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Beautiful WorldLife  作者: 天路周東
序章 チュートリアル
7/34

復習 魔法習得編

あまりに長くなってしまったので別にしました。

この話を読まなくても作中の魔法の使用に関しては

そういうものだ と思って読んでいただければ特に問題がないように書こうと思っています…


ユンのドキドキ魔法解説〜どんどんぱぷぱふ〜


 えーと、凄まじい説明の量に頭がパンクしそうだ。おさらいをしよう……

「まずは魔力についてだね。ソフィから魔力についてちょっと聞いたんだっけ?」

「うん、まず魔力は世界中にあるってこと。水には水、火には火の魔力があること。世界には魔力の流れがあって、そこから取り出した魔力を形にすることが魔法って話かな?」

「まぁそうだね。だいたいオッケー、あとはなにか聞いた?」

「えーと、魔法は魔力を自分がコントロールして形にすること。魔術は道具を利用して一定の現象を発現すること。とかかな」

「なるほどね、その話だと魔物がどういうものかってのも聞いてる?」

「聞いた聞いた」

「まずはいまの話の補足から始めようかね。まず、魔力があらゆるものにあるっていうのは、物質にかぎらず生物にももちろんあるんだ。だから魔力っていうのは全てであり、全ては魔力でもある。そして、魔力にはおおまかに系統があるんだ」

「系統?」

「そう、系統。人によって理解の仕方は違うんだけど、ひとまずアタシの感覚で説明するね。系統って言っても一個一個魔力を考えると細かすぎるから、理解しやすいように大別したものなの。例えば水の魔力、この水っていうのは幾つかの特徴があるの。『流動』『変化』『凝固』『冷却』みたいな感じで銘打って捉えるようにアタシはしてるの。ここまではいい?」

「おっけー」

「魔法って言うのは簡単に言えば、魔力とイメージを融合したものなの。ちょっと見ててね」

そう言ってユンは手のひらを俺に見せるように広げると、その上に野球ボール程度の水球を生み出した。

「これが水の魔法。ただそこら辺にある魔力をかき集めて水の玉を生み出したの。そして、ここに『凝固』『冷却』のイメージと、さらに魔力を集めると……」

ピキッ ピキピキ パキ

と、瞬時に水球が氷球になった。

「おおー、イメージがあれば結構簡単にできちゃうもの?」

「まさか、イメージっていうのは頭の中にあるでしょう?そのイメージと自分の中にある魔力を混ぜあわせて、それと自然の魔力を混ぜて形にするの。自分のイメージと自分の魔力を混ぜるっていうのが第一の関門。自然の魔力と自分の魔力を混ぜるっていうのが第二の関門ね」

「ははぁ……」

「あとでやってもらうからとりあえず覚えておいて」

「了解」


 次々と説明は続いた……確か次は……

「次は魔術に関しての説明ね。基本的な魔術は、ある程度の魔法が使えるなら自分で作ることができるの」

「へぇ、魔術って専門的な細工とかを施さないと出来ないものだと思ってた」

「ちゃんと使えるもののほとんどはそうよ、でもほんとに単純なものなら自分でも作れるわ、例えばこれ」

そう言ってユンが差し出したのは小さなルビーだった。

「これを手に乗せて、体の中にある魔力を注ぎ込むと……」

ポッ とルビーの上にライターのような小さな火が灯った。ユンはルビーをそのままテーブルの上の皿に置いたが、火は灯ったままの状態を保っていた。

「これはアタシが生まれて一番最初に作った魔石。魔石っていうのは魔術が使えるように細工を施した宝石のことね」

「俺にもこういうのが作れる……?」

そう聞くとユンは頷いた。

「作り方を説明すると簡単でね。魔法を使う時みたいに、これをどういう魔石にしたいかをしっかりイメージして、イメージと自分の魔力を混ぜる、そして混ぜた魔力を宝石に流して溶かし込む……そんなイメージなの」

