思えないが。
「後続への抑止は……まあ、同じことをやらかすプレイヤーが出る可能性を少しでも減らすためだな」
「そんな事が有り得るんですか?」
「有り得るね。人間と言うのはシア君が思っているほど優れた生物ではない。一人先行者が出てくれば、模倣犯は必ず出てくる。その行為に何のメリットも無くてもね」
「そんな……」
次に後続への抑止。
これは番茶さんの言うとおり、一度MPKが起きれば、動機は別としても、後追いは必ず出てくる。
そいつらの質は今回の犯人と比べたら何段も落ちたものだろうが、手口が分かっているのであれば、中には成功させる者も出てくるだろう。
となれば……まあ、色々と面倒な事になるだろうな。
それこそ攻略全体が停滞しかねない程に。
「まあ、そんなわけだ。一先ず私はこの場で書き込みをさせてもらうよ」
「お願いします」
番茶さんが俺たちの前で掲示板に投稿する文面を作成し、それを俺たちに見せた上で掲示板に投稿する。
これでまあ、一先ずは大丈夫だろう。
「掲示板の巡回は……」
「それは俺たちの方でもやっておきます。今日はもうギルドの外には出ないつもりですから」
「では、よろしく頼む。私も色々とあるからね」
「はい」
掲示板にMPK関係の書き込みがあるかはローエンたちがやってくれる、と。
うん、こういうのは数頼みな面もあるからな。
ローエンたちがやってくれるならありがたい。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「ああ、情報感謝する。ゾッタ君」
「あー、攻撃を防いでくれてありがとうな。ゾッタ」
と言うわけで、口を噤む必要がある上に数も居ない俺たちはこの場で去らせてもらうとしよう。
居てもしょうがないしな。
後……やっぱりローエンはツンデレ系な気がするな。
男だが。
「マスター。私たちはこれからどうしますか?」
「そうだなぁ……今日についてはダマスカスのインゴットを作って、装備の修復をしたら、後はもう寝るだけでいいだろうな」
「犯人を捜したりはしないんですね」
「しても見つからないし、無用なリスクを負うだけだからな」
俺とシアはケイカ支部の地下に移動を始める。
「あの、マスター……本当にMPKの後追いが出るんでしょうか……?」
「まず間違いなく出る。人ってのはそう言うものだ。『AIOライト』の中でも現実でも……な」
「何だか悲しいですね……」
「かもな。俺としては馬鹿馬鹿しいの一言に尽きるが」
そしてシアに向けて話をしつつ、この上なく呆れている様子も見せる。
当然だ、『AIOライト』でMPKをやったところで、妨害と憂さ晴らし以上の事は出来ないのだから。
そんな事の為に時間と労力をかけるなど、俺からしてみれば馬鹿馬鹿しい以外の何物でもない。
「さ、そんな連中の事は無視して、俺たちは俺たちのやるべき事をやるぞ。シア」
「はい、そうですね。マスター」
尤も、エファスのように誰かを害する以外の存在意義を持たない連中もいるので、こういうのが湧くのは仕方がないことなのだろう。
だから次に出会ったら……全力で叩き潰すとしよう。




