122:27-6-D5
【AIOライト 27日目 13:52 (4/6・雨) 『地力満ちた森の城』】
「しかし、こうしてみるとやっぱり食料のボーナスは馬鹿に出来ねえな」
昼食後。
俺たちは『地力満ちた森の城』の中を彷徨い、見かけたモンスターを倒しつつ、採取ポイントでの採取を行っていた。
が、昼食前と比べると、明らかにモンスターとの戦闘は効率が良くなっていた。
「回復力が上がったから戦後の休憩が少なくて済む」
「地属性が上がったから、そもそものダメージも少ない」
「実際、目に見えて効率は上がっていますね」
理由は単純明快。
シアの作ったソイルビーフパイの効果によってパーティメンバー全員の回復力と地属性が上昇しているから。
回復力が高まれば、戦闘中にもHPとMPが自然回復するようになり、戦闘後の回復も早くなる。
地属性が高まれば、地属性の与ダメージが増え、地属性の被ダメージが減る。
そしてこのダンジョンのモンスターたちは悉く地属性の攻撃を有している。
こうなれば、効率が上がらない方がおかしいという物だ。
「ありがとうございます。褒めて貰えてうれしいです」
「だな、俺も嬉しい」
とまあ、そんな理屈云々を抜きにしても、シアの作った料理が皆に好まれているという事実は、シアだけでなく俺にとっても嬉しいものである。
さて、単純に喜んでいるのはここまでにしておくとしてだ。
「しかしこうなってくると携帯錬金炉、特に自作の物の評価はさらに高くなるな」
「そうだな。その点についてはブルカノの言うとおりだと俺も思う」
ブルカノさんとトロヘルの会話は……まあ、当然の結論だろうな。
特性付きの食料は、その特性によって様々な一時効果を持っている。
ステータス関係の特性ならば分かり易くステータスの上昇。
特定の種族のモンスターへの特攻特性ならば、その効果の付与。
報酬に関係する特性ならば、その通りに報酬が変化。
そして状態異常に関係する特性ならば、対応する状態異常にかかる可能性が低下する。
「一番大きいのは状態異常系かね?」
「だろうな。状態異常の中には一発でパーティが壊滅してもおかしくないものだってあるし」
「そうですね。ノイズ、ペイン、バインド、スリープ、スタン、他にもまだまだありますけれど、そう言った搦め手に強くなるというのは、モンスターとの戦闘を安定させる上で重要でしょうね」
「あー……敵によっては周囲一帯に状態異常を撒いてくるのとか居るしな」
「居ましたねぇ……」
うん、他の皆の意見の通り、一時的とはいえ、装備品の枠を使わず、食事だけで状態異常対策を採れるというのは大きいだろう。
敵の中には『柔軟な球根の王』のようにダメージに反応して周囲に睡眠効果のある花粉をバラ撒いてくる物や、ノイズクラゲのように遠距離攻撃に反応して音波と言う不可避の攻撃で状態異常をバラ撒いて来るものだっているのだから。
これら二匹のモンスターと今出会って戦う事を考えたら……面倒な事この上ないだろう。
前者に至っては最悪負けを覚悟する必要だってあるだろうしな。
「そう考えると、やっぱり前線の人間こそ携帯錬金炉は持つべきなんだろうな」
「まあ、そう言う結論にならざるを得ないだろうな。街ならば備え付けの錬金釜があるのだから」
なお、これは本当にどうでもいい余談であるが、錬金術師ギルドごとに掲示板のデザインが異なる事から分かるように、錬金鍋を含めた部屋の内装もまた錬金術師ギルドによって異なる。
そのため、『巌の開拓者』では錬金鍋はどう見ても鍋にしか見えないのだが、他のギルドでは見方によっては別の何かに見える錬金鍋もあるらしい。
以上、余談である。
「と、そう言えば全員のインベントリの空きは大丈夫か?」
「ああ、そう言えば」
と、ここでトロヘルからインベントリの空きについての質問が飛んできたので、俺たちは全員揃ってインベントリを確認する。
インベントリの容量には持久力と戦闘レベル、それに所有している種別:容器のアイテムが関係するために、結構個人差が出るため、こう言った確認は時々必要になるのだ。
「こちら問題なし」
「同じく」
「俺は問題ないな。シアは?」
「まだ大丈夫です」
「んー、ちょっとキツいかも」
「私も少し厳しくはなって来ているな」
「ふむ……」
やはりと言うべきか、持久力をあまり必要としない後衛組かつ火力を消費アイテムに頼っているグランギニョルとブルカノさんの二人が、真っ先にインベントリの空きが無くなりそうになっているらしい。
そして二人がここで抜けるのは、戦力的には結構な痛手である。
二人の火力は言うに及ばず、グランギニョルのホムンクルスであるアシスターも、前衛が抜けた時の最後の砦として役立ってくれているからだ。
なお、ブルカノさんのホムンクルスについてはここでは使いづらいとかで表に出ていない。
加えて、そちらのインベントリにも余裕はないとの事だった。
「となると今日はここで切り上げるか」
「別に私たちの事は気にしなくても……」
「いや、切り上げる。二人の火力無しで、このダンジョンはちょっと面倒な事になりそうだしな」
トロヘルの言葉には俺も賛成なので、静かに頷く。
様子を見る限り、マンダリンとクリームブランの二人もトロヘルの判断には賛成であるらしい。
「よし、それじゃあもうすぐ出口だし……ちっ」
そうしてトロヘルを先頭に俺たちが出口に向かおうとした時だった。
「「ヒヒン」」
「あれだけは倒していくぞ」
頭上に赤いマーカーを輝かせた二体のモンスター、ソイルホースLv.17とソイルホースLv.15が俺たちの前方に現れた。
09/19誤字訂正