「イメージねぇ……」

確かに口でいう分には簡単というか、細かかったり複雑だったりはしないようだが、魔力の扱いというものに慣れていないうちは困難なんだろうと予想できる。ユンもそういうニュアンスを込めて話をしているようだ。

「もっと上級なモノになれば、専門家が魔法文字や精霊文字で意味のある文章を宝石とか金属に細工して、魔力が流れてくるだけでその魔力にイメージを混ぜ合わせる回路を作るのよ。そうすれば魔術を使うときにイメージをする必要がなくなるって訳」

「なるほどね、魔術としての下級なものは作りやすいけど使いにくい、上級なものは作りにくいけど使いやすいって感じか」

「そうなるねー。なかなか飲み込みが早いじゃない?」

「なぁに、まだまだ色々覚えないといけないんでしょ?」

「その通り、じゃあどんどん行こう」


「さて、ここでまた魔法の話に戻るよ。さっき魔力には系統があるっていう話はしたよね、ちゃんと覚えてる?」

「もちろん」

「系統っていうのは、私や他の魔法使いが覚えやすいからってできたわけじゃないの、そもそも水には水の魔力があるって例をカイは挙げてたけど、まさにそこが重要なの」

ふむ、大方の予想では水魔法は水の魔力を使えば威力が上がったり精度が上がったりといったところだろうか……?

「たとえばさっきみたいに水の玉を出す魔法を使うとしても、アタシはさっきは適当なところから魔力を使って出したの。でもこれって効率が悪い方法なのよ」

「水を出すのに水の魔力を使ってないから?」

「お、わかってるじゃない。そう、基本的に水のイメージっていうのは水の魔力を目指して作られるから、目的地である水に近い魔力を使ったほうがより早く、正確に、強く、そしてイメージにより近い形で魔法として扱えるのよ」

「イメージと魔力を混ぜるっていうのはイメージが魔力を書き換えるって感じに近いのかな?」

「……へぇ、驚いた。ホントに魔法のことなんにも知らないの?実は知ってるんじゃないの?」

「いや、ホントに知らないけどなんか話を聞いてるとそんな感じなのかなって思って」

「すごいじゃない。少なくともアタシはそうよ、他のやり方ももちろんあるんだけど、自分のイメージが取り出した魔力を染めて、自分のモノとして魔法へ創りあげていくイメージで魔法を作ってるわ」

「だから書き換えるのに余分な力を使うと、速さや正確さ、強さとかイメージとの相違とかで弱くなっていくってことか」

「よくできました。花マルあげるわ」

そういって額をつついてくるユン、どんどん上機嫌になっている気がする。俺もそれに乗せられてテンションが上がっていく

「話を戻すわ、そういう理由から結果として生み出される魔法を系統として大別することで、魔法をどこで使うのが効果的かとかが分かる訳、それに人はそれぞれ生まれ持って来る魔力の質に違いがあるの」

「質?」

「そう、例えば火の魔力の扱いが得意な人、例えば土の魔力の扱いが得意な人、逆に火は得意だけど水が苦手な人……みたいにね。それが特化すると火魔法使いとか、水魔法使い、とかを名乗る人もいるわ」

「なるほどね」

「かといって、火魔法使いで水の魔力の扱いが苦手でも、水の魔法が使えないわけじゃない、水魔法使いには追いつけなくても、努力次第で上級者が扱うような水魔法だって使えるから、得意不得意でしかないという人もいるわね」

