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AIOライト  作者: 栗木下
2章:漁村ハナサキ
109/621

109:23-2

「ふむ、見事に真っ黄色だな」

「不思議ですね。どうしてこんな事になっているのでしょうか」

 シアが見つけた黄色い沼は本当に黄色かった。

 これで周りも似たような感じなら不思議でもなんでもないのだが、生えている葦に黄色い沼の周囲を囲う泥の道の色に変わりがない分だけ、より異質に感じる。

 一体何がどうなってこんな事になっているのか。

 実に不思議な光景である。


「採取ポイントがあるな。シア」

「はい、分かりました。『スィム』」

 原因を調べる一番簡単な方法は?

 実際に入ってみる事だ。

 そして、サンプルになるような物を採取してみればいい。

 そうすれば、多少は分かる事があるはずである。


「よっと」

「気をつけてくださいね。マスター」

「分かっている」

 と言うわけで、俺はシアに『スィム』をかけてもらうと、黄色い沼の中に入ってみる。

 泥を踏む感触や身体に触れる感覚には……特に変化はない。

 軽く泥を掬ってもみるが……若干重いぐらいか?

 もしかしたら、他の沼とは成分が違うのかもしれない。

 他の沼と混ざらないように、泥の道で囲われてもいるしな。


「さて、採取の方は……っと」

 俺は採取ポイントに着くと、手をかざして普通に採取を行う。

 そして四ヶ所ほど採取を行うと、『スィム』の効果時間が切れるという事もあり、シアの下に戻る。


「マスター、何が採れましたか?」

「えーと、ちょっと待ってくれ」

 シアに急かされる形で、俺はインベントリの中身を確認し、先程二個ずつ手に入れたアイテムの詳細を表示する。



△△△△△

普通の砂金

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


砂状になった金。

素材として使うならば、鋳融かして、塊にする方が扱いやすい。

▽▽▽▽▽


△△△△△

普通の硫黄結晶

レア度:1

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)


硫黄の結晶。

化学的にも様々な用途が存在する物質であり、錬金術においては化学で使われる以上の価値を有するかもしれない物体。

▽▽▽▽▽



「金!?」

「ど、どうして金が……」

 俺とシアは慌てて黄色い沼の方を見る。

 採取ポイントで採取できたのは金と硫黄。

 どちらも色で言えば黄色に近い物質である。


「あの、まさかとは思いますがマスター……」

「いや、まさかじゃなくてもそう言う事なんだと思うぞ。シア」

 俺とシアは一度顔を見合わせ、そしてもう一度黄色い沼の方を見る。

 たぶん、いや、間違いなくそうなのだろう。


「金と硫黄で出来た沼なんてあるんですね……」

「だなぁ……」

 そう、この黄色い沼は金と硫黄の結晶が沈んで出来た沼。

 見方によっては宝の山にも見える沼だったのである。


「その、これからどうしましょうか?」

「んー……どの道適水粉は帰り道の分しかないしな」

「では回収出来るだけ回収して?」

「ああ、それでいいと思う」

 まあ、驚きはした。

 驚きはしたが……そこ止まりだな。

 よくよく考えたら金なんて装飾か金策にしか使えないだろうし。

 空いているインベントリを埋める分だけ回収出来ればそれで十分だわ。

 手放しちゃいけないものを手放してまで回収する意味は無かったわ。

 むしろ硫黄の方が色々と需要があるかもしれない、ギルドショップで売られていないなら、だが。


「うん、というか今思い出した。硫黄はギルドショップに売られてたわ。それなりに高かったけど」

「あ、そうなんですか。じゃあ、拾うのは金だけでいいかもしれませんね」

「だな、そうするか」

 うん、悲しい事に硫黄はギルドショップに売られている。

 それなりの値段はしたが、必要になった時に買えばそれで十分な程度の値段で。

 あんな値段で買える理由は……爆弾や銃の弾丸あたりで使う事になるからかな。


「じゃ、金だけ適当に拾ってくるから。持てるだけインベントリに入れておいてくれ」

「分かりました」

 と言うわけで、俺は普通の砂金を適当に回収すると、シアと一緒に普通の適水粉を再度使用。

 来た時を辿るようにして、街へと帰ったのだった。


----------


【AIOライト 23日目 20:12 (4/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ】


「ふぅ、ようやく帰って来れたな」

「ですねー」

 六時間後。

 俺とシアは無事に街へと帰って来ていた。

 一日中歩き続けて疲れたという事で、夕食は久しぶりにカロリーバーで済ませたが……うん、やっぱりシアの料理の方が美味いな。

 当たり前の話だが。


「それにしても赤い右目は何処にあるんでしょうね?」

「うーん、北の湿地の何処かにはあると思うんだが……」

 食事の後は明日に備えた準備……つまりは普通の適水粉の補充をしておく。

 数は……二人合わせて8個もあればいいか。


「ちょっと掲示板を見てみるか」

 で、明日の準備が終ったところで、俺は掲示板を見ると同時に、北の湿地関係のスレに今日の発見……金と硫黄の沼について書き込んでおく。

 そしてスレ全体を見て回ってみたのだが……うん、これはやられたな。


「シア、どうやら俺の考え自体は間違っていなかったみたいだ」

「そうなんですか?」

「ああ、掲示板に報告が上がってる」

 北の湿地関係のスレには、俺が見つけたのと同じような沼が、俺のも合わせて七個上がっていた。

 その七つとは……


・黄金と硫黄の沼

・銀と塩の沼

・鉛と水銀の沼

・宝石と水晶の沼

・粘土と魔法結晶の沼

・石油の沼

・赤土の沼


 である。

 うん、見事にやられた。

 赤土の沼が携帯錬金炉の素材が眠っている場所だ。

 まあ、書き込みの時間から考えて、たどり着けたかどうかは割と怪しい所ではあったが、悔しい事には変わりない。


「色々と見つかるんですね」

「だな、そう簡単に行けないからって色々と仕込まれていたみたいだ」

 そしてそれ以外の素材についても手に入れられなかったのは悔しい。

 粘土と魔法結晶……何かしらの属性の魔力を秘めた結晶など、どう考えても金と硫黄より現状では価値があるものである。


「はぁ……見事にGM(ゲームマスター)の罠に引っかかったな。明日からは気をつけないと」

「?」

「安易に価値のあるものを回収して引っかけられたって事さ。ま、分かっていれば問題はない」

「そう……なんですか?」

「そうそう。さ、明日は早起きだぞー」

「あ、はい」

 いずれにしても今日はもう休むしかない。

 と言うわけで、俺はシアと一緒に眠りに就くのだった。

色々と埋まっている湿地帯なのです


09/06誤字訂正

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