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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
147/621

147:32-2-R2

【2021年 8月 1日 06:00(日曜日・晴れ) 日本】


「ふわっ……」

 海月さんとの話が終わった後、俺は軽く眠っていた。

 で、結局はいつも通りの時間に目を覚ましていた。

 でも、いつも通りはここ止まりなんだよなぁ……状況から考えて普通の飯が出てくるわけないし、シアの手料理なんてどう足掻いても望めないもんなー……はぁ。


「かな……」

 そうして微妙に黄昏そうになった時だった。


『ど、何処ですか!?ここは!?』

「!?」

 唐突にシアの声が聞こえてくる。

 それもベッド近くの台の上に置かれた俺のスマートフォンから。


「シ、シアか!?」

 俺は慌ててスマートフォンを手に取り、起動してみる。

 すると画面には二頭身サイズにデフォルメされたシアの可愛らし……混乱した姿が映っていた。


『マ、マスターですか!?目と髪の色は違いますけど、マスターですよね!』

「あ、ああそうだ。俺だ。ゾッタだ」

 画面の中のチビシアが俺に向かって叫んでくる。


『マスター!此処は一体何処なんですか!?目を覚ましたら突然身体が縮んでいて、しかも何だかホワンホワンとした感じになっているんですけど!?』

「えーと……だな」

 どうやらシアの身体の状態も、見たままの通りになっているらしい。

 と、此処で俺は気づく。

 スマートフォンの方に新しいメッセージが届いている事に。


「ちょっと待ってくれ。GM(ゲームマスター)からのメッセージが来てる」

『GMからの?うわっ!わわわっ!』

 俺はメッセージをゆっくりと引き出してみる。

 するとチビシアはメッセージと被らないように手前に出てくる。

 うん、本当にどうなってんだこれ。


「えーと……」

『これは……』

 で、肝心のメッセージの内容は?

 まとめてしまうとこうだ。


・レア度:PMのアイテムはGMが管理するアイテムではないので、メンテナンス中は所有者の保持しているデバイスにデータを移動

・その際に容量削減も兼ねて見た目のみはデフォルメ化している

・アイテムの実体化には規定量のエネルギーが必要

・実体化させたアイテムはゲーム内には戻せない


「『……』」

 うん、ヤバいだろう、これは。

 最初二つは別に良いとして、何だ三つ目の項目は。

 アイテムの実体化?

 一体どういう事だ?

 訳が分からない。


『あの、マスター。私ってマスターの居る現実世界では実体を持っていないんですよね』

「ああ、まあ、そうなるな」

 ああいや待て、訳が分からないとか、出来ないとかじゃなく、冷静に考えてみよう。

 あの悪魔相手に常識なんてものは通じないのだから。


『でもこれって……この機能を使えば、私もマスターの居る世界に出られるという事でしょうか?』

「文章通りに事が進むならそうなるな」

 まずエネルギーの物質化。

 これについては現実に出来るかどうかはともかく、エネルギーと質量が等価である以上、理論的には可能な筈だ。

 それにあの悪魔の事だ。

 何かしらの抜け道ぐらい知っていてもおかしくはない。


「ただ……出すのは無理だし、止めておいた方が良さそうだな」

『そうなんですか?』

「ああ、今出てくると、かなり拙い事になると思う」

 だがシアを現実に出すのは現状では不可能だ。

 シアを現実に出すにはC2Pと言うポイントが1,000必要だと書かれているが、そのポイントは全く貯まっていないし、どう貯めればいいかも分からないからだ。

 それにあの悪魔の事、仮に呼び出す事は出来ても、その際に何を仕込まれるか分かったものではない。


「正直な話、向こうと違ってこっちには面倒事が数多くあるからな。プレンメディパウダー一つ出しただけでも大事になると思う」

『なるほど』

 そうでなくともレア度:PMのアイテムをこの世界に呼び出すのは問題がある行為だ。

 なにせ、魔法としか称しようのない力を有している物品を、そんな物など存在しないという認識の世界に持ち出すのだから、問題にならない方がおかしい。

 プレンメディパウダー一つにしても、ただ振りかけるだけでHPと言う名の体力を回復させるという超常的な現象を引き起こせるのだから、医療関係の人間が見たら卒倒ものだろう。

 つまり、何を出しても、世界は多いに混乱することになる。


「一応聞いておくが、満腹度とかは大丈夫なんだよな」

『はい、大丈夫です。この空間には水も食料も準備されていますし、普喰(あまねくらい)の餌になりそうな物も数多くありますから』

「そうか、なら問題はないな」

 なお、俺が現在所有しているレア度:PMはシアの他、棘刀・隠燕尾、奇箱・普喰が存在するが、どうやら両方とも今はスマートフォンの中に収納されているらしい。

 デフォルメされて、随分と可愛らしい見た目になったそれらをシアが掲げて見せている。

 と言うか普喰がかなり可愛くなっているな。

 まるでそう言う形の小動物のようだ。


「さて、この件は……」

 さて、残る問題はこの件を誰に伝えておくべきかだが……そうだな、番茶さん、トロヘル、グランギニョルの三人にはメッセージを。

 それに海月さんにもメールをしておこうか。

 この事件に関しての担当者みたいだしな。

 知らせておいた方が何かと都合がいいだろう。

 と言うわけで、俺はその四人にそれぞれの方法で、連絡を取ったのだった。

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