第八層
昨日は興奮しすぎ遠足前夜の小学生みたいに眠れなくなってしまった。そのしょぼしょぼしたまぶたをこすりながら、ベッドから身を起こす。
さて、昨日やろうとしていた新スキルの確認からやっていこうと思う。
「ステータス確認。」
ー
ステータス
ダンジョンマスター
LV:1
種族:人間
性別:男
名前:斎藤 夕夜
職業:なし
能力値
HP:100/100
MP:100/100
STR(筋力):10(20) +10
VIT(耐久):10
INT(知力):10
MIN(精神):10(20) +10
AGI(俊敏):10
DEX(器用):10
LUK(幸運):10(00) ー10
所持スキル
・《蟲喰い》
・《性質付与》 LV:1
・《着ぐるみ作製〔リアル〕》 LV:1
・《変態》 LV:1 NEW!
アクティブスキル:スキル名を叫ぶと着用している衣服を自動的にアイテムボックスに収納し、《着ぐるみ作製〔リアル〕》で作製した物を一瞬で着用することができる。
消費MP:10
備考:《着ぐるみ作製〔リアル〕》を所持したも者しか習得できない。
称号
・《蟲を喰らう者》
「うん、まぁ予想していたよ。このくらい。なぜ《変身》じゃないのかとか、つっこまないから。」
「黒いオーラ出しながらブツブツ言わないでくださいよ。…怖いです。」
…ふっ。今日のレイナちゃん、辛辣だぜ…。
「そんなことより!!」
「きゃっ。いきなり復活しないでくださいよ。びびります。」
「というわけで、ダンジョン解放します。あと20DPしかないので。」
「もうですか。まぁ少ないのでしょうがないですね。」
本当は、毎日イモやん料理ならば44DP余るが俺が我慢できずに、おにぎりや魚を頼んでしまったので残りDPが20DPになってしまった。反省も後悔もしていない。
「…でどんなところにどんなダンジョンを置きますか?」
「…え?選べるの?」
「はい。できますよ。」
「ならば、小さな村の近くの山の麓に、直径3m、高さ1mの落とし穴を作ってくれ。それをダンジョンに繋げよう。」
「了解です。では繋げます。」
「ゴゴゴゴゴッ」
ダンジョンに重低音が響き渡り、しばらくすると入り口の方に久しぶりにみる明るい光が見える。
「いやっほーーー!外だーーー!」
こんなに叫ぶほど自分は外が恋しかったのかと改めて自覚した。
「ちょっと、待ってください!今の音で何か集まっているかもしれないです!ちょっと!いかないで!」
そんな声が聞こえた気がするが俺にはわからない。なぜなら、もうすでにクラウチングスタートからの全力ダッシュに変わっているのだから。
「ファーーーーーー!へんっ!たいっ!!」
走りながら、スキルを使う。魔力がなくなるあの嫌な感覚とともに麻の服上下が不思議な光に包まれ消え去り、まっぱになる。一瞬の爽快感が全身を駆け巡り、ハイになったところで。…あの全能感溢れる着ぐるみを着用。そして湧き上がる興奮!興奮!興奮ーーー!!
「あ゛あ゛っああああぁっぁぁぁぁぁぁあああああああ!!きもっちいいいいいぃっぃぃぃぃいいいいいい!!」
そんな言葉とともに、触手を使い外へと這い上がった。
外の空気は気持ちよかった。周りは木に囲まれ、上を見れば濃い青の空。…月が二個あるが、そこは異世界。しょうがない。あぁ、最高だ。ただし、周りに緑の小人がいなければ。
「ぎぎゃっ!?」
第一村人発見である。
*
どうしよう。目の前のガン飛ばしてくるヤンキーなゴブリン?はどうすればいいのだろうか?殺しちゃっていいのだろうか?怖いし。…いや、だめだ。ちゃんと相手を知らなければ。友好的かもしれないし。
そう思い、ゴブリン?さんをよく観察してみる。
全体の体色は濃い緑、腹が出ていて手足は細い、身長は130cmほど。顔はしわくちゃで鷲鼻、目が赤く光っている。そして、手には錆びついた両刃の片手剣を持ち、こちらに構えている。
…どう見ても友好的とは思えない。しかし、決めつけるのは良くない。なにせ自分も魔物ルックだから。よし、まずは挨拶だ。そこから友情を育んでいこう。
