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AIOライト  作者: 栗木下
4章:左角山
193/621

193:39-3

「……」

 俺はボンピュクスさんの提案に対して少し悩む。

 割るか割らないかではなく、割った後の結果と展開を考えて。

 そうして一通り悩んだところで俺は口を開く。


「割りましょう。ただ、割るのは俺が自分でやりますので、道具だけ用意してもらっていいですか?」

「分かった。で、自分で割るってことはそう言う事でいいんやね」

「ええ、何かが出れば俺の物。何も出なくても俺の責任。そもそも相談をしたのは俺ですからね。最終決定とその結果に伴う責任は俺が負うべきです」

「ゾッタ君はこういう所生真面目やねぇ……」

「マスターってこういう時は自分だけが責任を負うようにしますよねぇ……」

「その方が都合が良いからな」

 不死殺しの石ころは割る。

 そして、その結果として何が起きても俺の責任とする。

 実際、これが一番分かり易くて、俺自身も気が楽だからな。

 だいぶ身勝手な物言いと言うか条件の提示だと思ってはいるが、此処を譲る気はない。


「じゃ、ちょっと待ってな。今、ノミと金槌、それに簡単な固定器具を持って来てもらうから」

「はい、お願いします」

 ボンピュクスさんが空中で手を動かし、何かしらの操作をする。

 恐らくは服飾向上委員会の仲間に依頼して、アイテムを持って来てもらうのだろう。


「会長、お待たせしました」

「ありがとな、ソフィア」

 数分後。

 綺麗な金色の長髪をポニーテールの形でまとめた女性が部屋の中に入って来て、ノミと金槌、それに物を挟むための器具を机の上に置く。


「「……」」

 で、ソフィアと呼ばれた女性と俺の視線が去り際に合ったのだが……うん、出来るだけ敵対的な関係にはなりたくないな。

 誰と繋がっているのかは分からないが、どす黒い蛇のような形の繋がりが誰かに向けられているのが見えた。

 アレがシアや俺に向けられるのは……想像したくもない。


「マスター?」

「いや、何でもない」

 まあ、これ以上は話が逸れるので止めておくとしよう。

 それよりも今は不死殺しの石ころだ。


「じゃ、ゾッタ君頼むで」

「はい」

 ボンピュクスさんが不死殺しの石ころを器具に固定し、動かないようにする。

 そこに俺がノミを軽く当てる。


「では、始めます」

 そして俺はノミの後部に向けて金槌を振り下ろした。



----------



「割れたな」

「割れましたね」

「ちゃんと割れたみたいやね」

 金槌とノミで石を叩くこと数度。

 耐久度が0になった不死殺しの石ころは小さな音を立てながら真っ二つに割れた。

 そして石の部分は消え去り……


「で、当たりや」

「みたいですね」

「綺麗……」

 代わりに人の爪ぐらいの大きさを持った緑色の石が転がっていた。



△△△△△

不死殺しのエメラルド

レア度:2

種別:素材

耐久度:100/100

特性:キルデッド(不死者に対して強い力を持つ)


翠玉とも呼ばれる緑色の宝石。

所有者に叡智(えいち)を授けるとされる希少な物質。

▽▽▽▽▽



「不死殺しのエメラルド……」

「石ころの中には宝石が埋まっている事もある、か。これだけでも貴重な情報やね」

「今まで捨て値で処理されていた物が大化けするかもしれないからですね」

「せや。ま、今まで掲示板にも情報が上がってなかった辺り、確率はお察しなんやろうけどな」

 俺はボンピュクスさんとシアが話している中、不死殺しのエメラルドをつまみ上げ、よく観察してみる。

 大きさは人差し指の爪ぐらいの大きさ、現実の宝石の大きさを考えると、かなり大きいのではないかと思う。

 色は鮮やかな緑色……俗にエメラルドグリーンと呼ばれるような綺麗な色をしている。

 透明度はかなり高いように感じる。

 形はよく指輪に使われる様な形はしていないが、これは未加工なので当然だろう。

 総評すると……現実なら何十万とするのではないかと思える宝石だった。


「で、ゾッタ君。一応聞くけど売る気はある?」

「ありません」

「ですよねー」

 うん、流石にこれは売れない。

 さっきの精算で数日分の食費と次のダンジョン探索の準備のための費用は稼げていると言うのもあるが、それ抜きにしてもこれは売れない。

 単純な価値だけ見ても、今これを売るのは勿体無さすぎる。


「……」

「マスター?」

 それにだ。

 不死殺しのエメラルドが現れた瞬間から、既にその使い道は見えていた。

 あの繋がりが感じ取れていたからだ。


「あ、あの……まさかとは思いますが……」

「ん?ゾッタ君はどうしたんや?」

 繋がっている先はシアの装備しているプレンウッドリングに……倉庫ボックスの中に入っているアイテムだな。

 プレンウッドリング以外の繋がりの先に感じるのが、俺の内側の領域、ネクタールや俺がアイテムをしまっているんじゃないかと思える領域、記憶の中に在って、忘れてしまえばお終いな領域だからな。


「ボンピュクスさん、たぶん見えちゃったんだと思います」

「見えたって……まさかっ!?」

「そのまさかです」

 場所はたぶん、ここ(服飾向上委員会)が適当。

 時間は気にしなくていい感じだな。

 となると、後は場所を借りれるかだな。


「ボンピュクスさん。ちょっとこの場で錬金をしたいんですけど……」

「撮影を許可してくれたら許すで」

「あ、じゃあ、よろしくお願いします」

 と言うわけで場所を借りる交渉をしようと思ったら、交渉になりさえしなかった。

 一瞬で許可が下りた。

 一体どういう事なのだろうか?

 まあ、交渉が楽になった分は得したと思えばいいか。


「じゃ、ちょっと必要な素材を取ってきますので、この部屋はそのままでお願いします」

「ん、了解や」

「シア」

「はい、マスター」

 そうして俺は手近な錬金術師ギルドへと素材を取りに行った。

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[一言] やっぱり、妖魔ソフィアじゃないの⁉️
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