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「さて、どっちから行くか」
「たぶん、どっちでもいいと思いますよ」
扉の向こうは、人が三人ほど横に並んで歩ける幅を持った通路であり、左右どちらにも行けるようになっていた。
後の特徴と言えば……窓が一つもない事ぐらいだろうか。
一部の岩から光源となる赤い光が漏れだしているので明るさは問題ないが、微妙な閉塞感を感じる。
「ま、そうだよな」
俺とシアは右に向かって伸びる通路を選び、歩き出す。
これまでの経験からして、恐らくはこのダンジョンも扉で区切られた部屋同士を通路で繋ぎ、時折広場のようになっている広いスペースがあると言う所だろう。
そして、採取ポイントも恐らくは部屋の中だろう。
「扉がありますね」
「じゃ、開けるか」
と言うわけで、俺はシアが早速発見した扉を多少の警戒感を持ちながら開けてみる。
「何か有りますか?」
「いや、何も無いな」
「そうですか」
部屋の中には何も無かった。
家具の類すらない。
完全な空き部屋だった。
と言うわけで、俺は扉を閉めて次の部屋に向かう事にする。
「ん?」
「モンスターですね」
そうして探索すること数分。
空き部屋ばかりを見つけていた俺たちが通路を歩いていると、二体のモンスターが現れる。
「ピピッ」
「ピキュ」
現れたモンスターの名前はキルデッドバードLv.15とLv.16、現在の状況は距離が離れているからか、ノンアクティブになっている。
通路に建てられた石製の止まり木に泊まり、さえずっている。
大きさは……少し大きめのカラスかハトと言う所か。
しかしバード種か……外だと自由に飛び回られて、カウンター以外では碌なダメージを与えられない面倒な相手だが、屋内だとどうなんだろうな。
自由に飛び回れないから、案外楽な相手かもしれない。
となると……折角だからアレを試しつつ、戦ってみるとしよう。
「シア、此処で待っていろ」
「分かりました」
「ネクタール」
「……」
俺はネクタールに指示を出し、俺の全身を覆わせていく。
そしてその上で、その表面を変化させ、俺の居る場所を捉えづらくさせる。
これでかなり近くまで寄れるだろう。
「じゃ、行ってくる」
「はい」
俺は壁際に寄ると、ゆっくりと出来る限り足音を立てないように、立体物があることが分からないように歩いて進む。
「ピピッ?」
「ピピピ」
距離は1メートルほど、キルデッドバードたちにこちらに気付いた様子はない。
うん、いけるな。
「「「……」」」
俺はネクタールの内側で静かに斧を振り上げ、両手で構える。
キルデッドバードたちも俺の殺気のような物を感じ取ったのだろう。
さえずりを止めて、周囲を警戒し始める。
「フンッ!」
「ピキュ!?」
「ピピッ!?」
俺の斧が振り下ろされ、Lv.15の方のキルデッドバードが地面に叩きつけられる。
そして、Lv.16の方のキルデッドバードが驚きつつも舞い上がる。
だが、その高度は低い。
これならば簡単に攻撃を当てられるだろう。
「『ブート』!」
「ピピィ!?」
と、ここでシアが放った魔法弾が当たり、飛び上がったキルデッドバードも撃墜される。
どうやら避けたくてもスペースが無くて避けられなかったようだ。
「一気に攻め落とすぞ!」
「はい!」
チャンスだ。
俺はそう判断し、落ちた二匹のキルデッドバードに攻撃を仕掛ける。
俺は斧を振るい続け、ネクタールは飛び立とうとしたキルデッドバードを上から叩き、それらを避けて逃げ出そうとしてもシアの魔法が入って落とされ続ける。
そうして攻め続けた結果。
「「ピピィ……」」
「よし、終わったな」
「はい、完勝ですね」
「……」
あっけなくキルデッドバードたちのHPバーは底を突いた。
対するこちらのHPとMPは殆ど減っていない。
シアの言うとおり、完全な勝利である。
「じゃ、剥ぎ取るか」
「一応、周囲を警戒しておきますね」
「頼む」
俺は剥ぎ取り用のナイフでキルデッドバードを突く。
その結果、キルデッドバードの羽根と言うアイテムを入手する。
詳細はこんな感じだ。
△△△△△
キルデッドバードの羽根
レア度:2
種別:素材
耐久度:100/100
特性:キルデッド(不死者に対して強い力を持つ)
キルデッドバードの羽根。
色と模様は様々であり、用途も様々である。
▽▽▽▽▽
「ふむ」
まあ、これはハズレと言うか、普通に売却する用のアイテムだな。
敢えて使うとしたら特性:キルデッドを付与するのに使うくらいだが……アンデッドモンスターが必ず出ると分かっている場所もまだないしな。
そんな機会はないだろう。
仮にアルカナボスにアンデッド属性のがいれば、それを倒す時に使えるかもしれないが……それなら、その時に集めればいいな。
うん、これはもう売るアイテムでいいな。
「終わりましたか」
「ああ、終わった」
さて、剥ぎ取りが終わったなら、次の採取ポイントかモンスターを探すとしよう。
と言うわけで、俺とシアは再び、『不死殺しの火山の屋敷』の探索を始めた。
「あ、採取ポイントですね」
「だな」
そうして採取ポイントを探して、部屋を調べること数度。
俺たちは壁の一部が崩れ、幾つもの石が転がり、その上に採取ポイントである事を示す光が灯っている部屋を見つけた。