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悪役令嬢の婚約者に転生したんだが、なんか様子が変だぞ? ~絶対婚約破棄したい悪役令嬢VS絶対婚約維持したいバカ王子

作者: しゃぼてん
掲載日:2025/10/25

 ある日、めざめたら、俺は乙女ゲームっぽい世界の中にいた。

 俺はこの国の王子様らしいんだけど、貴族ばっかりの学校に通っていて、同じ学校に婚約者がいる。

 その婚約者っていうのが、金髪縦巻きロールで、みょうにツンツンしていて、オーホホホッと高笑いする子なんだ。でも、美人だから、笑いかたとか変でも、ぜんっぜん、いい。

 最初からあんな婚約者がいるなんてラッキー。いずれやってくる初夜がたのしみだ、ムフッ。とか思ってたんだけど。


 俺は気がついた。


 この世界、というか、俺の周囲、やったらキラキラしたオーラのイケメンが4人くらいいる。そして、俺にやたらとからんでくるピンク髪のかわいい女の子がいる。その子は庶民の出らしいんだけど、ちょっとドジっ子で、なにをやらせても、なんか、あざとかわいい。

 最初はうわっ、あの子も超かわいい、と思ったんだけど。


 すぐに気がついた。


 あれ? これって、乙女ゲーム世界の悪役令嬢モノじゃね?

 バカ王子が悪役令嬢を婚約破棄して追放して、その後復讐されたり勝手に自滅して悲惨な目にあうラノベのテンプレストーリー。婚約破棄された悪役令嬢は活躍して、バカ王子はひどい目にあって、読者に、ざまぁ、ってバカにされる話。

 俺、あのバカ王子なんじゃね?


 まずいぞ。婚約破棄になったら、俺の未来が真っ暗だ。とんでもない目にあわされちゃう!

 絶対に、婚約を維持しないと! 

 俺は絶対に悪役令嬢と幸せになるんだー! ムフッ。

 って、決意したんだけど。


 廊下で婚約者を見かけた俺は声をかけた。


「エリザベス、今日、いっしょに……」


「あら、殿下。わたくし、いそがしいので。ごめんあそばせ。オーホホホホホッ」


 悪役令嬢エリザベスは、速攻、俺の誘いをふって去っていった。まだちゃんと誘ってすらいないのに。


 毎日こんな感じで、エリザベスには、つけいる隙がない、というか、もうこの二人、関係破綻している。でも、政略結婚だから、本人の思いは関係ないもんな。俺が破棄しなければ、婚約は続くはず。と思っていたら。


 ある日、ピンク髪の女の子が上からふってきた。

 俺が階段の下にいたら、ピンク髪の女の子が落ちてきたのだ。


「ごめんなさーい。ピエール様」


 ピンク髪の女の子は、下敷きになった俺の上であざとかわいく髪の毛をかきわけながら謝った。

 あ、ちなみに、俺の名前、ピエール。


 そして、階段をゆっくりと、悪役令嬢エリザベスがとりまきの少女たちを引き連れ、降りてきた。


「あらあら? これは、どういうことですの? 殿下とエイプリルが、どうして抱き合って?」


「ご、誤解なんだ! エリザベス!」と、俺が叫ぼうとしていると、ピンク髪の女の子エイプリルは、涙を浮かべながら俺にうったえた。


「ピエール様。わたし、つきとばされたんです。あの方に」


 なに、これ。ラッキースケベからの誤解展開かと思いきや、そうくるの? 

 この子、誰もいない階段の真ん中からダイブしてきたの、おれ、さっき見てたんだけど? ちょっと無理ない?


「えーっと……」


 俺が2秒くらい、対応に苦慮していたら、悪役令嬢エリザベスが、ずばっと言った。


「ピエール殿下。わかりました。貴方はエイプリルを信じるのですね?」


「え? いや、そんなことないから。俺は、だんぜんエリザベスを信じるよ?」


 エイプリルを信じるとか、無理ありすぎだし。でも、悪役令嬢エリザベスはきっぱりと言った。


「いえ。悪いのは、わたくしです。どうぞ、婚約破棄なさってください」


「いやいや、ぜったいに、婚約破棄なんてしないから」


 つかつかと近づいてきて、俺に顔を近づけながら、悪役令嬢は強い口調で言った。


「いいえ! どうぞ、遠慮なさらずに! 婚約破棄しなさって。さぁ、はやく、婚約破棄を!」


「圧つよっ! いや、ぜったい、俺は婚約破棄なんてしないから!」


 その瞬間、悪役令嬢エリザベスが小さく「チッ」と言ったのを、俺は見逃さなかった。


「では、ごきげんよう。オーホホホホッ」


 高笑いとともに、俺の婚約者は去って行った。

 その後ろ姿を見送りながら、俺は心の中で叫んでいた。


 悪役令嬢、婚約破棄される気満々じゃん! なにがなんでも俺に婚約破棄させようとしているじゃん!