「ユンは何が得意なの?」

「んー、アタシは火が得意かな、苦手なものは秘密ね」

「秘密?なんで?」

「魔法使いの相手をするのはだいたい魔法使いなのよね、お互いに魔力を奪い合って、魔力で攻撃しあうわけ、そんな時に相手に自分の弱みを知られるわけにはいかないのよ」

「それじゃあ気軽に人に教えるわけにはいかないよな」

「そういうこと、例えばカイが、土の魔法が得意だけど水が苦手だった時に、相手がカイの周りの魔力をほとんど水の魔力に置き換えちゃったらどうなると思う?」

「まともに戦えるかわからないねー」

「そ、強い魔法使い同士の戦いなんてそういうのが当たり前だからね、弱点って言うのは深刻なものになりがちなの」

「よくわかった」

「自分が何の魔力と相性がいいかはギルドで調べることができるから今度やってくるといいわ」

ギルドでそんな説明は受けなかった……けどまぁ俺が魔法を使うとは思わなかった……のか?まぁ冒険者登録についてしか聞かなかったからなぁ。今度フランさんに聞いてみよう。

「さて、あとは一般的な魔法の知識について教えていくよ」

「はいッ!」


 長くても自分に必要なことだと思えばペンも踊るようだ、何の苦もなく勉強出来るこの感覚は久々だなぁ……

「魔力と人とは相性があるって話をしたけど、魔力同士にも相性があるの。それも組み合わせによっては膨大な結果があるんだ、ひとくくりにこれとこれは相性がいい、あれは悪いとはいえないのが難しいところだけど、それでもおおまかには相性の良し悪しがあるわ」

こんどは属性的な話かな?

「これは最初のほうに話した特徴が関係してるわ。例えば火の魔力は『燃焼』『加熱』『放射』『溶解』といったようにアタシは捉えてるんだけど、『加熱』と水の魔力の『冷却』って正反対なものは共存しにくいの」

「共存できない、ではないんだ?」

「できないことはないけど、基本的には反発するイメージかな。それでも無理やりくっつけようとすると魔力が異常な形態になることがあるみたい。イメージとは全く違う結果を及ぼすし、それがどんな悪影響を及ぼすかも全く予想出来ないからやらないほうがいいね」

「なるほど、肝に銘じておくよ」

「逆に言えば、相性のいい組み合わせもある。基本的にはイメージが先行して結果を作るから、あんまり意識しなくてもできちゃったりするんだけど、例えば初心者がよく教わる『土の槍』を使うと、地面から土の魔力を集めて槍を突き出すんだけど、ここに『拡散』の性質がある風の魔力を組み合わせることで沢山の槍を生み出すことが出来るの。単純に沢山の土の槍をイメージするのと違って、土の魔力をあんまり使わなくても同じだけの結果が出せるようになるのよ」

「へぇ……」

「この性質も、この魔力にしかないって言うものもあれば、あの魔力にもこの魔力にもある性質、なんてのもあって今日じゃ説明しきれないから、自分で魔法が使えるようになったら沢山研究してみて。ここまで質問は?」

「性質をイメージで上書きすることって出来るのかな?」

「……どうだろ。すごく珍しい考え方するねぇ」

「それもやってみてのお楽しみか」

「そんなこと考えたこともなかった……」

そう言うとユンは思考を初めしばらく何も言わなくなった。ひとまず今まで言われたことを紙にまとめた。


 今までの話をまとめ終わった所でユンも考えをまとめたようだった

「今までの話は分かった?」

「うん、大丈夫」

「それじゃあ実践に移ろうか」 

ついに来たか……ちゃんと出来るだろうか。こればっかりは理屈でわかってても無理かもしれないと思うと緊張が走る。

「そんな緊張しなくても大丈夫、カイはギルドカード持ってるでしょ?」

「うん、冒険者だしね」

「ギルドカードのステータスを見る機能も魔法だから。それが出来るなら少なくとも魔術を扱うことは出来るよ」

「言われてみればそうか……」

「さ、とりあえず体内の魔力の制御からやってみようか」

そう言ってユンは俺と向い合って俺の手を取った

「目をつむって私の手に意識を集中して」

言われたとおりに目をつむり意識を集中する。何かぼんやりとした温かい力を感じる……ような気がする。

「なにか感じる?」

「なんかぼんやりしたモヤモヤを感じる……」

「おっけー、じゃあちょっとカイに魔力を流すよ」

そう言うと手先から血管をめぐるように何かが俺の体を満たしていく。これが魔力か……

「今体の中に入ったのが魔力、カイ。その魔力をこんどはアタシの方に流してみて」

「イメージ……イメージ……」

自分の血液が体を巡るように、心臓で混ぜ合わせるイメージを持つと温かい魔力が心臓でとどまった。そのまま両腕を通してユンに流しこむ……

「そう、上手い上手い。やっぱりカイは筋がいいね」

どうやら成功のようだ、少し安心した……

「次はカイの魔力をアタシに渡してみて」

俺の魔力……ってどこにあるんだ?

