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AIOライト  作者: 栗木下
2章:漁村ハナサキ
103/621

103:21-1

【AIOライト 21日目 07:15 (2/6・雨) 始まりの街・ヒタイ】


 『AIOライト』が始まってから今日で21日目。

 七の倍数なので、当然ながら雨である。


「ふうむ……」

 と言うわけで、俺はシアに持たせるためのプレンメディパウダー及びプレンメディブックを製作すると、掲示板での情報収集に専念していた。

 その理由は単純。


「マスター、例の情報は見つかりましたか?」

「まあ、一応は」

 携帯錬金炉を自作するために必要な材料四つの内、羊の鼻が見つける白花と青い左目在りし場の涙は入手済み。

 残りの二つの内、限られし時に眠るものについては自動生成ダンジョンで入手できるアイテムならば何でも良さそうな感じがするので、実質的には入手済み。

 となると後は赤い右目の澱みを回収しに行くべきなのだが……。


「一応?ですか?」

「ああ、一応だ」

 赤い右目の澱みがある場所は恐らく北の湿地。

 北の湿地は探索するのに専用のアイテムか何かが必要だと言われていたため、殆ど手つかずの状態であり、大多数のプレイヤーは俺と同じように行った事すら無いマップである。

 そこに対策もなく、雨の中突入するというのは……流石に無謀だろう。


「必要なアイテムは二つだな」

「二つですか」

 なので情報収集を行い、その結果として俺は適水粉と言うアイテムの存在を知った。

 そして適水粉を作るために必要なアイテムの素材についてもだ。


「一つはハナサキの海岸で普通に手に入るアイテムだな。名前は普通の白い花」

「あの海岸に時々生えていた花ですね」

「そうそう」

 普通の白い花については何の問題もない。

 それこそ今から取りに行っても良いというか、取りに行くつもりである。


「問題はもう一つのアイテムで……水着だ」

「水着……ですか?」

「ああ、水着の特性を一度花に移し替えてから、加工をすればいいらしい。問題は……」

 そして、白い花を取りに行くついでに、昨日新調した装備についても試してみればいい。

 何度か戦えば、調子も特性も掴めるはずだ。


「水着をどうやって入手するかだ」

 なので残る問題はどうやって水着を入手するかである。


「えーと、そんなに入手が難しいものなんですか?」

「ああ、地味に厄介だ」

 俺はシアの質問を受けて、掲示板で確認できた水着購入に関する情報をまとめた画面を表示すると共に、改めてその内容を頭の中で反芻する。

 まず水着は、漁村ハナサキ内の露店でランダムに売られている。

 このランダムと言うのは場所と言う意味もあるが、部位、値段、品質、細かい種類なども含んでいる。


「……。そんなに大変なんですか?」

 俺の真剣な表情にシアが思わずと言った様子で息を飲む。


「ああ、大変だとも」

 まあ、今回の用途ならば、部位と細かい種類は気にしなくてもいい。

 場所についても晴れた日なら、休息も兼ねてハナサキの中を巡るだけの話。

 問題は……値段だ。


「安いのならそれこそ100G程度で買えるものもあるそうだ」

「それなら……」

「だが高いものだと、65,535Gもするような水着が確認されている」

「!?」

「勿論、そんな物を買う気はないが、掲示板に上がっている購入報告を見る限りではだいたい1,000~2,000Gは固そうだ」

「……」

 水着の値段差はかなり大きい。

 下はそれこそ普通の白紙本一冊分しかしないのに対して、上は携帯錬金炉が六個も買えてしまう程に高額なのだから。

 まあ、購入したプレイヤーの報告から察するに、高いものほど高級品でしっかりしたものである事は確かなようであるし、事前に細かいデザインなどは確認できないのは厄介だが、それを除けば高い物を買うべきなのだろう。

 着用目的であるならば、だが。

 うん、また煩悩のせいで脳内議論が脇に逸れている。

 戻さなければ。


「その、マスター、マスターの所持金は……」

「色々と売ったり買ったりしていて、あんまり気にしていなかったんだが……1,000Gちょっとだな」

 一応、平均的な値段の中でも下の方の水着に当たれれば、購入できる金額ではある。

 だが、明日以降の食費なども考えたら、これは使ってはいけないお金である。


「……。金策ですか?」

「まあ、それしかないだろうな」

 つまりはまあ……水着入手の為には金策に走るしかないという事である。

 具体的に言えば2,000Gほど欲しい。

 それぐらいあれば、ほぼ確実に買えるはずだから。


「一応、水着特性付与の普通の白い花を他のプレイヤーから購入するという手もないわけじゃないが……まあ、時期が時期だしぼったくられるだろうな」

「まあ、そうですよね……」

 勿論、水着特性付与の普通の白い花あるいは適水粉そのものを他のプレイヤーから購入するという手段も俺たちにはある。

 だが、掲示板を見る限りでは、現在その二つのアイテムについてはぼったくりのような値段で取引されている事が多く、マトモな価格と言える値段で取引してくれるプレイヤーは殆ど居ないそうだ。

 しかも適水粉の効果時間はおよそ三時間ほど、赤い右目の澱みを北の湿地で探す事を考えたら……まあ、素直に自作するべきだろう。


「まあ、こうして悩んでいても仕方がないな。とりあえずはハナサキの海岸に行こう。で、色々とついでにやってしまうとしよう」

「はい、分かりました」

 いずれにしても行動はしなければならない。

 と言うわけで、俺とシアはギルドポータルの転移でハナサキへと移動したのだった。

ミスリード?

残念、意味有りアイテムです。


09/03誤字訂正

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