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Beautiful WorldLife  作者: 天路周東
第一章 誇り高き血脈
13/34

第十二話 黒の魔手


 今日も元気だ飯が美味い!

「ふふふ、お粗末さまでした」

シスターが微笑む、教会の食事ってどんなものかなーと思っていたのだが、特に代わり映えもなくパンとスープだった。 タダで食う飯は美味いぜ……!実際お布施は100カラーほどさせてもらったからタダではないんだけどな。

「さーて、とりあえず昼にルカが来る前に……」

「あ、カイさんすみません、ちょっと手伝って欲しいのですがよろしいですか?」

「あ、はぁい」

何がはぁいなのか。 シスターの手伝いで結局昼間で荷物運びやら倉庫の整頓をしていた、結局手紙をお願いすることは出来なかったなぁ……。なるべく早く書いてソフィに届けてもらわないといけないんだけどな……うーむ……


 昼食を頂いているとシスターが来た。

「カイさんにお客様ですよ」

「あ、ありがとうございます。ついでみたいでアレですけどごちそうさまでした」

「はい、お出かけですか?」

「ええ、ギルドで依頼を」

「そうですか、お気をつけて」

笑顔で送り出してくれる、うーむシスターの笑顔も癒されるなぁ…… 教会の聖堂の奥の方から中庭を通って裏手の方で寝泊まりさせてもらっている、出かけるときも帰ってきた時も聖堂から中庭を通るルートしかない、この中庭がまた綺麗で幻想的なんだよな。神様がいてもおかしくない、そんな事を考えてしまうほどだ。 聖堂に入ると綺麗に並べられた長椅子の一番前にルカは座っていた。

「おはよう、ルカ」

「あ、来たね。 おは……こんにちは?」

「まぁ確かに昼だけどさ」

「じゃあこんにちはでいいじゃない」

「俺が昔いたところだと一日のうち最初にあったらだいたいおはようだったんだよね」

「ふーん、じゃあいつからこんにちはになるの?」

「うーん、昼過ぎ?」

お前は頭大丈夫なのか?という目で見られてしまった。そりゃそうだわな

「なんて言うんだろうな、こんにちはっていう挨拶はむしろ他人行儀だったんだよ。だから挨拶と言えばおはようでほとんど事足りてた、仲間なら日中になったら「よう」とか「おっす」とかだったし」

「なにそれ、変なの。あいさつくらいちゃんとしたほうがいいよ?」

大変ごもっともでございます。こうして言われてみれば確かに変かもしれない、けどそういうもんだったしなぁ……

「ま、それはともかくギルドへれっつごう!」

そう言ってルカは跳ねるように出て行ってしまった。元気だなぁ…… こうなんか元気な様子を見せられると落ち着きたくなるのは歳だからだろうか……若いっていいね


 ギルドに着くとケインとネルがいた。二人も依頼を受けに来たらしい、寄り添うように依頼の一覧を眺める姿はなんかこう……甘い空気を漂わせていた。

「おっ、お二人さんもお仕事?」

ルカが声をかけると二人同時に振り返り微笑んだ。これは熟年のそれだな……などと考えていた。

「ああ、ルカ。そっちも今日からもう依頼受けるのか?なかなか手が早いじゃないか」

「カイも急ぎでお金欲しいみたいだしねぇ、いけるならバンバン行っちゃった方がいいでしょ!」

「ふふ、あんまりカイさんを困らせない様にね?」

「わかってるよぉ!もぉ」

「ルカは結構出来るヤツだけど、その分おっちょこちょいだからフォロー頼むぜ?カイ」

「お、おう。頑張る」

「だれがおっちょこちょいよ!私は出来る子!それでいいじゃないのさー」

「だってすぐ調子乗るし、この前だってユニトン仕留めたよとか言ってこっち歩いてきたと思ったら後ろからモッシュに突進されてるしさぁ」

「ちょっ!バカ!今ここでそんなのばらさなくてもいいじゃない!!」

どんどん不安になってきたぞう!本当にフォロー頑張らないといけないかもな……!まぁ元気印にはよくあることと思おう。それより、だ

「あ、ちょっとギルドの方に手紙依頼してくるから、今日受ける依頼見繕ってもらってもいいかな、基本的にはなんでもOKだから。分からないコト教えてもらわないといけないだろうけど」