 まぁ、そりゃそうだよな。婚約破棄されたら悪役令嬢にはバラ色の未来が待ってるんだもん。婚約破棄されたいよな。

 でも、とにかく、俺はなにがなんでも、この婚約を守らねば。俺の未来のために。




「ピエール様。エリザベス様ったら、ひどいんです」


 ピンク髪の女の子エイプリルは、今日も俺にエリザベスによるいじめをうったえている。


「あー、そう?」


 俺は適当に聞き流しているんだけど。困ったことに、だんだん、周囲の人達が、エイプリルの言うことを信じるようになってきた。


「あ、ウィンター様!」


 ピンク髪の女の子がブンブン手を振ると、


「エリザベスの話ですか?」


 通りがかりのイケメン秀才ウィンターが近寄ってきて、話に加わってきた。


「ウィンター様、どうぞ、このベンチにおすわりください」


 そう言って、ピンク髪の女の子は、俺のとなりの席から立ち上がった。

 ウィンターは将来はこの国の宰相か、って言われている、勉強がとてもできる秀才だ。たしか、ウィンターとエリザベスは遠い親戚らしい。

 ウィンターはたぶんピンク髪のヒロインの攻略対象の一人だ。なんか、キラキラしているイケメンだからな。エイプリルの今の行動、席をゆずって自分は立っているのも、好感度をあげるためなんだろう。


「たしかに、最近のエリザベスの行いは目に余ります。あれでは、とてもこの国の王妃にはふさわしくない」


 と、俺のとなりにすわってウィンターは言った。


 あーあ。まいったな。このままだと、エリザベス、俺が婚約破棄しなくても、外堀を埋められて追放ってことになっちゃうぞ。


 本人も追放される気満々っぽいし。

 この前だって、エリザベスは、図書館で楽しそうに鼻歌歌いながら外国についての本を読んでいたもん。あれ、絶対、追放先のお勉強だよ。


「へー。そう? 俺はエリザベスが王妃にふさわしいと思うけど。エリザベスも最近ストレス多いのかな」


 と、俺はなんとかフォローしておいた。


「そうですか? 殿下がそう言うのなら……」


 ウィンターはもごもごと言って、すごすごと去って行った。

 ピンク髪のヒロインはぷぅっとほおをふくらませていた。


 また別のある日。俺が教室に座っていると。


「ピエールさまー!」


 元気よく大声で俺をよびながら、小動物みたいな小さなかわいい系イケメンが俺のひざにのってきた。

 こいつは、リングという名で、めったにいない聖なる力を持っているやつで、将来は大司祭か、って言われている。絶対あのピンク髪のヒロインの攻略対象の一人だ。


「ピエールさま! エリザベスさんがひどいんです!」


「あー、そう。悪かったね。俺の婚約者が」


「ピエールさまが謝る必要ないですよ。でも、どうしてあんな女を婚約者にしておくんですか」


「最近、みんなにそれ言われるんだけど。俺は絶対、婚約破棄なんてしないから。マジでエリザベスラブだから」


「えー! エリザベスさんなんて。彼女、最近、冒険者ギルドなんて下品なところに出入りしているらしいですよ?」


「へー。彼女、戦闘力を鍛えてるのかな……」


 追放されたら冒険者になって無双する気か? それとも、敵国に行って、俺の国を攻め落とす気か?

 なんにしても、俺は絶対、婚約破棄なんてしないぞ!


 またまた別の日。

 体育の授業で着替えの時、王子の幼馴染にして忠実な騎士オーガストが、ムキムキ色黒マッチョな上半身をあらわにしていた。この短髪イケメン、オーガストもきっと、ヒロインの攻略対象だ。

 オーガストは美しい筋肉を見せつけながら、俺に言った。


「殿下。最近、エリザベス様の悪い噂を聞きます」


「ふーん。どんな?」


「商売を始めたいとかで、さかんに異国の商人とやりとりをしているそうです。ひそかに敵国とつながっているのではないかと疑われています」


「へー。商売をはじめるのか……」


 婚約破棄後は大商人か。

 もう商売はじめちゃうの? まいったな……。


 またまたまた別の日。

 手を洗ってトイレから出ようとしていたら、残る最後の一人の攻略対象っぽいキラキラなイケメン、王子のいとこのえらそうなやつ(俺様系ってやつ?)、サマーズがやってきた。