「魔力ってどうやって出すの?」

「それもイメージよ、カイの魔力はカイの中のどこにでもあるから、自分が取り出しやすいイメージで出して」

むむ……自分の体の細胞一つ一つの魔力を……そこから溢れ出るように……体に、血液に溶けるように……。集中するとだんだん心臓のあたりが熱を帯びるような感覚が沸き上がってくる。これをさっきと同じ要領でユンに流す……

「よろしい、よくできました」

目を開けて気持ちを落ち着かせる。なんかどっと疲れた気がする……

「疲れた?」

「ああ……なんか疲れた……」

「魔力っていうのは生命力みたいなものだからね、気力って言ってもいいかも。使いきっても死にはしないけど、体にあるエネルギーが枯渇したら疲れるし、動きも思考力も鈍るからね。それに魔力の扱いも慣れないと無駄が多い」

「なるほど……仮に筋は良くても土台がゼロじゃダメってことか……」

「そういうこと、魔力の総量は筋肉と同じで、使い続ければだんだん増えていくし、体の方も激しい魔力の移動や消費に耐えられるようになってくるからね。毎日魔力を扱わないと魔法を使えるようにはならないってところかな」

「ちょっとだけもっとすんなり行くかと思ってた……甘かったね……」

「もうやめとく?」

「まさか……まだまだやるぞうぉぉぉぉぉぉ」

声が尻すぼみで小さくなっていく

「体がついてこないんだからしょうがない、とりあえずお昼休憩にしようか」

「ふぁい……」


 昼食をとった後1時間くらい昼寝をした。体と精神を休めないと午後はまともに魔法の修練は出来ない……

「はい、そろそろ起きろー」

そう言いながらユンがぺちぺちと頬を叩く、目覚めは悪くない。伸びをして体を回す……さっきの気だるさはもう無い。

「うん、大分元気になった。ユン、続きをお願い」

「よし、それじゃあまた説明と実践をやっていこう」

そう言って二人で外の少し開けたところに移動した。紙束とペンも忘れずに持って行かねば。

「じゃあまずは……カイは何の魔法が使いたい?」

「んー、これといって何魔法使いになりたいとかはないかな、強いて言えば全部?」

「大きく出たねー、まぁその意気でないとね。じゃあ何でもいいか、とりあえず水の玉を出してみよう」

「水か……イメージと魔力を……」

目を閉じ、心を落ち着けて……さっきみたいに細胞の一つ一つから魔力を取り出す。心臓のあたりに魔力が溜まってきたのを感じ、次に水のイメージを想像する……大きさは野球ボールくらいで……魔力を腕に通し、手のひらを出る時に水に変わるイメージ……必要な分を手から出したら手の上で丸く……

「はいオッケー。よくできました」

そう言われて目を開けると自分の手のひらの上には想像していた通りの水球が浮かんでいた。

「おお、できた!」

そう言った瞬間に水球は弾けて消えてしまった。手に冷たいしぶきがかかる、本当に水なんだ……

「集中を解くとそういうふうに形を保てなくなるからね。慣れてくると集中してなくても操れるようになるけど、魔法を使うことは手を使うことや、歩くこと、息をすることと同じように当たり前で無意識に出来るようになったらの話だから、まだまだ先は長いよ」

「それでも感動しちゃったよ……俺も魔法使えるんだ……!」

微笑ましげにユンがこちらを見ている

「成長が早くて教えてる方としても楽しいよ。ホントは今日のうちにここまで出来ればいい方かなって思ってたくらいだし」

「そう言われると嬉しいな。褒められて伸びるタイプだからもっと褒めて」

「もっと伸びたら褒めてやるよ」

「どんどん伸びて褒め疲れさせてやるよ」

「そりゃ楽しみだ」

「次は何をすればいい?」

どんどん先に進みたい、早くいろんな事ができるようになりたい……!