「あーい、ごゆっくりー」

「俺達も見繕ってやるよ、うっかりさんがいても安全なのを」

「ケインー!」

背を向けるとさらに騒がしくなった。いつもこうなんだろうか?賑やかすぎるくらいだな、なんだかんだ言ってソフィ達は落ち着いてたからこういうのは新鮮かもしれない。


 カウンターへ行き、昨日説明をしてくれたお姉さんを見つけたのでそこに行く。

「こんにちは、お手紙ですか?依頼ですか?」

どうやらお姉さんも覚えていてくれたらしい、こういう細やかさは高得点だ。

「ええ、まずは手紙をお願いします。それで、代筆ってお願い出来ますかね?」

「ええ、長さに応じて手数料を頂戴しますがよろしいですか?」

「いくら位になりますか?」

「そうですね、便箋1枚につき20カラーほどでしょうか。このくらいの便箋にこのくらいの文字の大きさになります」

そう言って見本を見せてくれる。サイズとしてはA4くらいだろうか、1枚で十分だな。

「大丈夫です、お願いします」

「はい、それでは宛先はどちらへ?」

「サフラノのギルド所属のソフィって冒険者へ」

「サフラノのソフィさんですね。サフラノまでだと今の価格は420カラーで届くようです」

「時期によって違うんですか?」

「ええ、というか移動する人たちがその団体ごとに価格を設定しているので、毎日変わりますね。大体の相場が500カラーなので、今日は安い方になりますね」

「なるほど、そりゃ助かる」

「それでは手紙の内容をお願いします」

「えっと……」

手紙には主に、生存報告と現在のおおまかな状況、所持金が足りないからヴァースで資金稼ぎをして帰る予定だということ。そして心配をかけてすまないという旨を書いてもらった。なんだかんだ言って全部書ききると用紙1枚はほぼ全部埋まってしまった。

「それではこれが手紙になります」

そう言って封筒に入れ、封をしてくれた。

「これをどこに持っていけばいいですかね?」

「それもギルドで承りますよ」

「そうですか、よろしくお願いします」

これでソフィへの連絡はオッケー、依頼は決まったかな? ルカ達のいる掲示板の方へと戻る……とそこにはルカしかいなかった。


「あれ?二人は?」

「あ、お帰り。二人は依頼をしに出発しちゃったよ」

「そっか、そういやそうだった。こっちの方は決まった?」

「ん、これにしたけどいい?」

「えーと?」


食用獣の討伐、もしくは捕獲

ミールかユニトン、もしくはモッシュを狩猟し、その肉もしくは本体を持ち帰ること。

食用部位意外は自由に取得。

報酬 時価


ははぁ、どっかの厨房からの依頼かな?

「この時価ってどんくらいになるの?」

「ホントに不定だねぇ、狩ってくる人が多くて肉が余れば安いし、逆に肉が足りてなければ高めで買い取ってくれるよ」

「もしかしてこれ常に依頼してある?」

「そうだねぇ、戦争が終わってからは基本的にずっとあるかな」

「戦争の前はなかった?」

「んー、わかんない。私が冒険者になったのって戦争が終わってからだし」

「そうなんだ、とりあえずいつでも仕事があるってのはある意味ではありがたいね」

「そ、取ってくる量も自分で決められるしね。頑張れば頑張っただけ稼げるから頑張ろう!」

二人で依頼を受けにカウンターへ、そこでギルドカードを出すと色が白っぽい黄色に変わっていた。これがヴァースの管轄色なのか。階級とかは……まぁいいか、そんなにここで延々冒険者やるつもりはないしな。

「はい、受領致しました。肉の査定はギルドで行なっております。肉の汚れが多いと買取不可となってしまうこともありますのでご注意ください」

「はいはーい」

ああそうか、食用の討伐なら綺麗に殺さないといけないわけだ……ん?そういえば俺武器ねーじゃん。完全に忘れてた

「さ、張り切って行ってみよう!」

「ごめんルカ、先に武器屋寄りたいんだけどいい?」

「え、どうして?」

「俺今武器持ってないんだ」

「えー!武器無しで依頼受けるつもりだったの?」

「それが話せば長くなるんだ……」

武器屋へ行くまではどうしてこうなったのかをカスタでの出来事から話した。いかにも冒険して来ました見たいな話しぶりにしてみるとなかなか食い気味で聞いてくれたので話す側としても熱が入る。話を盛ってはいない、と思う。……多分

