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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
119/621

119:27-3-D2

【AIOライト 27日目 10:22 (4/6・雨) 『地力満ちた森の城』】


「ブモッ」

「さて、初戦だな」

 今にも倒れそうな岩の横をすり抜けて歩くこと暫く。

 俺たちの前に一頭の雄々しい角が生えた牛が現れる。

 名前はソイルバイソンLv.16、当然だが格上だ。

 なお、こんな草も碌に生えていない城の通路に、何故牛がいるのかについては気にしてはいけない。

 自動生成ダンジョンとはそう言う物だからだ。


「全員、無茶はしなくていいが、手は抜くなよ。相手の力量が分からないからな」

「言われなくとも」

「分かってるって」

「分かった」

「ブモ……」

 ソイルバイソンのマーカーがノンアクティブからアクティブへと変わる。

 それと同時に、前衛組……トロヘル、マンダリン、クリームブラン、俺の四人が構えを取る。

 そして音だけしか聞こえないが、俺たちの後ろの方でシアたちも戦闘態勢を取り始めたのが分かった。


「ブモオオオォォォ!」

「クリーム!」

「分かってる!」

 ソイルバイソンが鳴き声を上げながら突っ込んでくる。

 対するこちらはトロヘルとクリームブランの二人が肩が触れるような距離で、身の丈ほどもある大きな盾を自身の前に置き、しかもその盾を両手で持って身構える。


「ブモッ!」

「ぐっ……」

「こいつは……」

 ソイルバイソンの角と二人の盾がぶつかり合う。

 攻撃側であるソイルバイソンのHPは殆ど減っていない。

 だが、受ける側だったトロヘルとクリームブランのHPは、きちんと防御したにもかかわらず目に見えて減っている。

 これは……格上と言うだけじゃなくて、角による攻撃に地属性を含んでいるな。

 もしかしたら他の攻撃もかもしれないが。


「ゾッタ!マンダリン!」

「おうっ」

「あいよ!」

「ブモッ!?」

 いずれにしても俺の役目は攻撃役であって回復役ではないし、相手の攻撃に気を付ける必要はあるが、HPの回復は後衛に任せる事である。

 なので、俺はマンダリンと共に盾を構える二人の横をすり抜けると、ソイルバイソンの後ろ脚を斧で切りつける。

 ダメージは……あまり多くない。

 二人合わせても10%に届くかどうかという所か。

 防御力は高くなさそうに見えるし、恐らくはHPが多いのだろう。


「ブ……モオオォォ!」

「「「っつ!?」」」

 と、ここでソイルバイソンが前足を上げ、頭を動かし、まるでロデオの馬のように暴れまわる事で、周囲に居て追撃を加えようとした俺たち四人をまとめて攻撃してくる。

 そのため、前衛四人はその場から飛び退き、距離を取ることになる。

 だが敵の近くに前衛が居なくなったこの瞬間はチャンスでもあった。


「「『ブート』」」

「ふんっ!」

「「……」」

「ブモアァッ!?」

 後衛組から幾つもの光の球が飛んできてソイルバイソンのHPを削っていき、その上にブルカノさんの爆弾が直撃。

 ソイルバイソンのHPを一気に半分以上削りとる。


「うおっ……すげぇ火力……」

「こういうの見ると、前衛はタゲ取りに専念するべきって思うわ」

「まあ、このダメージを出すためのリソースは消費しているしな」

「お前ら気は抜くなよ。まだ戦いは終わってないんだからな」

「ピヨッ!」

「ブモォ……」

 爆炎の中からソイルバイソンが現れる。

 当たり前だが、やる気は失っていないらしく、周囲に居る俺たち四人の隙を伺いつつ、奥に居る面々に突撃できないかと思っている感じがする。


「ブモ……モッ!?」

「いかせるかよ」

「禿同で」

 ソイルバイソンが突進を試みる。

 が、ソイルバイソンが動き出そうとした瞬間に、いつの間にかHPを回復済みなトロヘルとクリームブランが距離を詰めて、動きを止める。

 加速が乗る前なら簡単に止められると判断しての事だろう。


「ふんっ!」

「ブモッ!?」

 そして、二人の思惑通りに動きが止まったところで俺とマンダリンが横から攻撃を仕掛ける。

 マンダリンは先程と同じように。

 俺は……


「おらぁはははははぁ!」

「ブモガッ!?」

 特性:バーサークが生きるように、HPを削る事だけを考えてソイルバイソンの横っ腹を斧で殴りつけ続ける。

 頭を動かそうとすれば側頭部を殴り、脚を動かそうとすれば左手の短剣で刺し、ソイルバイソンの多少の反撃は無視して攻撃を続ける。


「「『ブート』」」

「ブモォ……」

 そして再びシアとグランギニョルの魔法が飛び、ソイルバイソンのHPバーは底を突き、ソイルバイソンはその場で横倒しになる。

 無事勝利である。


「よしっ……あいだ!?」

「よしじゃないわよ!ゾッタ兄!」

 と言うわけで喜んでみたら、何故かグランギニョルにはたかれた。

 その後ろでは何故かシアがトロヘルとブルカノさんに謝っていた。

 え、あれ?どうしてこうなっているんだ?


「何よ今の!赤っぽいオーラを出した上に奇声を上げて……見てるこっちがびっくりしたわよ!」

「え、えーと?」

 あ、あれ?そう言えば突入前のミーティングで特性:バーサークの効果については……話してなかったな、そう言えば。

 話したのは大まかな戦闘スタイルであって、細かい部分までは話してなかったし。


「簡単に言えばバーサーク?」

「そんなの元からでしょうが!」

「え、えー……」

 結局、俺はこの後に特性:バーサークについて詳しく話す事となり、一応の理解は得られた。

 そして何故か話が終わる頃にはみんなが揃ってシアに優しくなっていた。

 シアに優しくしてくれるのは嬉しいが……どうしてこうなったのだろうか、訳が分からない。

 まあ、いずれにしても初戦は勝てたし、ソイルバイソンの肉と言うアイテムも剥げたのだから問題はないのだが……うん、やっぱり訳が分からない。

 そんなに特性:バーサークはおかしなものなのだろうか?

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