狂った学園の日常
今日も更新です。
僕が通っている学校は国立八百万学園といい、その名に恥じぬ多種多様な生徒が通学しており、日本が魔帝国家となった後にできた名門校だ。魔力で日本は発展したと言われる先駆けを作ったということもあり、外見はコミックなどでしか見る機会のなかった近未来的な造りになっている。また先程社に説明した通り、スポンサーとしてはあの天立向研究所もこの学校を支援している。
「まぁ、ここが僕の通っている学校だよ」
「かなり広いですね...」
「国内で最大規模らしいからな」
そんなふうに話しながら社と共に学園へ続く道を歩く。やはり社の容姿に気を取られている人が多く、先程からちらほらと視線を集めている。そんな中、後ろから確かに僕達に向けて声をかける人物が僕の肩を叩いた。
「よう、望門!」
「誰かと思えば...武尊と忍か」
少し警戒心を持ちながら振り向くと、そこには僕がよく知る親友が二人立っていた。片方は活発そうな雰囲気を持つ薄い緑髪のがっしりとした体つきの少年、もう片方はスラリとした体型で黒色と金色がグラデーションになった髪を持つ灰眼の少女だ。
「...あの、この方たちは...?」
「あぁそうだ、紹介するよ。こっちの体育会系のやつは梨反 武尊、もう片っぽの陰気そうなのが光陰 忍だ」
「誰が陰気そうな、だって?」
「気にすんな、こいつがからかってくるのはいつものことだろ」
「はぁ...まぁ良いさ」
「それよりよぉ、この美少女は誰だ?俺の記憶が正しいか不安だが...学園で見かけた事は無いぞ」
社に二人を紹介していると、武尊からそのような疑問が僕に飛んでくる。ちらりと目を向けると、忍も僕の返答を待っている様に見えた。
(すみません、ご迷惑をおかけしてばかりで...)
(遅かれ早かれ知人には気付かれるだろうからな...仕方ないさ)
どうやってこの場を切り抜けようか考えていると、社からアイコンタクトを取ってきたため、そんな気持ちを込めて返した。親友二人には隠し事はあまりしたくないが、周りに言えないある事情を持っている二人ならば不満は残るだろうが分かってくれると考え、ふと思いついたことを口にする。
「あー...この子は天宮 社っていう名前で、僕の親戚みたいなものだよ」
「望門に親戚などいたのか?」
「母方の叔父さんから急に「一人じゃ寂しいでしょ?同年代で都合がいいからうちの娘の面倒を見てくれないか」って言われてね、昨日家に来たんだよ」
「...お前、何か隠してねぇか?」
「いいや?ただ本当のことを言っているだけだが」
「...そうか、まぁ、俺たちにも言えないことならいいさ」
僕の思った通り、怪しまれはしたが二人共それ以上は言及しないでくれるようだ。
「ただ...また一人で抱え込んだりしないでくれよ?」
「...分かってるさ。身に沁みてな」
僕はホッとしつつも、武尊が心配したような調子でそう言ってくれたことに何でも無い風を装って返答する。それからは二人共いつもの調子に戻り、親友同士で話しつつ教室へ向かった。
「ほら席につけ〜。ホームルーム始めるぞ〜」
僕達が教室に入って五分ほどすると、教室の扉から教師とは思えない派手な七色の髪の毛をもった担任の女性が現れ、騒がしくなっていた空気を沈黙させる。そしてそのまま教壇へと立ち、全体を見渡すと、社に目を留めた。
「ありゃ?こんな可愛い子うちの学園に居たかなぁ?」
やはりというか、事前に伝えていない為に先生は困惑の表情を浮かべた。七邸 彩斗先生なら気付かないと思ったんだけどなぁ...仕方ない、事情を説明するか。
「あー...この子は俺の親戚みたいなものです。なんか、「授業が見たい」って言い出して聞かなくて...」
「ほーん...?まぁそういう子もいるかぁ。じゃあ望門の隣の席に座っといて〜」
この先生は見ての通り、基本的にどこか抜けている。まぁこの学校の校則って5個しか無いからな、ちょろいとは思ってしまうが校則で禁止されてない以上は何も言えないのも無理はない。
「あ、良いこと思いついちゃったぁ」
「どうしたんですか、先生」
この人とはあまり相性が良くない為に日々の鬱憤が溜まっているのだろう、クラスの中でも真面目な生徒がイライラを隠そうともせずそう問いかける。その言葉がきっかけとなったのだろうか、先生の答えが気になっている生徒たちの声のボリュームが下がり、教室全体の音量が下がった。
「いやぁ...今日一日授業参観にしようと思って☆ちなみに君たち生徒に拒否権無いから」
「「「「「いやそうはならんやろ!?!?」」」」」
「あははっ、なってるからしょうがないよねぇ〜?んじゃ通知もなかったし、ホームルーム終わりぃ〜」
そんなわけで、いつものように混沌とした授業が始まった。いやそうはならないでしょ!!!
1時間目:数学
「基本的に数学なんて社会で使わないィ?バッカお前、女性のバスト測る時に使えるだろ!」
「「「「「えぇ...(一同困惑)」」」」」
4時限目:体育
「君、さっき転んでたけど大丈夫?保健室いkゲホッコ゚ホッ!!」
「「「「「せ、せんせぇー!!!」」」」」」
「先生が保健室行ったほうが良いと思いますよ」
7時限目:化学
「あ、これとこれは混ぜるなよ。一回生徒気絶させて私教員免許剥奪されかけたから」
「「「「「いやあんたがやったんかい!!!」」」」」
「「「「「この学園、やばい教師多くないか?」」」」」
「つ、疲れました...」
「まぁ仕方ないだろ、俺達の学校かなり無法地帯だし」
「私も入ってきた時は驚いたよ。なにぶん日本の最先端と聞いていたからな...」
「社、慣れろ。僕は諦めた」
社を含めた僕達は、いつも通り狂っていた授業について話をしつつ各々の放課後活動に向けて移動をする。基本的には親友と行動を共にしているが、僕は図書委員としての呼び出しを受けていたことを伝え、一度社を二人に預け図書室に入る。
「...要件は?」
「要件も何もあなたに呼ばれたんですけど??とりあえず電気点けますよ」
「あっちょっ」
図書室の扉を開け少し離れた位置にある電気のスイッチを点けようとすると、焦ってこちらに走って来る足音が聞こえた。
「毎度毎度思うんですけどこの厨二病っぽい演出するのやめません?」
「だって、暗いほうが落ち着くんだもん」
宵崎 透華先輩はそう僕に語りかけた。適当に入った図書委員の活動で3ヶ月付き合いがあるが、未だに打ち解けられている感じがしない。普段は控えめで地味な人なんだけどな...
「...あれ、どこにいるんですか先輩?」
昼間だからか光が差し込んでいるため、薄暗いが机や椅子の影くらいは見える。だというのに、人間の姿がどこにも見えない。僕は暗闇に慣れてきた目で、どうにか図書室の電気のスイッチを見つけ即座に押した。
「望門くーん?ってあぁっ!?」
「いい加減出てきてくれませんか先輩...ん?」
電気を点けると、図書室が光で満たされ薄暗かった室内を照らし出す。だが、暗かったことで気づくことがなかった違和感が頭をよぎる。
先輩は隠れていたのではない────────文字通り透明になっていたのだ。
八百万学園...なんて混沌とした場所なんだ...(犯人)