「大変だったんだねぇ……それに気づいたらヴァースってすごい不思議な話だねぇ」

「俺も何が何だかわからないよ、気づいたら森とか山とか洞窟あたりがいいとこのはずなのにさ」

「誰かが助けてくれた……んだろうね!多分」

「それならいつかお礼を言わないとなぁ」

「あ、ここが武器屋だよ。そういえば武器を買うお金は大丈夫なの?」

「えーと、今の手持ちが……274カラー。足り……足りるもので戦う」

「しょっぱいなぁ……足りなかったらちょっとは貸してあげるから」

「くっ……!その優しさが辛い!」

運良く優しい人に出会ってるからこれで済んでるものの、こっちの世界に来てからはこんなんばっかりだ。今日の狩りは頑張らないと……


「いらっしゃい、何をお探しだい?」

店主は細もてのおっちゃんだ、っていうかなんか妙に細い気がする。ちゃんとご飯食べてるのか?などと余計なことを考えてしまうほどだ。

「えーと、何がありますか?250カラーくらいで何か欲しいんですけど」

そう言った瞬間店主は一気に興味を失ったかのように店舗の隅っこのあたりの箱を指差し、

「ああ、駆け出しはあのへんね。決まったら持ってきて」

と言ってカウンターへと戻ってしまった。 なんというサービス精神だろうか、このおっちゃん高額な予算伝えたら絶対手を揉みながらヘコヘコするタイプだ…… まぁ、駆け出しなのはあってるししょうがない。気を取り直して示された箱へと近づくと……

「ほとんどおもちゃみたいなもんじゃねぇかこれ……」

木刀、ピコピコハンマーみたいなもの、ただの棒、剣っぽい鉄のようなもの、バールのような何か、木製ハンマー、木の杖……どれもこれもなんて言うか基本的に棒じゃねぇか。それぞれ値札が付いているが150~300カラー程度だ。

「うーん、カイって武器は何使って戦うの?」

ルカがしょんぼりとした顔で覗いてくる。

「前はバトルピッケル使って戦ってたけど、まぁなんでもいいっちゃなんでもいいかな」

「なるほどねぇ」

「この中で一番魔力に強いものって何かな?」

「魔力なら杖じゃない?」

「じゃあ杖でいいか」

杖を手に取る、軽すぎず重すぎず、そこそこ手に馴染む感じがあって良好だ、値段も180カラーとお手頃。

「カイ魔法使えるの?」

「戦闘向けの専門的な魔法は使ったこと無いなぁ……」

「へ?じゃあなんで魔力?」

「武器に魔力を通して殴ってたから?」

「なんかすごいねそれ……」

「そういえばルカは何使うの?」

「私は弓だよ」

「お、いいねぇ弓。俺もいつかは扱ってみたい武器だ」

「なかなか難しいんだから」

「暇な時は弓教えてくれよ」

「いいよ、まずはそれ買ってきたら?」

「おう、ちょっと待ってて」

そう言ってカウンターへ、先ほどのようにおざなりな感じの対応で買い物は終了した。こういう明らかな対応の差って日本じゃ見れないから新鮮だなぁ、決して気分のいいものじゃないけど。

「おまたせ、さぁ行こう」

「うん、行き先は森か山だけどどっちがいい?」

「森で!」

「なんで?」

「山はお腹いっぱいだよ……」

「あはは、なるほどね。じゃあ森に行こうか」

今日の行き先は森に決定だ、ヴァースの西側に森があり、そこが狩場となっているらしい。


 狩場に着いてから基本的な狩り方を説明してもらった。

「今日は二人での狩りになるから、基本は一緒に行動して、獲物を見つけたらカイが獲物の後ろの方に回りこんで追い立てる、そこを私が打ち取るって感じが一番かな」

「了解、追い立てる以外にすることとか、気をつけることってあるかな」

「んー、基本的に動物は追われたら逃げるんだけど、魔物はこっちを見つけたら襲ってくる事があるから気をつけて」

「なるほどね、ここにはどんな魔物がいるの?」

「ヘビィマッシュっていうでっかいキノコと、ユニトンって言うツノのあるミールみたいなヤツ。あとはモッシュっていう足の妙にデカいウサギかな」

言い終わると同時に人差し指を口に当てウインクをしてきた。ちょっとドキッとするから突然そういうことをするのはやめていただきたい。ルカが自前のバッグから矢筒と弓を取り出し、矢筒を腰につけ、さらに矢を一本取り出してつがえた。ルカの弓は下半分が丸く、上半分は鋭いといった印象を受ける特徴のあるデザインをしていた。ゆっくりと引き絞り、空気が張り詰めてゆく……