「やっふぉおおおおおおおーーー!!元気してるかい?俺はモチロン元気どぅええええええっすぅ!!」
しまった。思考はこんなに冷静だから油断していた。着ぐるみのせいで興奮状態なのを忘れていた。
キチガイな挨拶をしながら、ゴブリン?君の背中を触手でポンポン叩く。そして訪れる一瞬の沈黙。
「ぎぎゃあああぁぁあああ!!」
そんな叫び声をあげて手にした片手剣を叩きつけてくる。
しかしそこは流石のイモやん着ぐるみ、自由自在の触手ちゃんたちで叩きつけてくる片手剣を絡めとり、放り投げる。
「ぎぃ!?」
こんなキモイ生物に俺が負けるだと!?みたいな愕然とした表情で膝を地につけるヤンキーなゴブリン?君、改め、ヤンゴブ君。
「諦めたか、ヤンゴブ君。これで力の差がわかったであろう。…頭を垂れ、我が軍門に降れ!!さもなくば、死あるのみ!!」
まだ興奮が冷めないのか、余計なことを言ってしまった。
「ぎぎゃっ!ぎぐぅうううっ!ぎががっぎぃぎゃっ。…ぎいぎゃあ!!」
何やらヤンゴブ君が必死に訴えかけてくる。何を言っているのかわからないがなんとなくその表情からして、怒りだとおもわれる。最後に叫び素手で殴りかかってきた。
「ヤンゴブ君、残念だ。お前となら友になれると思ったのだがな。残念だよ!!」
そう言って触手で手足を縛りつけ宙に浮かせる。…うーんこの構図はいけないものを想像してしまう。…殺そう、吐き気がしてくる。
「我の糧となれ!必殺!四肢離散っスクワームテンタクルズ!!」
「ぎぎゃああっ!?」
痛い必殺技を唱えた瞬間に、触手に力を入れる。するとヤンゴブ君の手足が引きちぎられダルマ状態になり、地面に転がる。結構グロかった。
…うむ、失敗した。手足を折るだけにしようと思っていたのだが、力加減が甘かったようだ。
「…ぎぐ、ぎがあぁぁぁ……。」
最後に力なく鳴き、ヤンゴブ君は力尽きた。
「死んだか。しかし、罪悪感がわかない。人型を殺したのに…。」
…まぁいい。そっちの方が好都合か。
「レベルが上がりました。」
うぉっ!!…まじでびびるから、頭に鳴らさないで欲しいんだけどな。…よし気を取り直して、ヤンゴブ君を有効活用しますか。
「ゴブリンを使用して、《着ぐるみ作製〔リアル〕》!!」
ヤンゴブ君(死体)が宙に浮かび回転しだす。そしてゆっくりと自分に近づきだす。
学習している俺は事前にまっぱになり待機している。
…そしてあのフィット感と謎の快感が体を襲い、謎の光に包まれる。
「ふぉおおおおおおっぉおおおおおおお!」
光が収まるとそこには、先ほどのヤンゴブ君とうり二つのゴブリンが立っていた。
「レベルが上がりました。」
ー
名 称:「ガン飛ばすヤンゴブきぐるみ」
特殊能力:「ゴブ言語理解」
種族:子鬼の使う言語を理解し喋ることが出来る。
「威圧」
格下相手(自分のレベルの半分以下)に睨みを利かせることにより、状態異常【恐怖】を与えることが出来る。
備 考:この着ぐるみを着用すると、人間に嫌悪される。
ー
ステータス
ダンジョンマスター
LV:2 NEW!
種族:人間
性別:男
名前:斎藤 夕夜
職業:なし
能力値 NEW!
HP:130/130
MP:120/120
STR(筋力):20(30) +10
VIT(耐久):30
INT(知力):15
MIN(精神):20(30) +10
AGI(俊敏):15
DEX(器用):15
LUK(幸運):15(05) ー10
所持スキル
・《蟲喰い》
・《性質付与》 LV:1
・《着ぐるみ作製〔リアル〕》 LV:2 NEW!
アクティブスキル:スキル保持者が素材を指定し、半自動的に着ぐるみを作製する。その際、その着ぐるみにあった特殊能力を一つ付与する。特殊能力はLVによって拡張可能。耐久力はスキルLVに依存。
「着ぐるみ能力拡張」 NEW!
消費MP:45 NEW!
備考:スキル《鎧作製》から派生するかもしれないスキル。全人類に不人気のスキル。
称号
・《蟲を喰らう者》
ー
ちなみに、スキルのレベルは最大5です。
LV:1が素人に毛が生えた程度、LV:2が一人前、LV:3が中堅、LV:4が達人、LV:5が神です。