「次は自然にある魔力を使って魔法を使ってみようか」

「そうか、今のは自前の魔力なんだっけ」

「そう、自分の魔力を消費してずっと戦ってたらすぐに枯渇しちゃうからね」

「確かに、それで……どうすればいいんだろう?」

「慌てないの、ちゃんと教えるから。まずは世界に魔力があるっていうのを実感するところから始まるんだけど、カイは魔力を感じることはできる?」

「さっきユンの魔力を感じたみたいに……?」

「こればっかりは感覚的なもので説明しにくいからなぁ……今カイが立ってる地面にももちろん魔力があって、その流れを受けているんだけど、それを感じてみよう。いろいろ試してみな」

うーむ、何をすればいいんだろう。自然と一体化?座禅でも組んで悟りを開けばいいのだろうか……ひとまずあぐらをかいて地面に座ってみる。日光がぽかぽかと暖かく、ときおり吹く風が気持ちいい。地面はしっかりと自分を支えてくれている、そんな気がする。しかし、特に地面の魔力を感じるわけでもなく、今ひとつピンと来なかった。しばらく色々やってみても何一つ進展がないのでヒントを求めることにした。

「ちなみにユンはどうやって魔力を実感したの?」

「アタシは魔法使いを目指した頃からそういう物だって教えられてきたし、それなりに魔力を感じることができたから魔法使いを志したってところもあるからねー。参考にはならないんだ、ごめんね」

「謝ることじゃないよ。うーむ、魔力……魔力か……」

わかんなくても取り出せたりしないんだろうか……全身に飢えたイメージを纏わりつかせ、周りから魔力を手繰り寄せ、自分のものにするイメージで……お、何かが……集まってくる気がする……

「ちょっと!カイストップ!ストップ!」

ユンが慌てて俺を呼んだ。何かやらかしただろうか

「ごめん、なにか失敗した?」

「失敗っていうか……魔力があるかどうかわからないって言ってたくせに凄まじい勢いで魔力を吸収しだしたからびっくりしたの。ちょっと立ち上がってみて」

言われて立ち上がり、ユンの指さした所……さっきまで自分が座っていた所を見ると、自分が座って地面に触れていたところがその形に変色し、草は枯れ果てていた。

「え……これ俺がやったの?」

「そう、この世の全ては魔力でできてると言っても過言じゃない、それだけに必要以上の魔力を吸い出すと自然はそうなるのよ」

怖ろしい……ライフドレインもいいとこだ、ぶっちゃけて言えばこれを極めるだけでそこいらの命を刈り取って歩くこともできるってことか。

「まだ制御ができてないからしょうがないけど、なるべく必要な量を必要なだけ、それもあらゆるものから少しづつもらうイメージを常に持たなきゃダメだよ。そうでないとすべてを飲み込んで滅ぼすことになりかねない」

「肝に銘じておきます……」

「まさかこんなに吸収が得意だとは思わなかった。それでどう?実際吸収してみて魔力があるのを感じ取れた?」

「結果としてはあるのは理解できたんだけど、感覚としてそこにあるな。っていうのはまだわからないかも」

「まぁ修練を積めばそのうち分かるようになるでしょう。今のところは吸いすぎないように手広く浅く集める事を覚えることのほうが急務だね。まぁでも魔力の扱いについてはこんなところかな、吸い取った魔力を自分の魔力と混ぜて、イメージとして打ち出す。もっと感覚的に理解できるようになれば、アタシの言ってた特性とか性質とかも理解できると思うよ」

「なるほどね……ひとまず今集めた魔力と自分の魔力、それにイメージを……」

もう一度野球ボール程度の水球を出そうとしてみる……さっきとは比べ物にならない魔力が胸にあるのを感じる。そこに水球のイメージを……、え? 野球ボールの大きさのイメージを創りだそうとしているのにどう頑張ってもイメージが固定できない、それどころか勝手に水のイメージが膨れ上がっていく、それを止められない!

