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Beautiful WorldLife  作者: 天路周東
序章 チュートリアル
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第六話 ミール討伐、そして

 初めての討伐依頼はサフラノの森の手前の丘陵地帯で農家をしているおじさんからのものだった。最近流れてきた野良ミールの一家が作物を定期的に荒らしに来るというので討伐して欲しいという非常によくある系の依頼である。

農家の依頼といえばこれに尽きるレベルでこれな気がする。まぁ仕事の邪魔する奴をとっぱらえはどこも一緒か。輸送屋なら盗賊をおっぱらえになるだろうし、海路なら水棲生物の討伐になるだろう。それで言えばやはり農家なら作物荒らしを倒してくれって言うだろうな。

ミールは突進と大きめの牙が脅威だが、正面に立たないように気をつければあまり危険ではないということだが、生体が2頭、幼体が5頭、生体に挟み撃ちにされなければ特に問題もないだろう、と予想する。

しかし、生まれてこの方動物を狩ったことなんてない、やったことがあるといえば虫か、もしくはゲームの中だけだ。ポヨは蹴り飛ばしたら煙になって消えてしまったが、さすがに動物ではそうは行かないだろう。返り血とかもあるだろうなと思うと流石に気が重い。それに7頭も食べれない……


「さ、そろそろいこっか。ミール狩り」

ソフィの準備が整ったようだ。動きやすそうな軽装で、先端に宝石が埋め込んである直杖を持っていた。俺の方の武器はとりあえずナイフを腰に指しているが、必要となればピッケルの方で戦うかもしれない。カバンに飲み物や弁当、ピッケルなどを詰め込んでいく。やはり魔法のカバンなだけあって何がすごいといえば、中に入れたもの同士で干渉することがないというのがすごい。たとえば水筒は運が悪ければ蓋が開いて中でだばぁしてしまうような気がする形状なのだが、鞄の中であれば他のものとぶつかることもなく、もちろん振動などで開くこともないらしい。どんなに激しく動いても問題ないとなれば、冒険者としては必須のアイテムだろう。


 サフラノ丘陵に着くと、依頼主である農家のおじさんがやってきた。

「君たちが依頼を受けてくれた冒険者かい?」

「はい、私達がその冒険者です」

「そうか、くれぐれも気をつけて討伐に望んでおくれ」

「はい、ありがとうございます」

討伐系だもんな、怪我をすることもあるだろうけどその可能性は十分覚悟の上だ。

「ん? 違う違う。畑を君たちが荒らすなんて事のないように頼む」

あ、ああそういうことか。まぁ確かに畑にミールがやってきて、そこで戦闘すれば荒らしてしまうなんてことも考えられるな。

「了解しました。注意します」

「ああ、頼んだよ」

そう言い残しておじさんは何処かへ行ってしまった。うーむ、なんていうかドライな感じもまた新鮮である。

「なんでありがとうって言ったの?」

ソフィが不思議そうに聞いてくる。

「いや、気をつけてって俺達の怪我とかそういうのに気をつけてって言ってくれたのかと思っちゃって」

「ああ、なるほどね。そんな人滅多にいないよ」

「え、そうなの?」

どうやら冒険者というのは定住しない流れ者のやることだという見方をする人も多く、金さえ払えば誰かしら仕事をしにくるものだと思われている節もあるようだ。まぁその通りではあるのかもしれないが……まぁ便利屋みたいなものと思われてもしょうがないか、特に低ランクのうちは仕事の重要性も比較的低いものになってしまうし。世知辛いなぁ、どこもかしこも。

「まぁ、別に悪気があるわけじゃないからね。冒険者なんてって言ったらアレだけど、冒険者なんて初めの扱いはそんなものよ。依頼する側にとっては使える冒険者かどうかわからない事も多いしね」

