104:21-2
本日は二話更新になります。
こちらは一話目です。
【AIOライト 21日目 10:22 (2/6・雨) ハナサキの海岸】
「ふうむ」
「調子はどうですか?マスター」
俺とシアは予定通りハナサキの海岸へとやって来ていた。
で、普通の白い花を回収し終わったところで、金策と新装備の調子を確かめる為に、俺は適当なモンスターと戦ってみた。
戦ってみたのだが……、
「あんまり変わらないな」
「変わらない?」
その結果は少々微妙だった。
「ああ、特性:バーサークがどう働いているのかが良く分からない」
今戦ったのはプレンクラブLv.7だった。
硬い甲殻とハサミが特徴的で、どちらかと言えば硬めのモンスターである。
尤も、今までの装備でも特に問題なく倒せていたモンスターであるので、比較対象としては丁度いい。
「どう言う事なんでしょうか?」
「んー……」
だが、その以前までの感覚と、今回倒した感覚、そこには明確な差はなかった。
精々、以前までの装備から上がった数字分だけ攻撃と防御が強くなったかな程度である。
「特性:バーサークの効果は猛り狂う者に祝福を、だったか」
「そうですね。それで合っています」
普通に考えて、今回の戦いでは特性:バーサークは仕事をしていない。
そう判断せざるを得なかった。
「ふむ……」
俺は少し考える。
何故特性:バーサークが仕事をしていないのか。
特性:バーサークの効果は、『狂戦士の砂漠の塔』での戦いから考えて、ステータスの強化や状態異常への耐性などであるはずだ。
つまり、モンスターとプレイヤーで効果量に差はあれど、効果が出れば、その効果を実感するぐらいは出来るのではないかと思う。
それが分からないのは効果が発動していないから、要するに効果の発動条件を満たしていないからだ。
特性:バーサークの発動条件は……猛り狂う事か?
「もしかしたらこの辺りの敵じゃ弱すぎて、俺が猛り狂えてないのかもな」
「なるほど。それはありそうですね」
うん、これは普通にありそうだ。
なにせ、先程のプレンクラブとの戦いは作業と言う感じがしてしょうがなかったし。
「しかしそうなると、効果を確かめられる機会は暫くなさそうだな」
「金策だと格上と戦うのは基本的に無しですからねぇ」
「まあ、そうなるな」
ただそうなると、暫くは特性:バーサークが仕事をする事は無さそうだ。
なにせ『AIOライト』の金策の基本は採取か剥ぎ取りで素材を集め、それらを適当に錬金して売る事なのだから。
なので当たり前の話だが、敵は簡単に倒せる相手だけになる。
そんな相手に俺が猛り狂う事は……まあ、まずないだろう。
「ま、発動の機会が無いなら無いでいい。今日の所は適当にアイテムを回収したら、ハナサキに帰ろう。で、金策だ」
「はい、分かりました」
そんなわけで、俺とシアはハナサキに帰った。
そして、適当にアイテムを錬金して売却、所持金を1,500G程増やしたのだった。
どちらのレベルも上がらず、波乱もない、本当に極々普通と言った感じの一日だった。
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【AIOライト 22日目 06:25 (半月・晴れ) 漁村ハナサキ】
「さて、今日はどうにかして水着を入手しないとな」
「はい」
翌日。
食事を終えた俺とシアは水着を求めてハナサキへと繰り出す。
尤も、水着を求めてと言っても、そんなにすぐ見つかるとは思えないので、実質的には休息を兼ねた散歩なのだが。
「……」
「どうしました?マスター?」
「いや、なんでもない」
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ思ってしまった。
二人きりで休日を過ごす。
これは実質的にはデートと同じなのではないかと。
しかも目的は水着を買いに行くという物。
その水着が女性物ならば……。
「マスター?」
「なんでもない、本当に何でもない」
「はあ……?まあ、何でもないというなら構いませんが」
だがそこまで考えて思い出す。
これはゲームクリアの為であると。
水着もシアや俺が着るためではなく、錬金術の素材として使うからであると。
うん、これは決してデートではない。
気楽には過ごせるがデートでは無くて仕事だ。
「さ、一軒一軒巡るとしよう」
「はい、そうですね」
と言うわけで、俺とシアは周囲のプレイヤーと同じように、自分たちの近くにある露店を一つずつ覗いていく。
なお、これは余談だが、今の俺は『狂戦士の鬼人の王』の仮面を顔の横に着ける様にして、俺自身の顔が見える様にしている。
これは『狂戦士の鬼人の王』の仮面が周囲に与える威圧感から、余計なトラブルを招かない為である。
まあ、掲示板上での評価を考えたら今更な気もするがな。
「んー……普通の野菜ばかりですね」
「こっちは魚ばかりだな」
シアの覗いた露店は野菜が売っているらしい。
そして俺の覗いた露店では魚が売られていた。
野菜と魚の組み合わせにシアの錬金能力なら、何かしらの美味しい料理を作れそうな気もするが……まあ、今日はそう言う目的じゃないのでスルーする。
「お」
「ありましたか?」
と、此処で俺は露店の品物の中に水着の文字を発見する。
予想以上に早く見つかった事に驚きつつも、俺は購入が可能か値段の方を見てみる。
「「……」」
そして俺もシアも無言になる。
何でかって?
こんな表示をされていたからだ。
普通の水着(1セット) 262,143G
まさかの最高級品四部位である。
流石に無理ですね。