「あー、やっぱりこうなったかー」

そう呟きながらユンはさっさとカイから離れた、止める気はないようである。

「これヤバイんじゃ……!ってユンがいねぇ!」

目をあけると頼みの綱が消えて無くなっていた、周囲を見渡すとだいぶ離れたところにユンがいた。

「もう多分手遅れだから諦めてぶっぱなしちゃえー。多分死にゃしないよー多分ー」

めちゃくちゃ物騒なことを多分マシマシで叫ばれてしまった。諦めて魔力を右手に向かって打ち出した。すると手のひらからプール1個分はあろうかという水の塊が空へ向かって打ち出され、今度は霧散せずにそのまま落ちてきた。ああ……魔力ってしっかり集めると集中力は関係なく形を成すんだなぁ……と、落ちてくる水塊を見ながら実感した。


「大丈夫かー?派手にやったねぇ」

「な……なんとか」

水塊が地面に着弾すると、水は激しく広がり俺を押し流した。丁度後ろに路地があったため勢い良く流されるだけで済んだが、これが壁とかだったら頭を打ってDEAD ENDだったかもしれないと思うと恐ろしい。びしょ濡れのまま立ち上がり、怪我がないことを確認する。うん、体は大丈夫だ。かなり気怠いけど……

「まぁ魔法に関しては大体これで基本は終わりかな。あとは魔術に関しての基礎を叩き込んだらアタシの仕事は終わり」

「よろしくお願いしまーす……」

ユンの家に戻り、入り口の所で風魔法を使ってもらい、ある程度の水分を飛ばしてもらった。体温も大分下がってめちゃくちゃ寒い……

「魔力を熱に変換するイメージがあれば体を温められるよ。なんでも実践! あ、でも周りから魔力集めてやらないでね、流石に目の前でカイが自爆したら嫌だし」

目の前じゃなきゃいいのか……それにこんなところでウルトラダイナマイトを炸裂させる気はない……俺だって死因が自爆はゴメンだよ……それでもこのままだと風邪をひいてしまいそうだ。自分の魔力で体を温める……暖かい毛布に包まれたい……そんなイメージで体を覆うと少しづつだが体が温まった。魔法マジ便利……

「そんじゃあ魔術の基礎、魔石の作り方を教えるね。質問はあるだろうけど、ひとまず最後まで話し終わったらにしてね」

「ふぁい……」

「魔石の元になるのは主にマテリアルだね、宝石が一番よく使われるんだけど、別に金とか銀とかの金属とかでも出来るよ」

ユンが暴発前に紙束を回収していてくれたおかげでメモが取れる。

「魔石を作るには段階の手順を踏むの。まずは対象となる宝石か金属を用意する、次にその対象から、発動する魔術に必要な分の魔力を取り出す。その取り出した魔力にイメージを混ぜあわせて、また魔法石に戻す。この時に、魔力を流し込まれるとこの魔法が出る。っていうイメージも加えないとダメね。そして最後に固定をイメージして魔力で覆うの」

メモをがりがりと取る。要するにマテリアルのメモリを上書きするんだな……

「魔石と魔法の関係についても説明しとくね、宝石が魔石としてよく使われるのにはそれなりに理由があるの、さっき点火の魔石を使ってもらったけど、あれはルビー。ルビーは火の魔力が多いところに出来やすい宝石で、火の魔力を含んでいることが多いの、それだけに火の魔術に使われることが多いし、火の魔術に使ったほうがルビーとしての真価を発揮しやすいってところね。別に火の宝石はルビーだけじゃなくて、もっと色々あるんだけど、代表的なものではルビーがあるって感じ」

