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AIOライト  作者: 栗木下
4章:左角山
197/621

197:41-1

【AIOライト 41日目 13:02 (2/6・晴れ) 左角山】


「ようやくですね」

「ああ、ようやくだ」

 翌日。

 俺、シア、ネクタールの三人は東の丘陵から左角山に入った。

 そして昼ごろになって、左角山の本体であろう山の麓に来ていた。


「周りの山と繋がっていないのは右角山と同じですね」

「そうだな。それに樹の葉が少し青みがかっている様にも思える」

 俺たちはまず他の山と、目の前の山の違いについて改めて確かめる。

 まず、シアの言うとおり、右角山と同じくこの山も周囲の山脈から切り離され、独立峰のようになっている。

 樹の密度は南の森林にも近いためか、右角山よりも圧倒的に濃く、俺たちが今居る場所は開けているが、山の中は鬱蒼(うっそう)とした枝葉に光を遮られ、薄暗い感じになっている。

 それこそ夜になってしまえば、月齢に関わらず一寸先も見えなくなるほどだろう。

 そして、枝葉についている葉もよく見れば、微妙に青みがかっている。

 この点については右角山の木々が微妙に紅葉していたのと対を為す感じである。


「さて、登るか」

「まずは、例のラインが有るかどうかですね」

「ああそうだ」

 そうして、違いを確かめ終ったところで、俺たちは左角山に登り始めた。



----------



【AIOライト 41日目 15:12 (2/6・晴れ) 左角山】


「ふむ、有ったな」

「有るんですね。私には見えませんけど」

 登り始めておおよそ二時間。

 脇目も振らずに頂上を目指して歩いていた俺たちの前に、空中に張られた一本の青い線が現れる。


「やっぱり見えないのか。此処にあるんだけどな」

「見えないですね」

 青い線は深い海のように青い線であり、丁度人の目線ぐらいの高さに張られている。

 が、触ろうと思って手を伸ばしても、手は虚空を切るばかりである。

 どうやら、右角山の赤い紐同様に、実体はないらしい。


「出元は……あれか」

 出所を探って線の行先を見てみれば、そこには樹の幹から生えた真っ青な植物の芽が見えた。

 生えている樹との違いを考えると、この真っ青な植物の芽はヤドリギに似た植物か何かと考えるべきなのだろうか。

 とりあえず普通の植物でない事は確かだ。


「マスターのその目は本当に謎ですよねぇ」

「まあ、理屈も何も分からないしな」

 どうしてこう言う物が見えるのか、という点については相変わらずの謎である。

 ただ、ゲームの仕様でない事は確かだろう。

 あのGMが俺一人だけ贔屓にするとは思えないし、そもそも真っ当な運営なら特定のユーザーを理由もなく優遇するような事など有り得ないからだ。

 そんな当たり前の話に、メンテナンスを経ても修正されなかった事を考えると、恐らくこの目は俺個人の資質に由来する何かだと思うのだが……うん、駄目だな、深く考えても分からないし、これ以上は気にしないでおこう。


「とりあえず此処から先の自動生成ダンジョンは少し注意を払うぞ」

「分かりました。マスター」

 さて、右角山と同じならば、此処から先でイベントを進行させる事の出来る自動生成ダンジョンが発生しているはずである。

 となれば、この先は条件を満たしている自動生成ダンジョンを見つけつつ、適当なプレイヤー集団を見つけてPTあるいはアライアンスを組むことを目標に行動するとしよう。

 流石にレア度:2のダンジョンを単独で攻略できるとは思わないからな。



----------



【AIOライト 41日目 17:23 (2/6・晴れ) 左角山】


「ダンジョンは見つかりましたけど、パーティの方は駄目でしたね」

「まあ、こういう縁は運次第な面も多々あるからなぁ……」

 探索の結果、扉の裏に植物の葉や蔓がくっつき、特別な自動生成ダンジョンと化している物は幾つか見つかった。

 だがPTの方は駄目だった。

 既にフルアライアンスになっている所に分け入るのはトラブルしか呼びこまないので論外として。

 そうでない普通のPTや微妙に空きがあるアライアンスはあった。

 あったが、一度レア度:2の自動生成ダンジョンを攻略した身として、行けるかどうか怪しいと感じた物ばかりだったのだ。


「ギニョルやブルカノさんたちは居ないんですか?」

「んー、メッセージを送ってみてもいいが……いや、止めておいた方がいいな。もうダンジョンの中に入っているか、そうでなくともフルでアライアンスを組んでいるだろ。トロヘルやグランギニョルたちがこの場に来て、放っておかれるとは思えない」

「まあ、それは確かにそうですよね」

 グランギニョルやトロヘルたちには頼れない。

 そもそも左角山に今居るかどうかも分からないしな。

 それにトロヘルたちは既に固定PTに近くなっている。

 そこに俺が加わっても連携を乱すだけだろう。


「しょうがないない。単独攻略を試みてみるか」

「えーと、大丈夫なんですか?」

「『柔軟な森の洞窟』の時は行けたしな。道中の雑魚を丁寧に処理して進めば、後はボスとの相性次第だ」

「マスターがそう言うなら……」

「……」

 シアもネクタールも微妙に不安そうな様子を見せている。

 だが実際やり方次第で行けるはずなのだ。

 現にこれまでも、レア度:2のダンジョンの第一階層、第二階層の探索なら、単独でやれているわけだしな。

 なら、攻略そのものは不可能ではないはずである。


【『呪詛招く草原の図書館』 レア度:2 階層:3 残り時間71:32:12】

 と言うわけで、俺は今回挑むことになる自動生成ダンジョン『呪詛招く草原の図書館』に繋がる白磁の扉を見る。

 勿論、この扉の背後には蔓と葉が着いている事は確認済み。

 特性は状態異常の一つであるカース……呪いであり、その効果は与ダメージの一部反射。

 草原はシンプルだが広い空間。

 図書館は本棚が壁になっていたりして、全体的に一部屋が広い。

 だが、きちんと対応していけば、何とかはなるだろう。


「じゃ、行くぞ」

「……。はい、分かりました」

「……!」

 俺はそう頭の中で結論付けると、『呪詛招く草原の図書館』に入った。

 尤も、本格的な攻略は明日の朝からだが。

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