287:57-1
【AIOライト 57日目 07:05 (2/6・雨) 鉱山街・ケイカ】
「御馳走様でした」
「お粗末様でした」
翌朝。
昨夜色々とあって食べ損ねた夕食のパイと、今朝になってシアが作ってくれたちょっと量が少なめなパイを俺は食べた。
勿論、どちらも美味しかった。
うん、今日も一日頑張れそうだな。
「よし、それでは各自予定通りに行動するとしよう」
「シア、ボスへのルートはこれで間違いないんだよな」
「はい、道が変わるような仕掛けが無ければ、これで大丈夫なはずです」
さて、本日の行動だが、どうやら各自がそれぞれに行動する形であるらしい。
つまりトロヘルたちはPTを組んで、昨日俺とシアが見つけたボス部屋らしき場所へ。
「街を越えた先か……だが城壁に門があると思うか?」
「それを確かめるためにも私たちは行くのだよ」
番茶さんたちはケイカの東側……城壁の向こう側を見に行くらしい。
なお、ケイカ内部からケイカの東側を見た場合、何かしらの結界が施されているのか、そこに何があるかは一切分からなかった。
勿論この情報は番茶さんたちも持っているが、だからこそ確かめに行くそうだ。
「行くぞっ!例え後一週間だろうが、俺たちだって攻略組何だからな!このままで終われるか!」
「「「おうっ!!」」」
昨日俺と揉めた剣を提げたプレイヤーたちはケイカ南の坑道を調べに行くらしい。
全身鎧のNPCの話通りならば、そちらでも結界石は取れるようだが、それ以外の部分ではどのような変化があるかは分からない。
そう考えると、彼らの行動は攻略組らしく、今後の攻略に利がある行動と言えるだろう。
「さてマスター」
「ん、俺たちもそろそろ行くか。ミスリルを集めたい」
で、そうこうしている間に、錬金術師ギルド・ケイカ支部の中に残る人影は一時のそれから大きく減り、僅かな物となる。
なので俺たちも今日の目的である魔銀鉱石を集めるべく準備を整える。
「で、お前たちはどうするんだ?」
「私は今日はゾッタ兄に着いて行こうと思っているわ。ミスリルは私も欲しいアイテムだもの」
「なるほど」
残っているメンバーの片方、グランギニョルについては、俺に着いて行って、魔銀鉱石を集めるつもりであるらしい。
まあ、グランギニョルの戦闘能力なら手助けにはなっても、足手まといになる事はないので、問題はないだろう。
「僕も師匠に着いて行くつもりだよ」
「ミスリルが欲しいからか?」
残っているメンバーのもう片方、シュヴァリエは俺がそう問いかけると、首を横に振る。
「色々と忘れていた物があったから、それを改めて思い出す為に師匠に着いて行くんだよ」
「ふうん……」
シュヴァリエの言葉と目には迷いが見える。
だが、駄目な方向の迷いではなく、答えを出す為に必要な迷いと言う感じだ。
これならば、戦闘で何かをやらかすような事はないだろう。
「まあ、二人とも着いて来たいなら別に構わないが……先にちょっと聞いておきたい事がある」
「聞いておきたい事?」
「何だい?師匠」
だが、迷いとか実力とかの方面とは別に二人には訊いておきたい事がある。
「グランギニョル。お前、ホムンクルスを五体同時に出していただろう。アレは何だ?」
「あー、まあ、突っ込むわよね」
「シュヴァリエ。お前も新しい烏のホムンクルスを持っているな。アレはどういうのだ?」
「ああ、師匠は知らないんだよね。そう言えば」
「勿論、全部じゃなくていいが、二人とも最低限は教えてくれ」
「分かったわ」
「分かった」
それは俺が知らない間に二人がどれほど成長したのか。
その成長の一端についてである。
「じゃあ、まずは私からね。来なさい」
「「「……」」」
まずはグランギニョルから。
グランギニョルが命じると、虚空から五体のホムンクルスが現れる。
その内の三体、アブサディット、サングラント、ブラフについては既に俺も見知っているホムンクルスであり、三体の装備は全身金属鎧の金属武器と言う重武装である。
勿論、より正確に見ればアブサディットの装備が一番豪華ではあるが。
で、問題は残りの二体だ。
「名前はアクターとアクトゥリース。未だ使い慣れていないから今回は期待しないでほしいけれど、軽装備の斥候と牽制役ね」
「なるほど」
グランギニョルがそう言うと、アクターとアクトゥリース、他の三体に比べて身軽な印象を受ける二体の人形型ホムンクルスは静かに礼をする。
なお、アクターが男性型で、アクトゥリースが女性型である。
尤も、一番驚くべき点は、二体のホムンクルスとグランギニョルの間にある繋がりが、アブサディットを中継点とする形で存在している事か。
これはもしかしなくても、そう言う方法でもってGMの制限を抜いたという事だろう。
流石は俺の従兄弟である。
「じゃあ、次は僕だね。この子はバルテンペッタ。見ての通りの烏型のホムンクルスだね」
「カー」
さて、次はシュヴァリエだ。
今、シュヴァリエの周りにはヴィオレエクレールことヴィオと言う栗鼠に似た姿のホムンクルスだけでなく、バルテンペッタと言う名前の烏に似たホムンクルスが飛んでいる。
ただよく見れば烏に似ているだけで、嘴や爪が綺麗な黄色に染め上げられており、時折だが周囲に黄色い風のような物が現れている。
「だがそれだけじゃないんだろ」
「そりゃあね。バル!」
「カー!」
シュヴァリエが呼び掛ける。
するとバルテンペッタことバルはシュヴァリエの左手の上に止まると、その全身を金色に輝かせる。
「これがバルのもう一つの姿だよ」
そうして光が止んだ時。
シュヴァリエの手には黄色い風のような物を纏った黒いライフル銃が握られていた。
間違いなく、昨夜俺が見たものだ。
「なるほど、烏と銃。二つの姿を持ったホムンクルスと言うわけか。しかし……」
「一応言っておくけど、僕のイメージしている騎士は剣と槍しかなかった頃の騎士じゃなくて、銃が生まれて軽装になったころの騎士だからね」
「ああ、そう言う事なら問題はない」
なお、イメージ的に問題があるかどうかについては、シュヴァリエの中で既に決着がついている話題であるらしい。
それならば、俺からとやかく言う事はないだろう。
「さて、それじゃあだいたい分かったし、出発するか」
「はい、マスター」
「そうだね」
「そうね」
「いってらっしゃいませ」
そうして確認するべき事を確認した俺たちは、ケイカ支部を後にした。




