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春、渉泉高校
1話と2話は最初のちょっとした説明のようなものです。本文は3話から始まります。
田舎と都会の中間に位置する渉泉高校。一学年四組、全校生徒数二百人と少し。市立としては少ないその人数は、渉泉高校属する傘高市の少子高齢化を匂わせる。
渉泉高校の通学路に接する寺路公園では、四月の今現在桜が満開に咲いている。登校する生徒は必ずと言っていい程桜を堪能しながら高校までの道のりを歩む。わざわざビニルシートを持ってきて昼食は桜の下で食べるという生徒も増えてきた。
桜は春の象徴。日本はもとより四季を楽しむ風潮がある。彼らは日本人としても、春を尊重しようとしているのかもしれない。
例によって渉泉高校の生徒、または先生までもがほとんどが桜を好んでいる。
ただ一人、松岡真琴を除いては。