「そっか、まぁ冒険者の扱いはともかくとして。俺たちはゆっくりでも確実に強くなっていこう」

「もちろんよ。頑張らないと置いてっちゃうからね」

わぁ怖い。おんぶに抱っこじゃいられないね


 畑を見張り始めてからしばらくした頃、丘の上に討伐目標であるミールの群れが現れた。とりあえずは正面に立たないように気をつけよう。

「とりあえず私が牽制で魔法攻撃するから、カイは突進されないように気をつけながら攻撃してね」

事前の作戦ではこんな感じで話を進めた、まだ連携を取りながら戦うと言ったことは無理だし、もちろん魔法が俺に当たるってこともあるかもしれない。さすがに死因がソフィの魔法というのは勘弁だ……

「それじゃあいくよっ『土の槍(ソイルスピア)!』」

ソフィの杖先の宝石が光り、土気色の不思議な文様を描くとミール達の足元から5本ほどの土の槍が飛び出した。1本は子ミールの腹に直撃し、勢いで吹き飛ばされたミールはそのまま転がり動かなくなった。わーお、さすが魔法……マジこええ。その他の数本はミール達にかすり、傷を負わせた。攻撃され傷を負ったミール達は俺たちを敵と認識し、襲いかかってきた。やはり野生動物なだけあって速度は結構なものだ、自転車で頑張って走ってる時くらいの速度はあるがほぼまっすぐしか走れないとわかっていれば避けるのは難しくもない。

「おりゃっ!」

早めに避け、ナイフを横向きにして走る親ミールの横っ腹に突き出す。肉に刺さる感触があり、ナイフが持っていかれてしまった。そ……そりゃそうですよね!そんな普通のナイフ一本で華麗に切り裂いて終わり!になるわけないよね!やっぱゲームとは違うわ……ゲームじゃ攻撃を当てたら肉に食い込む剣なんてなかったもんなぁ……走り抜けたミールが旋回してソフィへ向かって走る、その横腹には見事に突き立ったナイフが。

「ちょっとカイ!ナイフ刺さってるよ!大丈夫なの!?」

「ごめん!ピッケルで戦う!」

即座にカバンに手を入れバトルピッケルを取り出す。ソフィも華麗にミールを(かわ)しながら杖で打撃を加えている。殴ってもいいんだ……丈夫な杖だこと。バトルピッケルは片方が尖っていて、もう片方は金槌のように平たくなっている。ていうか金槌だ、バトルハンマーと呼んでも何も差し支えはない。先ほどのミールとは別の親ミールが俺に向かって突進してくる、俺はその頭に目掛けて横ステップからのフルスイングを繰り出した。明らかに何かを砕くような感触に若干顔を(しか)める

 ンギィ!

とでも表現すべきか、悲鳴をあげながらミールはバランスを崩し倒れた。へへ、鉱石を掘って鍛えたフルスイングは効くだろ?などと内心キメてみる。もちろんまだ安心はしてない、逃げ出した子ミールを討つためにソフィが走りだした。俺はもう一匹の親を相手してソフィが狙い撃ち出来るようにしなくては、ざっと周りを見渡すとちょうどこちらに向かってミールが走ってきていた。これもすれ違いざまに額にフルスイングを入れる、その一撃はミールを討伐するのには十分な威力を持ってその生命を刈り取った。


 念の為に二匹の親ミールをつついて討伐完了を確認する、片方が少し動いてビビったのは内緒だ。ナイフも回収しておかなくては……

「カイー!こっちは終わったよー」

そう言いながらソフィが歩いてくる。

「お疲れ様ー、こっちも大丈夫ー」

初めての討伐はなんの問題もなく完了することができそうだ。きちんと畑からは離れて戦ったために、踏み荒らされてもいない。

「さ、さっさと討伐部位とっちゃおう」

そうだった、えーと、こいつらの牙を取ればいいんだっけ

「部位って、完品でないとダメなのかな?」

「ん?っていうと?」

「いや、こいつらの牙取るのに綺麗に根本からナイフとかでえぐり出さないとダメなのかなって」

「ああ、見えてる部分で折っても大丈夫だよ。さすがに戦闘中に落ちた欠片みたいなのはダメだけど」

そう言いながらソフィはハンマーを取り出して手際よく牙を折っていった。俺も部位収集用の小道具用意しないとダメだな……ハンマーとか、糸鋸(イトノコ)とか、ペンチみたいなのもあるんだろうか?