「ピエール。エリザベスは王妃にふさわしくない」


「はい、はい。お前もか、サマーズ」


「なに? どういうことだ。いいか? よく聞け。エリザベスは、この俺に色目を使ってきたのだ」


 サマーズは真剣な顔で、壁にドンっと手をつき、そう言った。


「はぁ。モテ自慢?」


「は? なんだ、その反応は。お前の婚約者がいとこに色目を使っているんだぞ? そんな女、お前の婚約者にはふさわしくないだろ!」


「いやいや、エリザベスは俺のものだ。お前にはやらないぞ」


「くっ……」


 サマーズは悔しそうに去って行った。

 あいつ、エリザベスを狙ってたのかよ。まったく。


 さぁて、そんなこんなで、みんなーが俺に婚約破棄をしろとすすめてくる状態になってちょっとして。なんか、パーティーがあった。


 このパーティーって、あれだよな。バカ王子(俺)が婚約破棄をするステージだよな。

 俺は絶対、婚約破棄なんてしないけど。


 そんなパーティー、でたくなーい。さぼりたーい。

 と思ったんだけど、この感じだと、俺がいない間に、


「エリザベス、お前は王子の婚約者にふさわしくない!」

「そうだ! そうだ!」

「わかりましたわ! わたくしは出て行きます(喜) オーホホホホッ!」


 って、なりそうだから、俺はちゃんとパーティーにでることにした。

 そうだ。むしろ、このパーティーで俺はエリザベスへの愛を宣言しよう。絶対に婚約破棄なんてしないってアピールするために。それで万事解決だ。


 パーティーに行くと、俺はすぐにイケメン達とピンク髪の子に囲まれた。


「俺は、エリザベスに話があるんだ」


 そう言うと、待ってましたとばかりに、さーっと人々が移動していき、部屋の遠くにいたエリザベスと俺のあいだに、だれもいない空間ができた。


 みんなが期待して待ち構えている。

 その期待にはこたえないんだけど。

 俺は全力で叫んだ。


「エリザベス! 俺は、君のことが、大好きだー!」


「オーホホホホッ! ありえませんことよー! わたくし、一切合切、信じませんわー!」 


 エリザベスは俺に負けない全力でそう叫んで、走って去って行った。


 俺の周囲のイケメン達がいっせいにしゃべりだした。


「なんだ、あの態度は。やはりエリザベスは殿下にふさわしくない」

「ほんと、ひどいよね。エリザベスさんは」

「あの方が王妃になられたら、いったいどうなることか」

「いっそ、追放でもしてしまえ」


「いやいや、ああいうところが、かわいいじゃん」と、俺はみんなに言っておいた。


 すると、ピンク髪のヒロイン、エイプリルはなぜか悲しそうに頭を左右に振って、エリザベスを追うように去って行った。

 俺にふられたと思ったのかな?




 ーーーー悪役令嬢エリザベスが語るーーーー


 オーホホホホッ! ごきげんよう、みなさま。


 あ、いけない。悪役令嬢の演技をしていたら、すっかり抜けなくなっちゃった。

 私、以前は日本人だったんだけど、気がついたら、悪役令嬢に転生しちゃっていました。大好きでやりこんでいたゲームの悪役令嬢だから、毎日、超ハッピー。ノリノリで悪役令嬢をやっている内に、悪役令嬢風のしゃべりかたの方が自然になってきたから、こっからは素の悪役令嬢でいくわね。


 オーホホホホッ。なんと、ここは、わたくしが大好きな乙女ゲーム風BLゲームの世界なのですわ。

 攻略対象は学園の4人のイケメンと王子様ですわ。でも、このゲーム、BLゲームにしては、ちょっと変わっておりますの。


 プレイヤーは主人公のピンク髪の女の子エイプリルになって、お節介お見合いおばさんムーブでイケメン達をくっつけていくゲームなのですわ。

 イケメン達のイチャイチャをのぞき見て楽しむゲームなのですわー! 


 イベントをこなすごとに、ご褒美ムービーが開陳されていきますわよ。ルートをクリアをしたときには、とても恥ずかしくて、わたくしには口にできない、あはんうふんな過激ムービーまで。


 カップリング自由度の高さがこのゲームのだいご味ですけれど、やはり一番人気は王子様とのカップリング。わたくしも、一番好きなのは、王子様とあのキャラのカップリング。わたくし的ランキング1位から4位まで王子様カップリングで占められていますわよー。


 でも、王子様とのルートで必ず邪魔になるのが、そう、わたくし、王子の婚約者、悪役令嬢エリザベスですわ。

 このゲーム、悪役令嬢エリザベスとの婚約を破棄しない限り、王子ルートの攻略が一切できない仕様なのですわ!


 推しカップル達の邪魔者になるなんて、貴腐人としてありえないことですわ!

 だから、断固として、速攻、婚約破棄をさせなくては。

 ついでに、わたくしは婚約破棄後の人生を謳歌させていただきますわよ。


 という計画で、ピンク髪の主人公エイプリルちゃんとも仲良くなって、二人で暗躍……もとい、殿方の皆様の恋のお手伝いにいそしんでいたのですけれど。


 あのバカ王子! ぜんっぜん、別れてくれないのですわ!


 あら、口がすべって汚い言葉を使ってしまいましたわ。

 エイプリルちゃんも王子がフラグを折りまくるんですーって、涙目でしたことよ。


 でも、わたくし、けっして、あきらめないですわよ。

 絶対に王子をあの男性とくっつけてみせますわ。


 オーホホホホホホホッ!




 おわり



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