152:33-3
「さて、どんな出来になったかね」
俺は掲げた骸套・三手千織の詳細を確認するべく、画面を表示させる。
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骸套・三手千織
レア度:PM
種別:装飾品-雨具
耐久度:100/100
特性:ノイズ(聞き取れない雑多な音を持つ)
ハイド(認識しづらく、人目に付かない)
デコイ(人目を惹き、目立ちやすい)
それはCommonではなくSoleである。
色彩と質感だけでなく、形状と発する音までもが状況に応じて変化する不可思議な布を雨具の形にしたもの。
機能の発揮に微弱な電気を必要とするためか、微弱な電気を常に帯びている。
風属性+1
▽▽▽▽▽
「ふむ」
悪くないとは思う。
こうしている今も端の方の生地が微妙に伸び縮みをしていたり、色彩が赤や青、黄色に茶色と一定せず、触っている感触も硬くなったり柔らかくなったりと、かなり不思議な感じではあるが、悪い物とは感じない。
「いい感じだな」
「いや、正直どうかと思います。マスター」
「そうか?」
「そうですよ。なんか生きているみたいな蠢き方をしていますし」
「ふうむ……」
が、シアからの評判は良くないようだ。
どうやらシアにとっては生理的に嫌悪感を抱く感じがあるらしい。
ただ、ヘイトコントロールがすごく楽になりそうな、この性能を逃すのは勿体無いしなぁ……まあ、俺が身に付けるものであるし、普段は質感とかをある程度固定しておけば問題はないか。
【ゾッタの錬金レベルが18に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
「これでどうだ?」
「それぐらいなら……まあ」
と言うわけで、レベルアップに伴うステータス操作をするついでに骸套・三手千織を装備。
色彩を黒系統に、質感をただの布に、形状を端の方が揺らめくだけにする形で、ある程度ではあるが安定化させる。
するとシアもこれぐらいなら問題はないらしく、納得顔をしてくれる。
錬金ステータスについては……まあ、防具類を上げておけばいいか。
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ゾッタ レベル13/18
戦闘ステータス
肉体-生命力18・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力20+4+3・感知力10・精神力11
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10+1・地属性10+6・光属性7・闇属性10
分類-武器類15・防具類14・装飾品13・助道具13・撃道具13・素材類15
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ゾッタ レベル13/18
攻撃力455:210/245
防御力230:0/0/65/55/55/55
右手:バーサークスチールタバルジン(特性バーサーク・リジェネ)
左手:棘刀・隠燕尾(回復力+1・毒付与・特性ハイド・ノイズ)
頭:『狂戦士の鬼人の王』の仮面(回復力+1・特性バーサーク・リジェネ)
胴:ソイルバイソンシャツ(特性バーサーク・ソイル)
腕:ソイルホースアーム(特性バーサーク・ソイル)
脚:ソイルホースズボン(特性バーサーク・ソイル)
装飾品1:プレンウッドリング(回復力+1)
装飾品2:骸套・三手千織(風属性+1・特性ノイズ・ハイド・デコイ)
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「ん?」
「どうしました?」
「いや、アップデートの影響が地味に出てた」
と、此処で俺は装備画面の数字の表示が、今までの物に比べて格段に見やすくなっている事に気付く。
どうやらアップデートによるUIの変更はここにあったらしい。
「あ、見やすくなってますね」
「だな、これならどの部位がどれぐらいの力を持っているのか、直ぐに分かる」
攻撃力の部分は左から順に総攻撃力、右手武器、左手武器だな。
で、防御力の方は左から順に総防御力、右手、左手、頭、胴、腕、脚だな。
この件については俺も愚痴っていたが、対応してくれるとは嬉しい話だ。
まあ、元の感情がマイナス過ぎて、素直に礼を言う気にはなれないが。
「それでマスター、この後はどうしますか?」
さて、ステータスとUI変更の確認はこれで出来た。
となると次にやるべきは骸套・三手千織の性能確認だな。
「そうだな……」
俺は自分のHPとMPの残りを確認する。
どちらも50%を超えており、俺の回復力とシアの魔法が合わされば、しばらく歩いていれば、直に回復するだろう。
そして時間は朝の八時ごろ。
これから活動するのに何の問題もない時間である。
「ヒタイの周りで自動生成ダンジョンを探そう」
「レベル上げ。ですね」
「それもあるが、新しい自動生成ダンジョンのパターンってのも気になるからな。確認できるなら確認しておきたい」
「分かりました。では、出かけましょうか」
「ああそうだな」
と言うわけで、俺はシアを連れて南の森林へと向かった。
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【AIOライト 33日目 08:45 (2/6・晴れ) 南の森林】
「普段より人が多いですね」
「たぶん、俺たちと目的は一緒だろうな」
南の森林は普段よりも明らかに人の数が多かった。
そのため、普通のモンスターは殆ど居ない様子だった。
「一緒……何ですかね?」
「一緒だよ。レベル上げと言う意味ではな」
そして、森の中を歩くプレイヤーの中には、明らかに初期装備姿であるプレイヤーも混じっていた。
恐らくだが、一度現実に帰った事で望郷の念が強くなるか、家族に励まされるかして、引き籠る事を止めたプレイヤーなのではないかと思う。
勿論、別の可能性もあるが……ま、それが事実なら、海月さんがどうにかしてくれるだろう、たぶん。
「と、自動生成ダンジョンだな」
そうして人々の集団から離れるように歩く事およそ一時間。
俺たちは人だかりの出来ていない自動生成ダンジョンを発見する。
【ゾッタは『豊富な森の農場』を発見した】
「ふむ、新パターンか」
自動生成ダンジョンの名前は『豊富な森の農場』。
豊富なは……特性:アブン、効果は取得経験値の上昇だったか。
そして農場はアプデ内容に有った奴だな。
【『豊富な森の農場』 レア度:2 階層:3 残り時間71:59:02】
「行ってみるぞ。シア」
「はい、マスター」
これは絶対に行った方が良い。
そう判断した俺は、シアと一緒に『豊富な森の農場』へと進入した。
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