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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山

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177/621

177:37-7-E3

【AIOライト 37日目 13:25 (満月・雨) 赤紐の間】


「シア、悪いが部屋の外に出ていろ」

「……。無茶をするなと言ってもマスターは聞かないと思うので、支援魔法だけかけておきます。『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』」

「助かる」

「命だけは大切にしてくださいね」

「ああ」

 俺に補助魔法を掛けたシアは、部屋の外に出ていく。

 これで部屋の中で何をしようとも、部屋の外に居るシアに被害が及ぶことはない。


「さてと……だ」

 俺は改めて防御力溢れるホムンクルスの核を見る。

 そして、防御力溢れるホムンクルスの核、棘刀(きょくとう)・隠燕尾(かくれえんび)、奇箱(きばこ)・普喰(あまねくらい)、骸套(がいとう)・三手千織(みつてちおり)、俺の肋骨の間に繋がりがある事も確かめる。


「……」

 手順は見えている。

 語るべき言の葉もはっきりとしている。

 そしてシアを作った時に比べれば、難易度は明らかに低くなることも分かっている。

 だから後は俺が迷いなく、躊躇いなく付き進めるか否かである。


「始めるか」

 俺は棘刀・隠燕尾を左手で逆手に持つと、一度深呼吸をしてから振り下ろす。

 自分の肋骨が在るはずの場所へと。


「ぐっ……錬金術師ゾッタの名において告げる」

 分かっている。

 俺の肋骨が本当にそこに有る事はない。

 『AIOライト』の中に居る俺はゾッタと言う名前の付いたデータの塊だ。

 だが、一つ確信があった。

 だから俺は棘刀・隠燕尾で肋骨の一つを切り離し、えぐり出す。


「我が肋骨よ!汝は我にして我でなくなりしもの、されど繋がりを残すものである!」

 俺の身体からえぐり出された肋骨は、部屋に設置された錬金鍋の中へと真っ直ぐに落ち、直ぐに見えなくなる。

 当然だ。

 本来ならこのゲームの中に存在するはずのないアイテムなのだから。

 けれど現実にある俺の身体がつじつまを合わせて肋骨を消している間、その間だけならば虚構のアイテムは鍋の中にあり続ける。

 俺との繋がりを保った状態で。


「骸套・三手千織。汝は器、汝は虹、汝は月である。故に汝の権能を以って、千変万化し、後追う者を包み覆え」

 だから急がなければならない。

 俺の肋骨が燃えるように熱くなっている間に、この繋がりを通して魔力を注ぎ込み続け、その上で言葉を語り続けなければいけない。


「棘刀・隠燕尾。汝は刃、汝は爪、汝は境界である。故に汝の権能を以って、境界示し続け、歪なる己を許容させ続けよ」

 骸套・三手千織が錬金鍋の中で薄く広く広がる。

 棘刀・隠燕尾が薄く広がったそれを錬金鍋の中で切り裂いては紡ぎ直していく。


「奇箱・普喰。汝は内、汝は口、汝は門である。故に汝の権能を以って、我が内に在る虚無の門と混沌の門を開き、皆々喰らいて力へと変えよ」

 その中に奇箱・普喰が落ちていき、一瞬だけ布に包まれた後、何処かへと消え去る。

 だが問題はない。

 その存在ははっきりと感じ取れている。


「魂の欠片。新たな命と成り得ぬ矮小なる欠片。汝育む床は成った。けれど汝より生まれ出づるは定められし命、縛られし命、鎖纏う命である」

 俺は防御力溢れるホムンクルスの核を右手で持つと、錬金鍋の上に持っていく。


「それは我が望まぬ命の形。許せぬ形である。故に我は我の魂を以って汝を埋め、汝が鎖を解き放つ」

 そして手を放し、錬金鍋の中に投入する。


「交われ。我が魔、我が肋骨、我が魂と。汝は我であって我に無く、我に無くて我にある。確固たる一ではなく零壱に揺蕩うものとなる」

 俺の肋骨が今までよりもはるかに熱くなり、内蔵に焼けるような痛みが走る。

 錬金鍋からはありとあらゆる色の光と雷が発せられ、俺の体を激しく打つ。

 だが俺はその痛みを無視して唱え続ける。


「我と繋がりて汝は門となる。電子の虚空、肉の混沌、いずれにも汝は繋がる。我と繋がりて汝は境界となる。情報の肉、狭間の心、いずれも汝は持つ。我と繋がりて汝は星となる。皆知る虹、皆知らぬ月、いずれにも汝はなる」

 そうでなければ、新たな命を造り出すことなど出来ないのだから。


「我が目は汝が目、我が耳は汝が耳、我が鼻は汝が鼻、我が舌は汝が舌、我が魔は汝が魔、その逆もまた然り。されど我と汝は一にはならず、そうであるが故に触れしものは異なる」

 そうでなければ、極々浅いところにあると言っても、それを掴むことなど出来ないのだから。


「来たれ来たれ、常闇は終わり、星は輝き出し、黄金の輝きが始まる」

 そして俺は今それを掴んだ。

 鍋の中に入れた右手でも、それまでの肋骨があった場所でも。


「ネクタール」

 俺は気が付けば反応を止めた鍋の中から、それを勢いよく引き上げる。


「さあ行こうか」

 それは一見すれば、虹色に輝いている以外に見るところのない大きな一枚の布。

 けれど鍋の中から引き上げられたそれを一度翻すだけで明確な変化が生じる。

 色は地味な色合いに、形はフードの付いた外套に、一見すればホムンクルスだと分からぬ姿へと変化する。


「人でもなくホムンクルスでもない道を」

 そうして俺はネクタールを身に付けると、部屋の外で待つシアを迎えに行った。


【ゾッタの錬金レベルが20に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】


△△△△△

ゾッタ レベル16/20


戦闘ステータス

肉体-生命力20・攻撃力10・防御力10+2・持久力9・瞬発力10・体幹力10

精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力21+4+2・感知力10・精神力11


錬金ステータス

属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10+6・光属性7・闇属性10

分類-武器類15・防具類15・装飾品14・助道具13・撃道具13・素材類15

▽▽▽▽▽


△△△△△

ゾッタ レベル16/20

攻撃力430:210/220

防御力230:0/0/65/55/55/55


右手:バーサークスチールタバルジン(特性バーサーク・リジェネ)

左手:ガードデーモンナイフ(特性ガード)

頭:『狂戦士の鬼人の王』の仮面(回復力+1・特性バーサーク・リジェネ)

胴:ソイルバイソンシャツ(特性バーサーク・ソイル)

腕:ソイルホースアーム(特性バーサーク・ソイル)

脚:ソイルホースズボン(特性バーサーク・ソイル)

装飾品1:プレンウッドリング(回復力+1)

装飾品2:ネクタール(ホムンクルス)

▽▽▽▽▽

11/14誤字訂正

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さりげなく肋骨を取り出さないでもろて
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