なるほどねー。この世界が宝石だらけっていうのはもう胸がときめいちゃうなー。しかも元いた世界と違って掘った後の復活も早いときたもんだ。ぱねぇ

「ざっと言えばこんなもの、質問はある?」

「んー、魔石を作るときに取り出した魔力より大きい魔力を流しこむことは出来る?」

「出来ないこともないけど、マテリアルによって限度があるわ。限度を超えて流し込むと変形したり爆発したり……まぁさっきの水魔法みたいなことになるかな」

「了解……てことはすごい魔石は元々がすごいマテリアルでないと作れないんだな」

「まぁそういうことね。この世界はいたるところに宝石も鉱石も生まれる場所があるけど、それでも容量の大きいものっていうのは珍しいからより高値で取引されることになる」

「なるほどねー、二つ以上の宝石とかを使って一つの魔術を発動することは出来る?」

「結論から言えば出来る。でも今日教えたやり方では無理ね、しかるべき機関で魔法文字や精霊文字を刻印した魔具があって、そこに魔石を組み合わせることでやっと出来るようになるの」

「気になってたんだけど、精霊文字ってことは精霊がいるんだよね」

「そりゃそうよ。ん、もしかして精霊を知らない?」

「実は……」

「精霊っていうのは簡単に言えば魔力の系統ごとにいる魔力の元締めっていうかボスっていうか、そんな感じね。詳しいことはソフィに聞くといいわ」

魔法もあって精霊もいると……うーむファンタジック。精霊と契約して召喚とかもできちゃったりするんだろうか。

「さて、ここでまた一旦休憩ね。疲れたでしょうし、また少し寝てきなさい。起きたら魔石作りに挑戦してもらうから」

「了解ッス!」

ユンの部屋の端っこを借りて横になった。横になると疲れがどっと溢れ出し、すぐに眠りに落ちた……


「はい、おきてー」

デジャヴュか……?前もこんなことがあったような……

「さー、魔石作りやるよ。しっかりしてよね」

ああ、そうか。昼にも寝てたんだからデジャヴュじゃなくて同じなんだよな。だんだんと意識がはっきりしてきた。一日に何度も魔力を枯渇させると体に悪そうだ……気をつけよう。

「目は覚めた?それじゃこれ持って」

ユンは消しゴム程度の小さなルビーを取り出し、渡した。

「最初に渡した点火の魔石を作ってもらうよ。やり方の説明は覚えてる?」

「うん、マテリアルの中身を取り出して、イメージと混ぜて流し込むんだよね」

「おっけー、やってみて。まだ魔力の量を調整する訓練をしっかり積んでないから、もし魔力を込めすぎたと思ったらすぐに窓の外に投げ捨てて。まぁこのサイズなら爆発してもやけどくらいで済むと思うけど」

さらっと怖いことを言うよなユンは……。まぁ魔法っていうのはそんなもんなんだろう、攻撃に使うことも多いなら怪我をすることだって多くても何も不思議じゃない。

「了解……」

まずはルビーから魔力を取り出す……燃えるような魔力が留まっているのを感じる……気がする。それでも取り出した魔力の量で言えば最初に作った水球のおよそ6倍くらいはあるだろうか?サイズと比較するとかなりのエネルギーだ……。この魔力に点火のイメージを……ライターみたいなイメージでいい。魔力を少しづつ消費して火を作り出す魔石。イメージの中でライターが明確に浮かび上がる。魔力を貯める部分を用意して、流し込まれた魔力を火打石として使い、吹き出し口に火を灯す……なるべく機構を正確に、魔力がどう流れ、どう使われ。どう変化するのかをしっかりイメージする。いや、むしろそういうふうにイメージが誘導されている感じすらある。なんとなくだがこれはイケる!そういう感触がある。この魔力をルビーに溶かし込む……ルビーの隅々に、イメージがぴったり収まる。そんな感覚が指先からルビーにかけて伝わっていく。魔力を吸い出したことで若干くすんでいたルビーがその透明度を取り戻し、ほんのり輝き出している。

