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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
137/621

137:30-2

【AIOライト 30日目 09:27 (1/6・晴れ) 右角山】


「まだまだ遠いですねー」

「だなぁ……」

 歩くこと三時間。

 目標としている山には少しずつ近づいているが、まだまだ遠そうな感じだった。

 この感じだと……後三時間はかかると思った方が良さそうだ。


「ま、気楽に……」

 まあ、場所が場所なおかげなのか、出てくるモンスターは単独か、多くても二匹程度。

 プレンバードやプレンイーグルと言った飛行系モンスターが出てくると多少は厄介であるが、基本的には問題なく対処できるし、プレンゴートなんかは色んな意味で美味しかった。

 なお、倒すのはアクティブになっていて、戦闘が避けられない相手に限った話である。

 流石に全てを倒してはいられないしな。


「あっ」

「ん?」

 と、ここで俺たちの前に一匹のモンスターが飛び出してくる。

 それは……現実には居ないと言い切れる奇妙な姿の生物だった。


「何だか可愛らしいですね」

 全体の体型は、横にした風船と言う所か。

 で、そこに短い手足とつぶらな瞳、それに紐のような長い尻尾が付いている。

 色は茶色で、毛のような物は確認できないが、触り心地は悪くなさそうだった。

 うん、体高が2メートル近くあって、可愛いというにはちょっと大きいかもしれないが、基本的には可愛い感じだな。


「えーと、名前はプレンイーターLv.8か」

「名前は可愛くないですね」

 状態は……今の距離だとノンアクティブか。

 一応、アクティブになってもいいように備えてはおくか。

 遠く離れて進むのはこの道の細さだと無理だしな。


「イブッ?」

「ちっ」

「ちょっと残念です」

 と、そうやって一応の警戒をしつつ進んでいたところ、彼我の距離が10メートル程になったところで、プレンイーターのマーカーがアクティブに変わり、こちらに対して注意を向けてくる。

 どうやら戦闘は避けられないらしい。

 と言うわけで俺は武器を構え、シアも少し残念そうにしつつ武器を構える。


「ガバッ!」

「「……」」

 尤も、シアの残念そうにしている表情は、身体の横幅と同じくらいの大きさを持つ口と、口の中に三重の輪を形成するように生え揃っていた百本以上の鋭い牙を見た瞬間に消し飛んだが。


「イバガガガー!」

「マスター!」

「言われなくても!」

 プレンイーターが大きな口を開けたまま、こちらに向かって突進してくる。

 そのスピードは結構速い。

 うん、なるほどな。

 コイツは見た目で油断させておいて、ガブリと行くタイプか。


「ふんっ!」

「イバガァ!?」

 が、問題はない。

 丸呑みが武器なら、丸呑みを使わせないだけだ。

 シアの魔法で強化された俺は突進してきたプレンイーターの下あごを撥ね上げるように斧を振り上げると、左手の短剣で切りつけてやる。

 減ったHPは……20%程度。

 あまり力を込めた覚えはないし、防御力は低いようだな。


「シアッ!」

「『ブート』!」

 俺はプレンイーターに密着して、口を開けないようにしつつ、零距離で攻撃を続ける。

 そして、俺の攻撃に合わせてシアも杖の魔法による攻撃を行う。

 すると見る見るうちにHPは減っていき……


「イバガァ……」

 難なく戦闘は終わった。

 うーん、相手のレベルが低かったせいか、いまいち何が脅威だったかが分からないな。

 呑み込まれたら悲惨な事になるのは確かではあるが。

 牙もそうだが、身体の殆どが胃袋っぽい感じだしな。


「マスター、一応剥ぎ取りましょうか」

「だな、初めて見るモンスターだし、何が剥げるかは気になる」

 さて、レア度的には期待は出来ないが、未知の素材と言う意味では気になるので、剥ぎ取りは普通にしよう。

 イーター系のモンスターについては掲示板でも見た事が無いしな。



△△△△△

プレンイーターの胃袋

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


プレンイーターの身体の大半を占めている巨大な胃袋。

胃袋だけになった状態でも、中に物が入れば胃酸を生成するその姿からは、プレンイーターの食欲の強さが窺える。

取扱注意のアイテムでもある。

▽▽▽▽▽



「胃袋……」

「食いしん坊……と言う事でいいんですかね?」

「うんまあ、そうなんだろうな」

 俺もシアも剥ぎ取れた物の内容に思わず微妙な顔をしてしまう。

 いやうん、まさか胃袋が剥ぎ取れるとは思わなかった。

 てか、胃袋だけになっても活動しているって……どんな生物だよ。

 ファンタジーこの上ないな。


「取扱注意だし……リジェネウッドボックスにこれだけを入れておくか」

「あー、別のアイテムと一緒にしたら、勝手に溶かすとか有りそうな感じですよね」

「たぶん、大丈夫だとは思うけどな。ま、念のためって奴だ」

 とりあえず持ち物を整理して、俺は二つあるリジェネウッドボックスの内、片方をプレンイーターの胃袋だけにしておく。

 これで後はリジェネウッドボックスに変な影響が出ていなければ、普通に取り扱う分には何も心配しなくていいだろう。


「よし、それじゃあ、移動を再開するぞ」

「はい、分かりました」

 なお、これは後に掲示板で知った事だが、プレンイーターに食われると、ダメージを受けるだけでなく、装備品とインベントリ内のアイテムの耐久度がものすごい勢いで減っていくとの事だった。

 なので、プレンイーターは見た目に反して実に恐ろしいモンスターだったらしい。

 今回はその恐ろしさが分からなかったが。

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