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女子中学生の羞恥心は宇宙に輝く

作者: みずまき

「マイコォ買い出しじゃんけん

 負けてよかったよぉ」

カナはパンの入った袋、私のお昼ご飯を抱え

高揚した様子で教室に戻ってきた


机を2つ向かい合わせにした席に

カナは「ガタタタッ」っと飛び込んだ

「パン買うのに並んでたら後ろが八雲先輩だったんだよぉ」


挿絵(By みてみん)


“えっ八雲先輩!?”

ときめく気持ちはカナのテンションの

高さに負けてしまい

私はちょっと落ち着いて、

ここは聞き手になろうと大人になってみた


「で、今日の八雲先輩はどうだった?」

抱きしめられてつぶれそうだったパンの袋を

そっとカナの胸から抜き取った


「体操服だった~立花先輩と一緒に来てて

 水泳部の話をしてた

 チキンカツサンドとメロンパン買ってたよ~

 八雲先輩、腕の筋肉がスッゴイの!」


「へぇいいなぁそんなに近くで先輩の腕をみられるなんて

 そうそうないよね~

 あ~でもチキンカツサンドもよかったなぁ

 おなか減ったよ。お昼食べようよ~」

そう言ってパンの袋から私のお昼ご飯

豚キムチサンドを…あれ?


「カナ 豚キムチサンドがないよ?」

「あ…」カナの笑顔が固まった

「売り切れだった?」

「いや~…」

カナは照れ臭そうにすき焼きサンドを差し出した


「先輩の前で豚キムチは言えないよ~」

「はっ!?なんで?」

「言えないよ!豚キムチだよ!?なんか卑猥じゃない~」

カナは本気恥ずかしがっている

「はぁ!?ヒワイって何よ?Hだって言う意味?」

「マイコは知らないんだよ~

 豚キムチなんて言ったら笑われるよぉ」

「笑われないよ!豚キムチ!」

「あ~ぁマイコは子供だもんなぁ」

カナは不敵というか少し遠い目をして言った

そういえばこの前、

お兄ちゃんのHな本を見つけたとか言ってたもんな

何か変な知識を得たか?

ホントに豚キムチはヒワイなのか!?


挿絵(By みてみん)


私はあきらめて、すき焼きサンドを開けた

悶々としながらモシャモシャと食べる

辛い物が入る予定だったお腹が

“違うよぉ”と言っているようだわ

「はぁぁぁ」


「ごめんごめん~

 先輩がいない時は確実に買ってくるから」

カナはパンの袋から自分のパンを

取り出した


「ン!?カナそのパン何?」

私は見た。豚肉らしきものが挟まれている

そのパンを

「え~豚バラサンドだよ」

「豚バラはいいの!?なんで!?」

「マイコは分かってないんだから~

 豚キムチがダメなんだよ」

「もぉ訳わかんない~

 なんで豚キムチがダメなのか教えてよ~

 ところで飲み物は?いちごミルクは買ってこれた?」


「あ!これはホントに売り切れてたの

 だから代わりに牛乳にしたよ

 マイコもう少しおっきくならなきゃダメだもんね」

カナは私に牛乳をグイッと差し出した


私は真っ赤になって叫んだ

「ムリよ!!飲めるわけないでしょ!!」

みんな私に注目する

日頃はクールなイメージの私の叫びに


挿絵(By みてみん)


カナも私の取り乱し様で固まってしまった

カナはゆっくり私の手から牛乳を抜き取り

引きつった笑顔で探るように聞いてきた


「なんで?なんで牛乳は飲めないの?

 牛乳嫌いだったっけ?」

私はみんなに見られたことに気付き

声を小さくして言った

「牛乳は危険すぎるでしょ」

カナは変な顔をしていたけれど

パァっと笑顔になり

「わかった!お腹が弱いんだね」

私は首を振った


「カナはデリカシーがないんだよ

 牛乳がもしもよ!?もし口や鼻から出てきたらどうすんのよ

 私気絶するよ!?んで2度と学校に来ないよからねっ」

「… 牛乳 鼻から出ないよ…

 出てきても拭けばいいじゃん」

カナは笑いをこらえながら言ってる


そういう問題じゃないんだよ

覆水盆に返らずなんだよ

もう どう言えばいいんだろ

「ムリ!家で飲むよ!」

私は簡単にそう言って牛乳を取り返した


牛乳が嫌いなわけじゃない

みんなの前で飲むのがダメなだけ

わかんないかなぁ~




トイレの鏡が正視できないとか


裸足は見せたくないとか


挨拶が大きい声で言えないとか


カナとマイコのそれら

小さな羞恥心は

2人にとってはやっかいなものだけれど

キラキラと弱く光る

宇宙に散らばる

無数の星屑のように

はかなくて愛おしい


時が経てば

それらは燃え尽きてしまう


真っ暗な闇になってしまう


そんなことは今は知らず

キラキラと輝く羞恥心


カナとマイコは八雲先輩の話しで

キャッキャっとはしゃいでいる



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