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Beautiful WorldLife  作者: 天路周東
序章 チュートリアル
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第二話 どうしよう

 名前が……思い出せない。なんでだ?確かに俺には日本で生まれ、そこで過ごしてきた記憶がある。余計なことはたくさん思い出せるのに、肝心の自分の名前がわからない、よくよく考えてみれば親の名前も、弟の名前も、友達の名前も何もかも思い出せない。なんで?なんでだ……?


「大丈夫?あれぇ、失敗したかな……」

女の子が心配そうに俺を覗きこむ、とりあえずわからないものはしょうがないからありのままを話すことにした。


「んー、記憶喪失って奴なのかなぁ。でも自分とその周りの人のことだけ思い出せないなんて不思議だねぇ」

「困ったのはそれだけじゃないんだ」

「ん? 他にも何か思い出せないの?」

「いや、実は……」


そこから俺は起きたら森の中で、明らかに自分が生活してきたところとは違う事。起きてから見た景色も町並みも自分の過ごしてきた場所とは明らかに違うことを話すと女の子は

「はぁー、よかった」

と言った。 え、よかった? 唐突に安心されてしまい俺は更に混乱するはめになってしまった。

「あ! ご、ごめん。記憶が無いのによかったってことはないよね。てっきり私がさっき魔法を失敗させて記憶飛ばしちゃったのかと思って……でも話を聞く分にはもしかしたらこの世界じゃない世界から飛んできちゃったのかもね」


やっぱりか……まぁそうだろうなとは思っていたけど、ここは異世界か……帰る方法ももちろんわからない、誰かが俺をこっちに呼んだのか、単なる事故なのか……ん?


「今魔法って言った?」

ファンタジーの定番の単語が聞こえた気がしたので質問してみる。

「言ったよ。魔法、君の世界にもあったでしょ?」

マジかよ……きちゃったよ定番のワード……これは始まったな……!

「いや、俺の世界では魔法ってのは空想で、現実に使える人はいなかったよ。」

「そうなんだ、不便そうだね……。」

「この宝石があると喋れるようになったのはそういう魔法だから?」

「そうだよ。基本的には意思を伝える力を増幅させるだけの魔法なんだけど、

 魔法と相性がいいと翻訳されるようになる?みたい。君も魔法使えるようになるんじゃないかな?」

「ホントに!? うわ俺魔法とか使えるようになってみたかったんだ!!」

ファンタジーの世界に来て、自分でも魔法が使えるようになるかもなんて、これは嬉しいテンプレ展開じゃないか!もうなんか元の世界とかどうでもいいや。いや、どうでも良くはないか、どうでも良くはないが今のところは、この世界をどう楽しむかの方に興味が移ってしまった。

「でもまぁ、そのためには色々勉強しないといけないけどね。君、これからどうするの?」

学校の勉強ならまだしも、魔法が使えるようになるなら勉強なんてこちらから学びに行く姿勢になれる!

「もちろん魔法の修行!」

「いや、そうじゃなくて。行く宛あるの? って話だよ」

苦笑されてしまった。そういえばそうだ。そもそも俺は別世界に来たし一文無しじゃないか。知り合いといえばおじいさんおばあさんがいるといえばいるが、毎晩頼るわけにもいかない。宿屋とかがあればそこで住み込みで雇ってもらえないか聞いてみるか……?などと思考を巡らせていると

「ふむ、まぁ知り合いも一人もいないんだろうし、おじさんの頼みだし、わたしが面倒みよう!」

「へ?」

「わたしが面倒みてあげる。そのかわりいろいろお手伝いとかさせちゃうからね。」

なんという渡りに船。おいおいお嬢ちゃん、アンタ女神かよ……

「ば……バカ///何言ってるのもう」

思わず声に出していたようだ。これは俺も恥ずかしい。


 女の子の家に移動することになり、俺はまた荷物持ちをしながら他愛もない会話を楽しんだ。そういえば、この子は魔法使い見習いで、あのおじさんは親戚のおじさんらしい。メモには言葉が通じないので魔法石を作ってあげて欲しいと書いてあったようだ。というかメモの行き先の女の子とぶつかる自分の運に感謝し、何から何まで世話してくれたおじさんに感謝した。今度何かお礼を手に入れて持って行かないとな。


「さ、着いたよ。ようこそ、我がラボへ!」

「ラ……ラボ!」

どう見ても小屋でした。本当にありがとうございました。今度は口に出さなかったが、完全に顔に出ていたらしい。

「一回言ってみたかったの!もー、君はわかってないなぁ」

結構ノリで生きるタイプらしい。

「あ、そういえば。ようこその前にすることがあるよね。完全に忘れてた」

なんだろう?ボディチェックとか?特に危険物は所持してないが……

「私の名前はソフィ。 ソフィ=ブルーよ。よろしくね」

「よろしく、ありがとうソフィ……ちゃん」

「ソフィでいいわよ。もう子供じゃないんだから」

「わかった、俺は……あー」

「君の呼び名も決めなきゃだし、君の世界のこともいろいろ教えて欲しいし、この世界のこともいろいろ知りたいんでしょう?今夜は……寝れないね!」

他意はないんだろうけどちょっと、ちょっとだけドキっとしてしまった。この子出来る……!