「ふっ」

ルカが矢を放つとヒュッと空気を切り裂く音を立てながら矢が茂みの向こうに吸い込まれていった。それと同時に小さい悲鳴のようなものが聞こえる。

「よし、いこ?」

ルカは獲物に向かって歩いて行った。弓ってやっぱ格好いいなぁと思いながら付いて行った、茂みの向こうを見ると、普通のウサギの胸を矢がガッツリ貫通して地面に(はりつけ)にしていた。

「おおー、スゴイスゴイ!」

「ふふん、まぁね」

見事なドヤ顔である。実際この精度は凄い、茂みの向こうにこんなのがいるなんて全く気づかなかったのになぁ。これがプロって奴か……ハンターさんかっけぇ!

ルカは矢を抜き、血を軽くふき取った後、かなり手慣れた手つきで皮を剥いでウサギを解体し、肉を紙で包んでカバンに入れた。

「かなり手馴れてるね、ルカって昔から狩りとかしてたの?」

「そうだよ、私の家は狩りで生計を立ててたから、お父さんもお母さんも弓が凄く上手かったの」

「なるほどなぁ、ルカの弓も凄いよ。カッコイイ」

「ふふ、ありがと。さぁどんどん狩らないとね」

そう言ってルカは次の獲物を探しに歩き出した、それに付いて行きながら周囲を見渡す。

(……お父さんもお母さんも弓が凄く上手かった(・・・・・)の ねぇ、孤児院で出会ったんだし、やっぱり両親を戦争で亡くしたんだろうなぁ……そういうのってどう触れていいかわからないな。明らかにその話題を避けるのも苦手だし……難しいなぁ)

「あ、カイ」

いきなり名前を呼ばれてびっくりした。

「何?なんかいた?」

「うん、あれ見て」

そう言って指さした方向を見ると、15メートルほど先の木々の間をゆったりと歩くミールが見えた。

「ミール?」

「ううん、あれがユニトン。ミールは茶色い毛だけどあれは黒い模様があるでしょ?」

「言われてみれば何本か筋みたいなのが……」

「あれがユニトンの模様だね」

「あれを追い立てればいいのかな?」

「うーん、出来る?」

「まぁルカだけに仕事させるわけにはいかないしね」

「そっか、気をつけてね?カイと獲物が近かったら私は弓打てないから」

「了解、危なかったら木の裏にでも逃げるよ」


 さて、標的のユニトンは一匹で草を食べてるとこだ。ルカはさっきの位置で待機、俺はユニトンを挟んで反対側で8mくらいのところまで近づいてきた。これ以上は気づかれるだろう……っていうか8mで気づかないって結構危機感足りてないんじゃないのか……? 木から顔を出してルカの位置を確認し、カバンから杖を取り出して掲げ、合図を出す。 それと同時に魔力を練り杖に通す、ルカが矢を確実に当てるための隙を作ればいいんだ。 木の影から飛び出してユニトンに向かってまっすぐ走る。 3mほどまで近づいた所で草を貪っていたユニトンが顔を上げてこっちを向いた。

「遅すぎだろ!」

突っ込みながら杖を地面に叩きつける。目標はユニトンの前足二本の下の地面、なるべく小さく深めの穴を開ける事だ。 魔力が杖を伝わり地面に伝わった瞬間、包帯を巻いていた左手が焼け付くように傷んだ。

「いッ……」

突然の痛みに驚き、脚が止まる。 いでででで 左手を抑えてうずくまる。いやこの痛みはヤバい…… っと、そういえばユニトンは?襲いかかる時に脚を止めるなんて何たる失態だろうか。 顔を上げてユニトンを……あれ?いない


「カイー」

向こうからルカがやってくる。一体何が起こったんだ?

「ユニトンは?ってうわぁ!」

「どうした?」

「これカイがやった……んだよね。すごいねー」

何のことだろう……立ち上がってルカに近づくと、先程までユニトンがいた所に綺麗にユニトンの形に地面が切り抜かれ、そこにユニトンがすっぽりハマって身動きが取れなくなっている。深さは……ユニトンの大きさを考えると150センチほどの穴だろうか、背中が見えない程度の深さはある。

「うわぁエグい、俺としては前足だけ落としてその隙にルカに撃ってもらうつもりだったんだけどなぁ……」

と、言うかさっきの痛みって何だったんだ……?そう思い左手に巻いてあった包帯を取ると、手首より手前から指先までが、黒く変色していた。むしろ向こう側が少し透けて見える……

