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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
150/621

150:33-1

【AIOライト 33日目 06:00 (2/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「さて、戻って来たか」

 意識を取り戻すと、そこにはもう見慣れた光景が広がっていた。

 石造りの建物に石畳の道、『巌の開拓者』のヒタイ本部がある建物に、一定の範囲を巡回してばかりな住民たち。

 そして……


「ちくしょうがあぁぁ!」

「またこの世界だなんて……」

「うわああぁぁぁ!」

 状況を受け入れられないプレイヤーたちの叫び、と。

 まあ、現実の方に思い入れがあるプレイヤーにとっては苦痛でしかない状況であるし、理解は出来る。

 尤も、理解は出来ても同意は出来ないが。


「ふざけんじゃねえぞGM!」

「ちったぁ戻すタイミングを考えろや!」

「詫び石を要求する!!」

 と、どうやらあのタイミングで現実に戻されて、この場に移動させられたことで不利益を被ったプレイヤーも居るみたいだな。

 しかし詫び石って……『AIOライト』に課金要素はあったか?

 いや、俺が知らないだけかもしれないが。


「鬼!悪魔!イヴ・リブラ!」

「お前の母ちゃんでーべそ!」

「ザッコンナコラー!」

「せめてご褒美になるような嫌らしさを見せんかい!」

「アンタのせいで一日ネリーとイチャイチャできなかったじゃない!訴訟!!」

 後一部の罵倒なのか何なのかよく分からない言葉については無視する。

 アレは気にするだけ無駄だ。

 と言うか気にしちゃいけないものだ。


「行くか」

 そんなわけで、俺は『巌の開拓者』ヒタイ本部の中へと入り、自室へ移動。

 自室でシアを召喚する。


「マスター!」

「ただいま、シア」

 召喚されたシアが俺に抱きつき、俺はそれを優しく受け止める。

 ああ、たった一日直接触れ合えなかっただけなのに、こうしてまた会えるとなると、嬉しくてたまらないな……。

 うん、本当にまた会えてよかった。


「マスター?マスター……」

「ん?ああ、うん、悪いな」

「はい、ありがとうございます」

 と、どうやらずっと抱きしめられているのは良くないらしい。

 シアが離れたがっているので、俺もシアの事を離してやる。


「それでマスター、これからどうするんですか?」

「今日はシア成分を補給した……ごめんなさい、冗談です」

 シアが杖を掲げたので、俺は慌てて前言を撤回する。

 危なかった。

 一瞬でも撤回が遅れていたら、全力の『ペイン』が打ちこまれていたに違いない。


「では改めてマスター。今日はこれからどうするつもりで?」

「そうだな……とりあえずはアップデート内容の確認だな」

「確認、ですか?」

「ああ」

 さて、ここから真面目にやるとしよう。

 と言うわけで、俺はメニュー画面を展開すると、シアにも見えるようにした上で、GMからのメッセージ……今回のメンテナンスによって何処が変わったのかを通知する情報を表示させる。


「これが、メンテナンスの内容ですか」

「ああそうだ」

 今回のメンテナンスの変更点は色々とある。


「自動生成ダンジョンに追加か」

 まず自動生成ダンジョンのダンジョンパターンに新しいパターンが加わったらしい。

 具体的には、


・綺麗な水の流れが存在している『清流の』

・特徴らしい特徴が無い事が逆に特徴である『草原の』

・屋外フィールドである『農場』

・屋内フィールドである『屋敷』


 であるらしい。

 これで特性部分を除いて考えた場合、ダンジョンのパターンが49種類から81種類に増えたそうだ。

 うん、言われてもよく分からないな。


「あ、時間も伸びたんですね」

「一部だけだけどな」

 それと階層が4階層以上あるダンジョンについては、制限時間が多少伸びるらしい。

 きっと、深すぎるダンジョンだと72時間ではボスまでたどり着けないと言う話に何処かでなったのだろう。


「UIの調整に不具合の修正と言うのは?」

「んー、より使いやすくしました以上の意味はないと思う」

 それから、細かいUIの変更に、不具合の修正があったらしい。

 が、前者はともかく後者については、プレイヤーが感じ取れていたのか怪しいものがある。

 なにせこの世界の出来と言えば、GMがわざと拙くしている部分を除けば、現実世界と殆ど変わらないような出来なのだから。


「後は……」

 残るアップデート点は……モンスター及び素材の追加とあるな。

 うん、これも誰も把握できない点だな。

 たぶんだけど、アップデート前から存在していたのに、今日までにどのプレイヤーも遭遇した事のないモンスターだって居るだろうし。

 それに、これだけ詳細が書かれていない。

 この分だと、俺たちがインしている時にこっそり追加していますぐらいはありそうだ。

 あのGMならそれぐらいは何の問題もなく出来そうだしな。


「結構変わった……で、いいんですよね?」

「まあ、新マップ登場の影響は大きいだろうな」

 シアの言葉に同意しつつも、俺は今日これからどうするかを考える。


「ふうむ……」

「マスター?」

 まあ、新マップとか、新モンスターとかが気にならないと言えば嘘になる。

 取れる素材次第では、バランスが一変する可能性だってあるしな。

 ただ、実装直後にその手の場所に行くとなると……まあ、混雑的な意味で嫌な予感しかしないな。


「とりあえず倉庫の中をひっくり返すか。普喰(あまねくらい)にも飯を上げないと拙いしな」

「分かりました。ならお手伝いします」

 とりあえず、手持ちのアイテムにアップデートの影響が出ていないかを確かめるべきではある。

 そう判断した俺は、シアの出してくれた木の実パイを食べつつ、倉庫ボックスの中を漁り始めるのだった。

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