むしろわりと小屋(ラボ)が散らかっており、寝床がない的な意味で寝れなかったのはここだけの話である。

明日はここ片付けよう。お世話になるだけじゃダメだし、むしろこんなとこでこのまま暮らすとか無理だ……などと厚かましい方向に妄想が暴走しだしたのは新しい世界に来たことで興奮していたからだろうか。


その夜は本当に多くを語り合った。誰かとこんなに長い時間しゃべり続けたのは久しぶりだった。

興味深い話ばかりで時間はあっという間に過ぎていった。



 翌朝、目が覚めるとソフィのベッドに突っ伏して寝ていたらしい。

体制が悪かったのか腰がなんとなく痛い。と思いながらソフィを見ると、今もすやすやと寝息を立てて寝ている。無造作にかけられた毛布から覗く素足が素晴らしい目の保養だ。

「んん」

「んがっ」

ホクホク顔で拝んでいたら蹴られた。おはようの一撃を頂いたところですることもないし朝食を作ってみよう。昨夜ソフィの夕飯作りを手伝った時に大まかな台所の配置やら見たことのない食材についても聞いておいた。おそらく……おそらく大丈夫だろう。元の世界とこっちの世界で料理の基本が変わってなければいいが。パンをさっと火で炙り、瓜のような実と豚肉っぽいものを炒めて塩で味をつける。うむ、味は特に問題ない。すごく美味いってこともないが普通のものは作れた。後は卵を茹でて殻をむいて輪切りにしておく。こっちの世界では魔法を使っているため、冷蔵庫の中にでかい氷が入っているのには驚いたが、基本的に元の世界と同じようなもので助かった。基本的な調理器具さえあれば一人でも生活は出来ないこともないな、収入があればだけど。


 ひと通り朝食の準備を整えたあたりでソフィが起きてきた。ショート気味の淡い金髪がところどころハネている。

「おはよう。ソフィ」

「おはよう。」

朝食を勧めると先に顔を洗ってくると言いながら部屋を出ていった。この世界で初めて作ったご飯のソフィの評価はもちろん普通だった。まぁマズくないだけいいか。朝食を食べながら今日の日程について話をすると、ソフィは一日空いているらしい。ちょうどいいのでラボの片付けを提案すると、しぶしぶながら了承してくれた。さすがに毎日ベッドに突っ伏して寝るわけにもいかない。食器を片付けると早速作業を開始することにした。


 ソフィのラボは基本的に本が大量に散らばっているのが原因で狭くなっているだけなので、特に何の問題もなく片付けは始まった。昨日もらった魔法石の効果は素晴らしいもので、全く知らない文字なのに見ただけでニュアンスが伝わってくるような感じがする。これが魔法の力か……と密かに関心すると同時に、必ず自分でも魔法が使えるように努力しよう、と固く決意したのだった。しばらく片付けを続け、本の山を一つ一つ処理していき、あとは3つほどになり終わりも見えた頃には昼を過ぎていた。ソフィがお昼の用意をしに部屋を出て、俺は作業を続けようと山の一つに取り掛かると、山の中からどう見てもパンツとしか思えない布が出てきた。ちょうどそのタイミングで部屋にソフィが戻ってくる。

(ヤバイどうしようこの展開って完全にテンプレじゃないですか部屋に戻ってきたら昨日あったばかりの男が自分の下着(おそらく)を持っていたら確実にビンタか悲鳴か追い出されるかあるいはそのコンボかが待ってるに決まってる。しかしポケットに隠すと更に後からテンプレが待ってるに決まってるどうしようひとまず山の中に戻してソフィにここを担当させようそうだそうしよう)

この間、約1秒のことであった。

「お昼できたよ。休憩にして食べよう」

「あ、ああ。ありがとう」

ひとまず事なきを得た俺はソフィの料理を再びごちそうになった。俺は食事のペースがソフィより遅いので、ソフィには先に片付けをすることを勧め、俺は昼の食器の片付けを申し出た。ソフィも同意し、また片付けをしに部屋に戻っていった。

(ふふふ……計算通り……!)

ソフィとは片付けを始めた時から、部屋の奥から順番に山を何とかしようと提案してそのとおりに片付けを行なってきた。そのルールに則ればソフィが次に片付けるのはあのパンツ山である。俺が発見してしまうよりもソフィが見つけて片付けてしまえば何の問題もなく片付けは終わる!

そう考えながら食器を片付けていると、不意にソフィから声がかかった。

「ねぇ……まさかとは思うけど、キミって下着泥棒とかそういう感じ?」

この子……素晴らしく察しがいいな!それも悪い方に!! 置き忘れじゃなくて俺がやったと読んだわけだ!

「いやいやいや、それはソフィが置きっぱなしにしたものだろう!俺は俺がそれを片付けるわけにはいかないから……あ」

完全に口を滑らせた事に気づいてしまった。ソフィは山の中に下着があったとか、そういう状況的な話は何もしていない。その後ソフィの若干理不尽なお説教を頂き、家を追い出されてしまった。と、言っても二度と戻ってくるなとかそういう話ではなく

「もう!残りは私がやるから街を見学でもしてきて!」

と、お散歩を命じられたのだ。まぁ俺としてもこの街は見て回りたかったのでちょうどいい。


時間にすればまだ2時かそこらだろう。俺はソフィの家の位置を確認して歩き出した。



1話がだいぶ短く感じたので少しボリュームアップしました。

1話毎にどの程度の文章量がちょうどいいのでしょうか……

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