表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/31

二十九 幕間 日本では

 部屋に響く、カチリカチリというマウスのクリック音。

 

 聞き取り調査が行われた日の夜、遠藤佳代は自身の部屋のパソコンで、己の身に起きた失踪事件について調べていた。

 そして――。


「な、なにこれ……」


 画面に映るものを見て、思わず出した声は、当惑したように震えていた。

 そこにあったのは豚田の手紙。

 その手紙には、日本に戻ってきた彼が、どんな酷い目に遭っていたかが克明に記されていたのである。


「豚田……」


 佳代は瞼を濡らした。

 その心にあったのは、何故豚田ばかりがこんなに辛い目に遭わねばならないのか、という思い。


(豚田は何一つ悪くない。

 悪いのは豚田を殺そうとした私達……)


 どうしようもなく辛くて悲しくて、佳代の胸は張り裂けそうであった。


「豚田……」


 もう一度その名を呟く。

 豚田はその身を犠牲にして佳代を助けた。

 ならば佳代はどうするのか。

 その瞳には涙よりも熱い、決意の炎が宿っていた。


 翌日、佳代は貯金箱からお金を取り出し、電車とタクシーを使ってテレビ局に向かう。

 親には知らせていない。ただ心配させないために、書き置きを残していた。


 やがて辿り着いたテレビ局。

 その受付で、佳代は学生証を見せて身分を明かした。


 集団失踪事件の二人目の帰還者、それはマスメディアが今最もコンタクトを取りたい相手である。

 警察から名前が公表されておらず、本人かどうか確認がとれなくとも、それを無下にするほど受付担当者は馬鹿ではない。


「しばらくお待ちください。今、係の者に確認します」


 受付担当者が受話器をとって内線に繋ぐと、すぐに幹部の者が会うという話になった。

 さすがというべきか、テレビ局の上層部は佳代の名前を知っていたのだ。


 そして、そう時間のかからぬ内にやって来た幹部職員に、佳代は言った。


 ――何があったのかテレビカメラの前で話させてほしい、と。


 自粛を求められていたテレビ局であったが、わざわざ相手が話したいと言ってきているのだから断る道理もない。

 おまけに佳代は生中継で顔出し有りを希望した。


(これなら信憑性も話題性も相当だろう)


 幹部職員は佳代の申し出を了承した。

 そしてテレビ局の一室を使って、すぐに独占緊急生中継が行われた。

 佳代への配慮のため、その場にいることを許されたのは、幹部職員と最低限の撮影クルーのみである。


「あ、あたしの名前は遠藤佳代と言います」


 緊張の中、カメラに向かって話し始めた佳代。

 初めて向けられたテレビカメラは、まるでなにか武器を突きつけられているような気にさせた。


「知っている人もいるかもしれませんが、集団失踪事件の帰還者です。

 今日は何があったのかを話したくて来ました」


 そして、佳代はあちらの世界に召喚されてからのことを話していく。


 異世界という嘘のような話。

 召喚から始まり、豚田がクラスメイトから殺されそうになり、使用人となり、やがて奴隷に落とされる。


 始めは緊張してた佳代の語りも、段々と迫真を帯びたものとなり、その場にいた者は皆引き込まれていった。


「彼が……彼が、あたしを救ってくれたんです……」


 ボロボロと涙を流しながら、佳代は懸命に話した。


「血みどろになりながら、あたしなんかを救うために……っ!」


 豚田がクラスでどんな目に遭っていたか。

 自身が豚田に助けられる価値もない、いかに駄目な存在であるか。


「ごめんなさい、あたしのせいで傷ついてごめんなさい……!

 いじめられている時になにもしなくてごめんなさい……!

 殺されかけている時もなにもできなくてごめんなさい……!」


 懺悔であった、罪の告白であった。

 己はどれだけなじられようとも構わない。


 でも、豚田は違う。

 彼は誰よりも心優しい、温かな心を持った人だから。


 ――だから、次に豚田が帰ってきた時は誰からも祝福されるように。

 彼の心のように優しく温かく迎えられるように。

 佳代は己の罪を精一杯の気持ちで告白したのである。

 

 そして一通り話が終わると、それ以後は、泣きながらずっと「ごめんなさいごめんなさい」と佳代は謝り続けた。

 カメラが止まった後も謝罪が止むことはない。

 幹部職員が「もういいんだよ」と肩を叩くまで、それは続いた。


 ――こんな誠実で純真な心をもつ子が許されないなんてことがあろうか。


 幹部職員も撮影クルーも皆同じ気持ちであった。

 年甲斐もなく感動していたのだ。


(こんなオッサン達の心まで揺り動かしたその慟哭。

 ならばその謝罪はきっと世界へ、そして豚田の下へと届くだろう)


