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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
168/621

168:36-8-D8

【AIOライト 36日目 15:00 (5/6・晴れ) 『防御力溢れる清流の船』】


「ん?」

 俺たちのPTは準備を整えると第三階層に入った。

 そしてすぐに俺は何かを感じ取る。


「マスター」

「師匠?」

 シアとシュヴァリエが俺の様子を不思議そうにしている中、俺は感じ取った何かの正体を確かめるべく、周囲を見渡してみる。


「んー……」

「えーと、何が有ったんでしょう?」

「ゾッタ君の事だから、何かを感じ取ったのかもしれないな」

「じゃ、私の方で掲示板に書き込む準備をしておきましょうか」

 先に第三階層に降りた番茶さんとグランギニョルのPTの姿は既に見えない。

 通路の数は三本あるが、現実で庶民向けの客船として一般的に運用されていそうな船と特に変わりは感じられない。

 極々普通の恐らくはプラスチックと金属、それに木材で造られた通路だ。

 何処にもおかしな点はない。


「……」

 だが確かに何かは感じた。

 今はもう感じないが……感じた何かが消え去る時の感覚は、今思い返してみれば、何かを隠すような感じだった。

 そして一瞬感じた何かと、消え去る時の感覚を合わせて考えるならば……GMがストーカー六兄弟に罰を下す際に背後に生じたヤバイ繋がりを限りなく薄めたような物だった。


「えーと、マスター。一体どうしたんですか?」

「第三階層に入ったところで、正体は分からないが何かを感じた」

「何か……ですか」

「ああ、警戒してもあまり意味はないかもしれないが、可能な限りの警戒はしておいた方がいいと思う」

「……。分かりました。警戒しておきます」

 具体的に何があるのかは分からない。

 だが無警戒で遭遇するよりはマシだと考え、俺はシアたちに注意を促す。

 それと同時に、掲示板の方にも一応ではあるが書き込みを行っておく。


「よし、それじゃあ、探索を始めるぞ」

「はい」

「分かったよ」

「は、はい」

「分かった」

「うん、分かった」

 そうして俺たちは警戒心を強めながら、探索を始める。

 そして先行する2PTが行っていない左の通路を選び、ある程度歩いたところだった。


「それにしても、何かっていった……」

 唐突に俺の背後から爆音のような物が轟き、話をしていたはずロラ助の声が聞こえなくなる。

 その事にロラ助よりも前に居た俺とシュヴァリエ、それにシアが疑問を抱いて振り向こうとした。


「イベェ!?」

「「「!?」」」

 だがそれよりも速く事は動いていた。

 突然床から噴き出した大量の水によってロラ助は吹き飛ばされ、前に居た俺たちの頭の間をすり抜ける。

 そして、ロラ助の動きに反射的にロラ助が飛ばされた先を見た俺たちは見る。


「ガッ……」

「ロ……」

 天井に顔面から叩き付けられ、重力によって床に叩きつけられるロラ助の姿を。


「ロラ助ええぇぇ!?」

「だ、大丈夫ですか!?」

「な、何が起きたの!?」

 俺たちは慌ててロラ助に駆け寄る。

 床に叩き付けられたロラ助のHPは満タンだった状態から、20%程削られていた。

 表示されている状態異常はスタン。

 どうやら、天井に顔面から叩きつけられるという激しい動きによって意識を失ってしまったらしい。


「シア、回復を」

「はい、『癒しをもたらせ』」

 シアとロラ助のホムンクルス……ヴィエントとブリサが各種支援魔法を掛け、少しでも早くロラ助が目覚めるようにする。


「ジャックさん、FC灯叫さん、一体何が有ったんですか?」

 その間に何が起きていたのかをしっかりと目撃していたであろう二人に俺は尋ねる。


「すまない。私の目には突然足元から水が噴き出したようにしか見えなかった」

 FC灯叫さんは申し訳なさそうにそう言うと、直ぐに手元の方で何かしらの操作を始める。

 恐らくだが、今起きた事を掲示板に報告してくれているのだろう。


「私の方は全部見えていたよ。場所は……ああ、見える様になっているのか」

 ジャックさんはそう言うと、インベントリから細長い棒のような物を取りだし、いつの間にか赤い円のような物が描かれている床を軽く叩き始める。

 どうやらあそこで何かが有ったらしい。

 そして、その場所を示すような赤い円は……よく見れば、濃い赤の部分と薄い赤の部分に分かれていて、採取ポイントでゲージが貯まるように濃い赤の部分が少しずつ増えているようだった。

 そうして、赤い円が濃い赤だけになった後、ジャックさんの棒が円の中に触れた瞬間だった。


「「「!?」」」

「なるほどこういう仕掛けか」

 赤い円とその周囲の床から大量の水が爆音と共に噴き上がる。


「やれやれ、ダンジョンものの定番とは言え、現実に目の当たりにさせられると、厄介極まりないな」

 この時点でこの場に居る全員がこの赤い円の正体を察する。

 そう、トラップだ。

 それも魔法的な、かかるまではまずそこに有るとは分からないトラップだ。

 そのトラップによってロラ助は吹き飛ばされたのだ。


「これは警戒が必要なんてものじゃなさそうですね」

「そうだな。何時何があってもおかしくない、それぐらいの心構えが必要になるだろう」

 今までの自動生成ダンジョンにこんな物は無かった。

 となれば、階層が深くなったことによって出現したのだろうが、出現条件についてはそこまで問題ではない。

 問題は……避け方がまるで分からないという点だ。

 これは、何かしらの対抗策を考えて、用意しておかなければいけないだろう。

 だがこの問題も今考える事ではないようだ。


「はっ!?師匠!通路の奥の方から何かが来てる!」

「ちっ……」

 気が付けば通路の奥の方からモンスターがやって来ていた。

 数は四体。

 ガードチキンLv.15にLv.17、ガードデーモンLv.16、そして……


「ウフフフフ……」

「ここで新モンスターもか」

 蛸の足に女の上半身、そして腰の部分に犬の頭を三つ生やした、初見のモンスター、ガードスキュラLv.19が来ていた。

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