第三層
「うおああぁぁぁぁぁっぁぁっぁあああああ!!」
そんな叫び声を上げながら硬い地面の上から起き上がった。
「…へ?あれ?なんで、地面の上に寝っ転がってたんだ?意味わからん。しかも背中痛いし…てかここどこよ?」
「ようやくお目覚めですか、マスター。先ほど天井からいきなり降って来た時は、驚きました。そして、ここはダンジョンのマスタールームです。」
…ん?声が聞こえた。誰かいんのか?そう思って少し警戒しながら周りを見渡す。……だれもいない。あるのは、小さな四角いテーブルと丸椅子一つとテーブルの上に、蝋燭一つと金属的な光沢があるひし形の黒い結晶のようなものが浮かんでいるだけ。
「もしかして、今しゃべったのはお前か?」
夕夜はびくびくしながらも、黒い結晶にそう問いかけた。
「はい。声をかけたのは私、製造番号017番のダンジョンコアです。」
ほわー、綺麗な声だな。さっきは、混乱してよく聞いてなかったけど。鈴が鳴るような声で…なんか癒されるな。…ん?コア?製造番号?どういうこっちゃ?
……あ!そういえば闇の女神を名乗る頭おかしい幼女に…落とされたんだ!そんで、背中が痛かったのか。くそっあんにゃろ~。可愛いからってなんでも許されると思うなよ!!
夕夜は、何かゆるんだ顔をしたり、怒りで顔を真っ赤に染めて地団太を踏んだりしながら忙しそうにしていた。
「…あ!そうだ。えーと、017番のコアだっけ?…ここは、マスタールームであってる?」
「はい。ここは、マスタールームです。ダンジョンの心臓部になります。」
改めて周囲を確認してみると、四畳半ほどの正方形の部屋で光源は蝋燭一本しかないので薄暗い、岩の中を四角くくりぬいたみたいになっている。しかも少し肌寒い、最悪だ。
ベッドも、トイレも、ドアもないじゃないか。どうやって生活しろと?
「おい、017番……言いにくいな。コア、お前の名前はレイナだ。」
「マスター、私に名など…よろしいのでしょうか。」
「ああ。言いにくいからな。」
「マスター、ありがとうございます。」
いつかコアが擬人化とかしたときのために好感度は上げとかなきゃ駄目っしょ!
「それで、とにかく説明してくれるか。この後どうすればいいのか。」
「それでは説明させていただきます。マスターには、二週間の間にダンジョンを作製していただきます。この期間が過ぎると、作製状況にかかわらず、自動的にダンジョンが解放され、ダンジョンコアを奪いに冒険者や光の女神の使徒(チャレンジャー達)が侵入してくるので、これを撃退または殺害してください。
また、ダンジョン外から侵入してきました生物を撃退、殺害しますとダンジョン作製に必要不可欠なダンジョンポイント(DP)変換されます。殺害した生物のランク、レベルにより変動しますので、より強い生物を殺害して、ダンジョンをしていきましょう。
DPの用途はさまざまでダンジョンの強化、装備、消耗品の生産、魔物の召喚等に使用しますので、よく考えてご使用ください。
闇の女神ヘスティア様よりダンジョン作製を応援して1000DPとスキルチケット2枚が贈呈されました。
以上で、ダンジョン作製についての説明を終わります。」
うーん。二週間か、せめて一か月はほしかったな。まぁ、しょうがないか。…よし!まずは生活に必要なものをそろえていきますか。
「レイナ、説明ありがとう。それで、トイレとか風呂とかが欲しいんだが、出せるか?」
「どういたしまして。取り寄せたいものがあれば右手を空中でスライドさせてメニューを開くか、「カタログ」と念じていただければ解決できるかと。」
「そうか、ありがとう。」
さっそく右手を空中でスライドさせると近未来的な半透明の青いディスプレイがあらわれた。
「うぉっ!これがメニューか。VRMMOとかできたらこんな感じかな?」
そのディスプレイには上からステータス、カタログ、プレゼントボックス、アイテムボックスが書かれていた。プレゼントボックスには2件の新着がある。
とりあえず先に新着から見てみようか。
プレゼントボックスをポチっと押してみる。1000DPとスキルチケット2枚があり、その横の受け取りボタンを押した。するとメニューが消え、新たに『1000DPとスキルチケットを受け取りました。』と書かれたディスプレイが表示された。
「よし。それじゃさっそく、カタログ!」
左上にカタログと中央にズラーといろんな品名とその横に消費DPが表示されたディスプレイが現れた。それを指でスライドさせていき目的の物を見つける。
生活用品とか装備品とかの種別ごとに分かれてて、やりやすいな。とりあえずベッド〔小〕と洋式トイレ、風呂〔中〕、お風呂セット、蛍光灯2本で65DPかなかなかするな。よし、決定!
「ベッド〔小〕、洋式トイレ、風呂〔中〕、お風呂セット、蛍光灯2本を65DP消費して設置します。承認しますか。」
「承認する!」
承認した瞬間、「リィンッ」と音が鳴り、硬そうな一人用のベッドにテーブルの上には桶と石鹸とタオル、天井には蛍光灯が付き明るくなった。そして、ドアが二つ壁に現れ開けてみると洋式トイレに二人くらいは入れそうな風呂ができていた。
夕夜は設置された物を確認し、ベッドを見つめたあとフラフラと近寄り、ベッド倒れこんだ。
「はぁ…。硬いけど、疲れたわ。もう…む…り…。」
「おやすみなさい。マスター。」
安心したのか、急にきた眠気に逆らわずまぶたを閉じていくと、おやすみと優しい声で言われ、あぁ、ひとりじゃないんだと夕夜は再確認しながら深い眠りに落ちていった。