111:24-2
【AIOライト 24日目 17:12 (5/6・晴れ) 北の湿地】
「さて着いたか」
「着きましたね」
さて、GMの罠を抜けた俺たちは、無事に目標と思しき場所……赤土の沼に到達していた。
で、この赤土の沼だが、見た目については名前の通りだ。
沼が赤い。
それも絵の具のような綺麗な赤と言うより、色々な物が混ざり合った不純物混ざりな赤と言う感じだ。
「もうすぐ陽も落ちちまうし、とりあえず回収だけでもしておこう」
「分かりました。『スィム』」
適水粉がまだギリギリで効果を発揮してくれているが、念のためにシアが『スィム』を使ってくれる。
で、効果が出ている事を確かめたところで、俺は赤土の沼の中に入ると採取ポイントで採取を行う。
【液体状のアイテムを獲得しました。インベントリ内のプレングラスボトルを使用して回収します】
「何が採れましたか?」
「えーと……」
さて、採取できたアイテムの名前は?
△△△△△
普通の赤い沼の泥
レア度:2
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
始まりの街・ヒタイの北にある湿地に存在する赤い沼地の土。
七つある瞳の中、赤い目は中央にあるため、他よりもよく見通せていた。
良く見えているが故に器として受け止める事が出来る。
▽▽▽▽▽
「うん、問題なさそうだ」
「おめでとうございます」
得たアイテムの名前は普通の赤い沼の泥。
その説明文は明らかに普通の白い潮の花、普通のガンカ湖の水と似通っている。
これは携帯錬金炉の素材としてまず間違いなさそうだ。
「さて、後はここからどう帰るかだが……」
俺はメニュー画面の時刻を確認する。
時刻は……17時過ぎ。
これは今から歩いて帰るのは無謀だな。
陽が落ちるのは当然拙いが、それに加えて底なし沼の問題がある。
今から沼の中に入るのは止めておいた方がいいだろう。
「自動生成ダンジョンは幾つか見えますね」
「だな」
となると食料も十分にあるし、自動生成ダンジョンの中で一夜を明かし、翌朝自動生成ダンジョンの攻略または歩いて帰るのが適当か。
うん、普通の適水粉は俺もシアも持っているし、南の森林と違って道に迷う心配もないから、歩いて帰るのを本線で考えておくとしよう。
「よし、それじゃあ、安全そうな自動生成ダンジョンを探すか」
「分かりました」
俺とシアは自動生成ダンジョンを探し始める。
そして見つけたのがこのダンジョンだった。
【『回復力溢れる森の神殿』 レア度:1 階層:3 残り時間49:37:22】
「誰かが見つけたダンジョンのようですね」
「まあ、奥に行かなければ問題はないだろ」
名称は『回復力溢れる森の神殿』。
つまりは特性:リジェネがモンスター及びマップにかかっている自動生成ダンジョンと言う事になる。
その上で森……微妙に初めて潜ったあのダンジョンを思い出すが……まあ、たぶん、きっと大丈夫だろう。
今は寝るだけだしな。
入口は安全なはずだしな。
うん、そう、大丈夫なはずだ。
何も心配することはない。
「じゃ、入るぞ」
「はい」
そうして俺とシアは『回復力溢れる森の神殿』に入った。
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【AIOライト 24日目 17:12 (5/6・晴れ) 『回復力溢れる森の神殿』】
「ん?」
「あっ」
「「「……」」」
『回復力溢れる森の神殿』の最初の部屋は、その名前の通り木で造られ、一部からは苔と枝葉が生えている場所だった。
だがそんな部屋の様子よりも俺とシアの目を惹いたのは、見るからに疲れ切った様子のプレイヤーたちと、彼らに付き従うホムンクルスたちの姿だった。
「マスターこれって……」
「まあ、時間的に居てもおかしくはないだろうな」
他のプレイヤーが向けてくる視線を無視して、部屋の隅の方へと移動する。
そして移動しながら彼らの状態とダンジョンに繋がる扉がきちんと閉まっているを確認する。
「ここら辺でいいか」
「はい」
そうして確認したことで俺は確信する。
彼らは街への帰り道として『回復力溢れる森の神殿』を攻略しようとした。
だが何かしらの要因で攻略は失敗。
この場まで命からがら逃げてきたのだろう。
「此処の難易度って高いんですかね?」
「回復力上昇だからな……火力が足りないと厳しいかもしれない」
だから彼らは疲れ切っているし、中には一人で寂しそうに座り込んでいるプレイヤーも居るのだろう。
「まあ、だとしても俺たちには……」
「失礼。『巌の開拓者』のゾッタ君かな?」
と、ここで部屋の中に居たプレイヤーの一人、白髪に白ひげと言う老人のような姿をした男性プレイヤーが話しかけてくる。
「確かにそうだが、アンタは?」
「私の名前はゲールマン。『自由愛する旅団』のプレイヤーだ。少し話をいいかね」
「……。分かりました」
ゲールマンさんはそう言うと、俺の前に腰を下ろす。
どうやら俺に何かしらの話があるらしい。
なお、相手が俺の名前を知っている事については気にしない。
自分で言うのもどうかと思うが、シアの事もあって俺の名前はそれなりに売れているはずだからな。
掲示板を見ているプレイヤーなら、シアの姿から俺が誰なのか分かってもおかしくはない。
「それでえーと、話と言うのは?」
「時間つぶしも兼ねた、ちょっとした老人の愚痴のようなものだよ。私たちのアライアンスがこのダンジョンで遭遇したモンスター、それにボスについてのね」
「お聞きします」
俺が頷くと、ゲールマンさんは自分たちに何が有ったのかを語ってくれた。
と言っても、本人の言うとおり半分ぐらいは愚痴のような物で、目新しい情報も特にはない。
問題は……ボスの情報だ。
「ボスの名前は『回復力溢れる南瓜の王』Lv.10、強力な物理耐性と再生能力を持つ奴相手では、悔しいが私たちではどうしようもなかったよ」
「「……」」
「君たちが挑むのかは分からないが、挑むならば……覚悟を決めておくといい。アレはまず間違いなくレア度:1のダンジョンでは最も厄介な部類のボスだ」
ボスはまさかのリジェネパンプキンの強化版だった。
「御忠告感謝します」
「いやなに、ただの愚痴さ。聞いてもらえて少し気持ちが楽になったよ」
それはつまり……
「クリアは無理だな」
「ですね」
どう足掻いても俺とシアでは攻略不可能であるという事だった。