 幹部職員はその視線をどこにあるかわからぬ異世界へと向けた。


 こうして会見は終了し、佳代はハイヤーに乗せられて丁重に自宅へと送られるのであった。




 帰還者による突然の会見中継は凄まじい反響を呼んだ、もちろん悪い方向で。

 なにせ異世界の存在である。

 信じる方が馬鹿というものであろう。

 某局には、あの会見が被害者に対する冒涜であるとして、多数の抗議の電話が殺到することになる。


 しかし、これまで頑なに口を閉ざしていた警察が一連の経緯を発表すると、世論は一変した。

 豚田の証言、佳代の証言、そして警察官が実際に見たというワープ現象。

 これにより摩訶不思議な集団失踪事件にも一応の説明がつくことになるのだ。


 すると今度は、あの会見を再度放送してくれという電話が某局に殺到する。

 加えて、佳代に対するファックスやメールが絶えることなく送られ、その内容は好意的なものばかりであったという。


 また、他局からは、会見の映像を使わせてくれという再三にわたる要望が某局に届けられた。


 もちろんのこと、各局はあの会見を報道解禁と捉え、遠藤佳代の家に取材に向かっていた。

 だが、会見以後は両親が佳代を部屋に閉じ込めてしまっている上に、マスコミ対策に警察まで呼んでいる有り様である。


 警察も豚田の二の舞は御免とばかりに、過剰な取材に関しては迷惑防止条例違反で容赦なく逮捕すると通告していた。

 要するに、遠藤佳代への取材は不可能であったのだ。


 されど、映像貸し出しを某局の幹部職員が許可することはなかった。

 それどころか自局での再放送すら許さず、既にテープを破棄していた。

 なぜならば、間近で彼女の告白を聞いた幹部職員には、そのテープを残すことはあまりにも不実な行為に思えてならなかったからである。


 騒ぎはテレビ界隈だけではない。

 この時、インターネット世界も遠藤佳代一色であった。

 十八才の現役女子高生。それも、小学生にも見えそうな小柄な少女の悲痛な訴えと謝罪である。


 誰ぞが違法にアップロードした動画であらためてあの会見を観てみれば、誰もがその思いに胸を打たれ、骨芯にまで熱いものが染み込んだ。


 豚田のクラスメイト達が豚田にした仕打ちは決して許されることではない。

 しかし、それでも彼女だけは許されたのだ。


 これは佳代が直接的ないじめに参加してなかったこと。また、豚田が佳代を命を懸けて助けたことが大きな理由である。


 ――そして今回の会見による影響がもう一つある。

 豚田を苦しめたマスメディア、警察、失踪被害者家族への非難が再び燃え上がったのだ。




【合法ロリ】遠藤佳代ちゃんを愛でるスレ【十八才】part8

1:名無しさん 2015/-/30(水) ID:NAT5A5nKAT

語れ


2: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:Gohak8a2ta

遠藤佳代許さん!


3: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:OmikataSUN

>>2

俺は許した


4: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:NYAsanagia

>>2

俺も許した


5: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:SukrakATAt

>>2

俺は許した


7: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kgallehitn

>>2

許す


10: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kBTnPimaGm

>>2

許した


21: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:ButaKachan

俺同じ学校だけど、先輩がいうには、こいつがいじめの主犯格だったらしいよ


23: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:Bcflashnt0

>>21

またいじめ生徒家族の工作かよ


24: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:onTationad

>>21

しね


27: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:oydmHTusic

>>21

しね


42: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:ButaKachan

違う、俺は家族じゃない

これは事実

あの女がいじめの主犯格。毎日、豚田くんをいじめてたのはあいつ

多分今回あの女だけが帰ってきたのも豚田くんを脅したから

あの会見はでたらめ


44: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:tanayaakan

>>42

女が男をいじめる主犯格とかw


45: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:Uhiuriburi

>>42

もう黙れよ、ここは佳代ちゃんをペロペロするスレだぞ


48: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:Yomegitasa

>>42

しね


50: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:takenerita

>>45

しね


52: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kodiuseuni

>>42

しね、工作員


107: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:gorechomP0

つか豚田ってすごくね?


111: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:mekBWhn01Y

すごいよな、あのあだ名

見た目もすごいけど


113: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kBap0Ajmr2

www


115: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:mlbAjgetme

そっちじゃねえw

佳代ちゃんいわく、魔物を倒してお金を稼いでたんだぞ

お前らライオンとかワニとかとバトルしたいと思うか?


118: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:gasASBAjer

ああ、やべえわ

魔物がどのレベルか知らんけど、地球の猛獣レベルなら銃なしじゃ無理


121: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:Bj5p228teC

いやそんなことよりもさ

別に助ける義理もない相手、というか、むしろ恨みに思っててもおかしくない相手を命を懸けて救う方がやばいわ

右の頬を殴られたら左胸の心臓を差し出すとか、神様でもやらねえよ


123: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kUjIp8U0NB

つーか豚田って、いじめられてたんでしょ?

こんな聖人いじめるとかどんな鬼畜だよ


124: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kjp80g2Bte

それな

クズ揃いのクラスだったんだろうな


126: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:ButaKachan

違う、聞いた話だけど、いじめはなかった

遊んでたのがいじめに見えただけだと思う


129: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:mOE58a2CDT

>>126

死ね工作員


130: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:ca4H5TtNCg

>>126

しね


133: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:ytqal22stT

家族しね


135: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:gjmytqcj2g

>>126

お前の子供が帰ってきませんように


210: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:mjtpgt0pmj

しかし異世界とかやべえな

佳代ちゃん、もっと異世界について話してくれんかな


215: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:B65grpTP2w

魔法か

豚田も使えるんかな


215: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:4BGTJJNPJ2

そりゃ使えるんじゃね?

いじめられてた雑魚デブが魔物と戦うなんて、魔法でもなきゃ無理だろ


215: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:DA4KI5METE

こりゃ豚田が帰ってきたら争奪戦やろな

日本発の魔法革命起きるんじゃね?

うは夢ひろがりんぐ


317: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:ag2st5ion0

つか、豚田も帰ってこれるのに、なんで帰ってこないんだろ


319: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:YUM44kBTnP

そりゃ、あの手紙でわかるだろ

全員戻ってこないと居場所ないから……的なこと考えてるんじゃね?


321: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:K2at5ahaki

豚田聖人過ぎだろ



999: 名無しさん 2015/-/30(水) ID:kBc2h5ika

1000なら豚田だけ帰ってきてハッピーエンド


1000: 名無しさん 2015/12/30(水) ID:ButaKachan

1000ならこのスレにいるゴミ共、全員異世界に召喚される


1001: 1001


このスレッドは1000を超えました。

もう書けないので、新しいスレッドを立ててください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