「よし、これでおっけー。あとは子ミールここにあつめて、欲しい分のお肉取ったら帰ろう」

「死体は放置しててもいいの?」

「うん、気になるなら燃やしていってもいいんだけどね。殆どの場合は他の生き物の餌になったり、魔力に還ったりするから」

「魔力に還る……」

「そ、生物としての役目を終えたものは魔力に変わって世界の一部になるの」

「へぇ……無駄がなくていいことだ」

「まぁその過程で逆に魔力が溜まっちゃって魔物になる時もあるんだけどねー」

「それなら処理しといたほうがいいのでは?」

「うーん、あんまり魔物がいなくなっても世界のバランスが崩れるって聞いたからなんとも言えないなぁ」

「なるほどね、面倒くさいだけじゃなかったのか」

「ちょっとカイ!私のことどれだけものぐさだと思ってるの!」

「ごめんごめん」


 二人で手分けして結構な量の肉を取り、いつの間にかソフィが取り出していた布に包んでカバンに突っ込んだ、流石に生肉を血も滴るいいお肉のまま突っ込むわけには行かないよな。俺も新品のカバンに生肉をInするのは勘弁して欲しい。流石にファンタジーなこの世界にサランラップとかはないよなぁ……小分け用のビニール袋とか……ううむ、改めて便利だったんだなぁと感じる。

「さ、終わった終わった。報告しに帰ろう!」

「この場合は……さっきのおじさん?ギルド?」

「基本的にギルドを通して受けたものは全部ギルドに報告かな」

「そっか、じゃあ帰ろう」

そうして二人並んで歩いて帰った。


 ギルドに戻り、報告を済ます。生肉はマテリアルではないようで買取をしてもらうことは出来なかった。報酬は二人合わせて180ミールだ。こんなもんなのかな?まぁバイトみたいなもんだしな。これで生計を立てようと思うと毎日やらないと無理だな……今は若干余裕があるけども、これなら毎日鉱石掘りのほうが儲かるといえば儲かるなぁ……

「ソフィ、次の依頼どうする?」

「うーん、明日はちょっと用事があるのよね」

「そっか、じゃあ休養日だな」

少なくともミールを倒したくらいで俺が他の依頼を受けて完遂できるようになったわけがない、明日は暇になるな……あ、そうだ

「ねぇソフィ、ソフィの持ってる本の中に魔法入門とかってない?」

「ん?入門は……ないこともないけどカイが読んで分かるかなぁ……魔法使いたい?」

「もちろん!だから本とかあれば読みふけっておこうかなーと思って」

「んー、んー……」

そう言うとソフィは突然何かを考えだした。と思ったら何か葛藤しだした。なかなか見てて楽しい

「わかった、明日は私にまかせておいて」

お、おう。一体何をされてしまうのかわからないけど、俺も魔法を習得出来るようになるんだな……ドキドキだ!

「ちょっと準備があるからカイは先に帰ってて、ついでにカバンも借りてっていい?」

「ん、わかった」

カバンをソフィに渡し、二人でギルドを後にした。途中で別れ、俺はなんとなく街をぶらぶらと眺めながらゆっくりと家に戻った。それから程なくしてソフィが帰ってきた。今日の夕飯はミールのステーキと野菜スープだった。ミールの肉は新鮮で美味しかったが、ところどころびっくりするくらい強靭な筋があって綺麗に食べるのは難しかった。その夜、ソフィは机に向かって何かを書いていた。俺はピッケルやナイフの血を落とし、簡単な手入れを済ませてから眠りについた。


 翌朝、朝食を済ませて二人で家を出た。

「で、今日はどこへ連れてってくれるの?」

「んー、私の友達が教えてくれる……と、思う」

「思う!?」

「ちょっとねー、友達ながらなんて言うか……ちょっと人と違うっていうか……」

あーうん、なんかそういう感じなのね。オーケイ、魔法を覚えるためには偏屈ジジイだろうがいじわるババァだろうがぶっ飛び少女だろうがトンデモ少年だろうがなんでも来い!