「どうしたのその手……」

「いや、俺にもわかんない。こんなんになってるとは思わなかった……」

原因としては……やっぱスライム吸い取ったから……だよな、全然覚えてないが……。ぶっちゃけちょっと気持ち悪い感じもするが、触った感じ手の感触もあるし、思った通りに動く。透けて見える割に骨は見えないから不思議だ。

「とりあえずユニトンの処理しちゃおう?」

「あ、うん。そうだね」

気にしていてもしょうがない。魔法が使えないかもしれないのがキツいから後で色々試してみないとな……

「カイ、その杖貸して」

「ん、はい」

何に使うんだ?と思ってみていると杖でユニトンのツノを力強く突いていた。

「ツノ?何かに使うの?」

「うん、まぁそういう意味でも折るんだけど、ユニトンってツノが折れると死んじゃうのよね」

「へぇ、むしろそれは先に教えてもらいたかったな」

「あ、そうだよねごめん」

「いや、いいよ。覚えとくよ」

そこから数回着くとツノが折れ、地中から悲鳴が聞こえた。合掌


 結局ユニトンはそのままでは引き上げることも出来ず、周囲を掘り引っ張りだすために時間を食ったため、今日は森で野宿することとなった。ユニトンが草を食べていたすぐ近くに開けた場所があり、焚き火などをしていた痕跡もあったのでよくあるキャンプの場なんだろう。ルカが簡易テントを用意している間、ユニトンの肉を使って串焼きとテールスープを作って二人で食べた。まだ若干明るいのだが、夜中の見張りの交代は慣れていないだろうということでルカが先に寝て、夜中になったら交代することになった。

「この手は……どうしたもんかなぁ……」

見るからに真っ黒になってしまった、見た目も困るが何よりも魔法を使うと痛むってのがマズい。試しに魔力を取り出し、手のひらに火を灯す…… 初めは問題なく火が燃えていたが、左手がだんだん圧迫されるような感覚があり、火力を上げると痛みだした。

「強くするとダメ……か、とりあえず全く使えないわけでもないならまぁ……」

独り言ちながら集めておいた焚き木を組んでおく、夜の焚き火の準備をすませてカバンから取り出したパンをちぎって食べ、ソフィは何してるかなぁ、心配してるだろうな…… そんな事を考えながらギルドカードを弄ぶ。ヴァースの色もなかなか綺麗だな……俺としてはサフラノの緑が好きだけど。 そういえば俺のステータスっていまどうなってるんだろ?もしかしたら左手の状態異常も確認できるかもしれない。 そう思い、カードをなぞりながら『ステータス』を唱えた。


『ステータス』

名前:カイ 『発芽』『飾り石』

筋力 82

体力 90

知力 102

精神 120

魔力 224/68906

生命力152/53084


エクステンド

緑の加護

黒の魔手



……は?

なんだこの魔力と生命力、いきなり最大値の桁が大きくなりすぎだろ。え、何どういうこと?スライムから奪い取った魔力のせいで無理やり体のキャパが増えたってこと? エクステンドってなんだ?緑の加護がブレスレットの効果で、魔手はこの黒い手だよな、コイツの効果で……? いや、気絶してる間にカードが壊れたってこともありえるな。うん、多分そうだ。いきなりこんなチート臭いステになるとかありえんてぃ。 そして私は考えるのをやめた。



 現実逃避をしても、森は静かだった。耳を澄ませばテントからは寝息が聞こえてくる。ぶっちゃけ思うんだけど、この世界の女の子達はもっとこう、危機感とか無いんですかね?うへへ、おじさん狼さんになっちゃうぞ~ とかなっても平気なんですかね? むしろバッチコイやオラァ とか言われても引くけど……、ソフィといいルカといい簡単に男を信用しすぎなのでは……? まぁそんな狼さんになれちゃうほどの甲斐性もないけどさぁ…… かと言ってそういうもんなの?大丈夫なの?って聞くのもセクハラっぽいしなぁ。



 ……暇だなぁー。見張り番だからここから離れるわけにも行かないしなぁ。魔法の練習は手が痛いし……何かあればなぁ。



 結局何もないままルカが起きてきたので、テントを借りて眠った。何もないときは本当に何も無いんだよな……。


スヤァ……(l3)っ⌒つ


2/6 20:25 編集

依頼の対象モンスターが仮のまま投稿してしまいました。

エルボア→ユニトン コッコロッコ→モッシュ

に変更です。申し訳ありませんでした

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