第二層
冷たく硬い感触が頬にあたり目を開ける。そこには何もなかった。あるのは暗い闇だけ。
…暗い。なんだここは?俺はさっきまで面白そうなゲームを見つけて、始めようとしたらいきなり目の前が暗くなったんだよな。…んで…え?……はぁ!?いや、意味わかんねぇ!なんで気を失って目が覚めたら、こんな真っ暗な部屋にいるんだ?…ん?…もしかして拉致監禁!?俺を!?…いや、ないなそれは。引きこもりを拉致ったってなにになるんだよ。
何度周囲を見回しても、変わらない暗い闇。自分の手さえも見えない状況で夕夜は混乱していた。
誰かいないのか?さすがに暗いなかでひとりってのは寂しいってか怖いんだが…。とっとりあえず呼びかけてみっか。
「おーい!誰かいませんかー!」
…返事がないな、やっぱり俺一人か…。てか怖い、自分一人だって分かると余計に怖くなるな。…よし!ここはふざけて気分をなんとかしよう。
「……俺が引きこもりだからってこんな場所、用意してもらっても困るんですけどー!」
「…おい!聞いてんのか?せめて、パソコン、スマホ、テレビ、ベッドを用意せぇや!!」
混乱しているのか。少し口調がけんか腰になっていた。いつもはこんなに声を出せないのに。
そんなけんか腰の要求を言い終わった瞬間に目の前の自分の腰あたりほどの場所に、青白い顔が……!?
「うおぁっ!」
慌ててその場を飛び退く。着地した時、一瞬の内にして暗闇がすっとなくなり、周囲が見渡せるほど明るくなっていた。床も壁も天井さえも黒く塗りつぶされた正方形の大きな部屋、そしてちょうど中央にいる俺と……幼女!?しかも可愛い!ツインテールにした綺麗な金髪、透き通るような白い肌、クリッとした青い目。将来は美人になるだろう金髪碧眼の黒ゴス幼女がいた。
「っえ!?なぜ黒ゴス幼女が!?…っは!?もしかして俺のことが好きすぎて、拉致監禁を!?いやー、照れちゃうなー。でもお兄さんのストライクゾーンには君はいないんだ。15年後くらいにまたさそってね。ほんとにごめ「バキィッ!!」っぶふぉあ!?」
おバカな妄想を垂れ流しながら笑顔で幼女の頭をなでようとしたら、鈍い音が左の頬辺りから聞こえ、幼女の姿が視界から消えた。次の瞬間、俺の顔面が床面を滑った。
「痛いっ!ってかあっつううぅっぅう!?っえ!?なに?」
「わたしに触るでない下種がっ。二度と近づくでない、愚図!!」
ドバドバと鼻血を出しながら茫然とする夕夜、右腕を振り切った体勢で罵詈雑言を夕夜に浴びせる幼女。
「え?なんなの?どゆこと?」
「キモイから殴った。」
……えっと、ちょっと待ってくれ。どゆこと?確かにさっきまでの自分はこの異様な空間で混乱していらんことを口走ってしまったかもしれない。でも殴るのはなー。しかも仁王立ちで偉そうにして平然と言ってくるし、なんなのこの状況!?なんなのあの幼女!?
「というかおかしいだろ!なんで幼女が俺を殴り飛ばせんだよ!?」
「…はぁ。落ち着くのじゃ、愚図。」
…くっ。なんてナチュラルに馬鹿にしてくるんだこの幼女は。新しい扉をひらいちゃうぞ!
「顔を赤らめるな、気色悪いクソガキ。」
…くっ癖になりそう!っとふざけるのはこのへんにして、落ち着こう。
「えっと、可愛らしいお嬢さん?今の状況を教えてもらえるかな?」
「わしはお嬢さんなどではない闇の女神、ヘルベスじゃ!っで、状況じゃったな、お前はここに来る前に一つのゲームを始めようとしていたはずじゃ。」
闇の女神!?何言っちゃってんのこの子?…いや、まてよ。神、何もない異様な空間、尋常じゃない力を持つ幼女、ここから導き出されるのは…もしかしたら異世界トリップ!?ひゃっほい!いや、断定するのはまだ早い。まずは状況を聞いてからだ。
「あぁ、そうだ。ダンジョンマスターVSチャレンジャーっていうゲームを始めて、ダンジョン運営側を選択したんだ。」
「それじゃ、そのゲームは神のゲーム、闇の女神の陣営と光の女神の陣営にプレイヤーをわけさせ、そのプレイヤーを異世界に送り、神の使徒として殺し合わせるのじゃ。どうじゃ、簡単じゃろ?」
殺し合いかぁ…平和な日本育ちの俺なんかにできそうにないな。それにチートがなかったらお話にならないよ。異世界ってのは正直テンション上がるがな。
「そのゲームは拒否できるのか?」
「無理じゃ、強制参加じゃ。」
「そうか、じゃあチートは?それぞれの陣営の数は?」
「チートではないがスキルをランダムで付与する。陣営の数はそれぞれ50ずつじゃ」
チートなしか、きついなオレTUEEEEEEとかしてみたかったのにくそっ!
「おっともう時間がないからの。あとはコアに聞くんじゃな。それじゃ、達者でな。」
そう幼女が言った時俺の足元に突如落とし穴が出現し、俺は落ちた。