「着いたよ、ここ。ユンー、来たよー」

そんな話をしながらたどり着いたのがソフィの住む路地裏をぐるっと回った所の路地の奥の小さな家だった。今日の師匠はユン、というのか。気合い入れていこう!

「あーい、おっはよーん」

入れた途端に気の抜けるような声が聞こえた。開いた扉から現れ・・・あれ?扉は開けど人はおらず……?

「こっちだよ少年」

声は下から……と視線を下げると、そこには俺の膝くらいまでの小さな子がいた。多分……多分女の子だろう、ぶっちゃけ見ただけじゃわからん

「この子が私の友達で、今日カイに魔法の基礎を教えてくれる……はずのユン」

「おう、アタシがユンだ!お前がソフィの彼氏のカイか!思ったより普通だな!」

「彼氏じゃないって!なんで皆コンビ組んだだけで彼氏にするかなー」

「えーと、俺がソフィと冒険者コンビを組んでるカイです。この度は魔法の基礎を紐解いてくれるかもしれないと聞いて」

「堅苦しいねー、そういうのいいから気軽にしてよ。アタシそういうのダメー」

「それなら楽にさせてもらおうかな。ユン、魔法を覚えたいんだけど教えてくれない?」

「おっ、話がわかるねぇ。教えてあげてもいいけど、わかんなくても二回は教えてあげないよ〜?」

「おっけーおっけー!一発でモノにしてみせる!」

「いいねぇ!そう来なくっちゃ!そこそこの素質はあるみたいだし、今日でバッチリ魔法が使えるようにしてやんよ!」

俺とユンの身振り手振りを加えた会話はどんどん白熱してゆく。

「カイすごいね……私このノリに慣れるまで少しかかったのに……」

「もしかしてたまーにこういうノリになるのってユンの影響……」

「あ、やっぱりわかる?慣れるとちょっと楽しいんだよね。あ、それじゃあユン、私これからいつものいってくるからカイのことよろしくね」

「あいあい!きっと立派な大魔導師にしてみせるよ!」

「はいはい、それじゃね」

そう言ってソフィは行ってしまった。いつものってなんだろう。

「よーしカイ、それじゃあ早速始めようか!覚えることはいっぱいあるぞー!」

「よっしゃー!頑張るぞー!」

昔は友達とこんなノリで遊んでた気がする……どこかふと懐かしい感覚を覚えながらユンの家に入った。


 ユンの家の中はソフィの家に入った当初よりも壮絶な散らかり具合だった。魔法の勉強を始める前に片付けたい衝動と戦うのが先だった。その衝動をどうにか抑えこみ、ユンの言うとおりにテーブルに付いた。

「早速始めようか。まずは魔法の基礎の基礎、魔力についてから説明を始める!」

そう言いながら俺の前に紙の束とペンが置かれた。メモに使っていいのだろうか、ありがたい。

「今から話すことは自分のわかりやすいようにそこに書いて覚えて。二回は説明しないからねー」

「了解!よろしく!」

そこから猛烈な勢いでの魔法の説明が始まった。俺は全力でメモを取り、頭の中で反芻し、そのすべてを飲み込むべく神経を尖らせた。その姿勢が伝わるとユンはさらに怒涛の説明を続けた。ひと通りの説明が終わった頃には既に日が暮れていた……


あけましておめでとうございます。

実家に戻るとネット環境もなく、投稿が滞ってしまって気持ち的にゆっくり出来ない正月でした。


この次の話は魔法の細かい説明の話になります。設定の類がお好きな方は読んでいただければ、そんなのどうでもいいという方は読み飛ばしていただければと思います。

まだチュートリアル続くの? すいません。続きます……


昨年末に投稿を開始しましたこの作品、今年はなるべく安定した定期更新を心がけたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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