(ホントに初めてなの?なーんか知ってるべきことを知らなかったり、難しいことを簡単にこなしたりでよくわからないなぁ、カイって) そんなことを考えながらユンが見守っているとは知る由もない。

魔力がルビーと混ざりきった、それを感覚で捉え、自分の魔力でコーティングをするイメージでもって固定化を完了させた。ここまでのカイの魔石作成技術は一般の見習いの魔石制作の手際をはるかに超えた安定感と精度であった、それだけにユンの疑念は当然だろう。カイが元いた日本、そこでの科学技術や、教育で培った科学の知識がこの世界における魔法、魔術の理解にほど近いものであり、そのせいで何も知らないはずのカイが驚くべき精度で魔石を完成させたことを理解できるはずもなかった。

「多分出来た!」

「ん、見せて」

ユンに魔石を手渡す。ユンが魔力を通すと、綺麗なライター大の火が灯った。よかった……成功だ

「ホントによくわからないねー、カイは」

「え?」

「全然素人なのに感はやたらいいし、魔石作りはすごく上手みたい」

「え、魔石は上出来?」

「そこいらの見習い魔技師よりは断然いい魔石ができてるよね、どんなイメージで作ったの?」

「うーん。なんかこう、火をつける仕組みとか、魔力はどう流れるのかとか。想像上で、あってるかわからないけどなるべく細かくって思ったらこうなった」

「ふぅん……ま、使えないモノつくるよりはわからなくても良いモノ作ったほうがいいに決まってるしね。これでアタシが教えてあげるのは全部終わり。この魔石は卒業祝いにあげるよ」

そう言ってユンはルビーをくれた。

「ありがとう。すげー楽しかった」

「こちらこそ、いやー、カイもう冒険者やめてアタシの助手にでもならない?」

「コラコラ、なに勝手に勧誘してるの」

いつの間にか入り口にソフィがいた。

「ありゃ、タイミング悪いねーソフィ」

「むしろベストタイミングよ……勝手にコンビ解消させないでくれる?」

「ソフィは今日の用事終わったの?」

「うん、思ったより早かったから迎えに来た、どう?魔法少しは覚えられた?」

そこから今日のおさらいをかねて出来るようになったことをひと通り説明した。ソフィも習得の早さに驚いていた、こんなにあっさりと合格点が出るなんて俺もぶっちゃけうれしさより不安が先立つ……でも魔法を使う二人に認められたのだから喜ぶ以外の選択肢もない。


 後から聞いたのだが、ユンがこんなに小さいのは以前魔法の開発をしていた時に無茶をした結果、体が小さくなったらしい。ぶっちゃけると禁忌に近い魔法に手を出したとか何とか……ユン曰く『アタシはもともとボンキュッボンで美人で……』 お、おう。って感じだが、元に戻るための魔法を研究していて、それを実行するために助手が欲しかったんだとか。術式が完成したら喜んで手伝わせてもらおう。実験台になるのは嫌だが……


 振り返ってみれば濃密な一日だった。メモももう5〜6回は読んだし、大分頭にも入った。明日からは時間を見つけて魔法の修行も始めよう。いつかはエレメンタルマスターなんて呼ばれるように……ふへへ。 その夜寝る前の妄想は大分暴走していたのだが、この妄想力も魔法を形作るためには有利に働く要素であるのは言うまでもない。


こんな話の動かない作品ながらもお気に入りに登録してくださっている方がいらっしゃることに励まされています。

話を動かすために完全な下地作りをしたい、と思ってしまったら当初の予定よりはるかに濃密なチュートリアルになってしまいました。


まだ全然話は進んでいませんが、感想・ご意見・ご指摘はいつでもお待ちしております。

今後ともこの作品をよろしくお願いいたします。

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