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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
130/621

130:28-5

「テメェ……部外者の分際で何の用だ……」

 駄目駄目ストーカー六人兄弟の長男こと、リーダーであろう男が俺の事を睨み付けつつ一歩前に出てくる。

 武器は剣、鎧は革製、ファッションセンスは……まあ、俺よりはあるんじゃないか。

 で、即座に抜剣して切りかかってくるほどの阿呆ではない、と。


「ただの事実指摘だよ。脅迫行為をしているストーカー長男」

「誰がストーカーだ!こんなババアに興味なんざねえよ!!」

「ああ?」

「「……」」

 ストーカー長男の言葉にボンピュクスさんの怒気がさらに大きくなる。

 なるが……抑えてください。

 貴方が暴れたら台無しになってしまいます。

 お願いします、本当に。


「それじゃあ、周囲にどう見られているのかも分からない恥知らず。あるいは掲示板で碌に情報すら探れない情弱だな」

「テメェ……」

 俺はボンピュクスさんへの怯えを隠しつつ、ストーカー長男を挑発するような言葉を発し続ける。

 尤も、どの言葉もただの事実だが。


「俺にはニラモって名前があるんだよ!この部外者が!」

 怒り狂いながらも剣は抜かないストーカー長男の名前はニラモね。

 うん、忘れよう。

 ストーカー長男の方が分かり易い。

 それにだ。


「はいはい、ストーカー長男君。ホムンクルスに戦闘を任せきりにしている上に道具扱いにしているような男の言葉に大した重みは無いから……黙れ」

「っ!?」

「ん?どういう事や?」

「そのままの意味ですよ」

 俺は改めてストーカー六兄弟と彼らのホムンクルスの繋がりを見る。

 非常に細くて薄い……普段彼らが如何に彼女たちを酷使しているかをよく示しているような繋がりだ。

 それによくよく見れば、一方的に良くしてやっているんだというような好意の押しつけも、美女を侍らして悦に浸っているような気配も感じる。

 本当に腐ってるな。


「ストーカー六兄弟はホムンクルスを入手してからは自分たちは後ろでグータラとしているだけ。戦闘はほぼホムンクルスに任せきりで、しかもその癖自分たちは仕事をしていると言っているんですよ。彼らは」

 装備の方もそうだ。

 彼らの武器と防具は見てくれこそしっかりとしたものだが、どうにも彼らに馴染んでいない感じがある。

 ま、使っていなければ馴染んでいないのも当然だが。


「テメエ何を根拠に……」

「この程度は見れば分かる。そもそも攻略組を名乗っているなら、こんな真昼間から、こんな非生産的かつ攻略を衰退させる様な活動に従事しているはずがない。目当ては……服飾向上委員会の売上か何かと言ったところか。全くもって浅ましいな」

「この……」

 根拠は俺にも何故見えるか分からないから言えない。

 そして事実が本当に俺の言った通りであるかも分からない。

 だが、概ね間違ってはいないだろう。

 その程度にはこの目と周囲のプレイヤーからの情報は信頼できる。


「そんなわけでとっとと消えろ。GMからこれ以上やれば何かしらの罰則があると警告は来ているんだろう?」

 だから俺は周囲の観衆に聞かせるように自信満々に言い切る。

 正しいのはこちら側で、間違っているのはあちら側だと。

 そして教えてやる。

 自分たちがどれだけ恥ずかしい振る舞いをしているのかを。


「いい加減にしやがれ!出鱈目ばかり言ってんじゃねえぞ!この三下がぁ!」

「三下……ねぇ」

 ああなるほど。

 今の発言で納得がいった。

 自惚れも入っているが、俺はシアの事もあってそれなりに有名なプレイヤーだ。

 そんな俺を知らないという事は、こいつらは掲示板での情報収集すらマトモに出来ていないという事だ。

 で、そんな情報収集能力の無さと、他者への配慮の無さ、自分たちだけは楽をしたいという浅ましさ、そう言うのが合わさった結果がホムンクルス任せの戦闘と服飾向上委員会への脅迫行為か。

 うん、救いようがないな。


「なら、力を示してみたらどうだ?その腰の物は飾りじゃないんだろ?」

「ゾッタ君!?」

「この野郎……」

 ボンピュクスさんが驚く中、俺はこの場に居る全員の目に見えるように、どちらかが倒れるまで続くようにした上で一対一……本当に指定したプレイヤー同士でしか戦えないようにした決闘申請をストーカー長男に送りつけてやる。

 これで逃げるなら……ま、今後は出来ても幾つかの細々とした行動ぐらいしか出来なくなるな。


「ほら、準備をしろよ。事前支援ぐらいはこっちもやるからよ」

「いいぜ、受けてやるとも……」

「ボソッ……(『癒しをもたらせ』『力を和らげよ』『大地の恩寵をその身に』)」

 俺の背後でストーカー長男に向けて厳しい目を向けているシアが小声で魔法を唱え、俺の身体が三種類の光に少しの間だけ包まれる。

 新しい魔法であろう『大地の恩寵をその身に』については……ああ、なるほど。

 これがモヤモヤが解消した成果で、効果は新緑の杖の『ソイル』だな。

 うん、この状況ではこの上なくありがたい。


「ボソッ……(ありがとうな)」

「ボソッ……(いえ、頑張ってくださいね)」

「ボソッ……(勿論だとも)」

 魔法がきちんとかかったところで俺は前に出る。

 ストーカー長男は……色々とバフを受けているようだな。

 種類と効果量は分からないが、結構なバフはかかっていそうだ。


「ククク……俺にたてついた事を後悔させてやる」

「させられるものならしてみるといいさ」

 ストーカー長男も決闘の申請を受理した上で出てくる。

 その表情は随分と自信に満ちた物である。

 これは……何かしらの切り札は持っているな。


「「「ザワザワ……」」」

「……」

「ククク……」

 俺が斧を構える。

 ストーカー長男が剣と盾を構える。

 いつの間にか店の中から出てきた制裁用NPCが審判をするように俺たちの間に立つ。

 周囲の観衆がどうなるんだとざわつく。

 そしてその中でも決闘の開始を告げるカウントは順調に減り続ける。


「這いつくばらせてやるよ!」

「来い」

 そうしてカウントがゼロになった瞬間。

 俺もストーカー長男も相手に向かって駆け出した。

あからさまに

だめなやつら

どうしようも

ないね

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