表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の真は花を繚う  作者: METEO
第一章:学園事件編
23/23

内村 扇

普通に更新です

チャイムが鳴り響き、一日の終わりが告げられる。

窓の外を見れば日は傾き、生徒達の間には軽い笑い声が満ちていた。


そんな中、僕と武尊は荷物の支度すらせず、まだ席に座っていた。

今朝の話、そして金山の話。

その二つは、今後起こるであろう不穏な出来事を暗示しているようだった。


「結局、内村ってやつは何が目的なんだろうな」


武尊の呟きが聞こえたのか、隣に座っている金山も会話に加わる。


「現状、手出しはしないほうがいいと思うよ。あの人は特殊な術を操るって聞いたし...」

「術?魔法じゃないのか?」

「いや、普通の魔法は回路を介さなきゃいけないんだけど...内村先輩は、回路を使わずになにか不思議なことができるって噂があって...」


確かに、魔法は相応の「回路」がないと発動はできない。

なんでも魔力が活性化?するために回路が必要らしく...いや、この話は考えても仕方ない。

金山の話だと、要するに内村は、魔法以外の何らかの力があるか、回路なしで魔力を扱えているかのどっちかになる。


「...つまり、内村ってやつは異質なんだな」


武尊は腕を組み、眉を寄せる。

金山はそれに頷いたが、その様子はどこか怯えているようでもあった。


「あの人に目を向けられると、思考を覗かれてる感じがして...体がうまく動かなくなるんだ」

「思考を、覗かれる...?」


僕は思わずそう問い返し、金山が苦笑する。

だがその頬には、冷や汗が湧いていた。


瞬間、空気が重くなる。

まるで、その場だけ重力が強くなったかのような圧がかかり...思わず教室の入口に視線が向く。


コン、コン。

突然、教室のドアが軽く叩かれる音が響いた。

僕達に遅れて、生徒たちも一斉にそちらへ視線を向ける。


「......誰だ?」


生徒の一人が、ぽつりと呟いた。


扉が、ゆっくりと開かれる。

普段は賑やかな学校が、その少年のために静まり返っているようだ。

朝と同じく、完璧に整った制服、背筋の伸びた立ち姿。そして...微笑の奥にある冷ややかな光。


「失礼、望門君はこのクラスかな?」


内村 扇。

問題の元凶が、僕達の方へ乗り込んできた。


「...ここに居ますよ」

「じゃあ、少し場所を変えて話そうか」


緊張の糸が張り巡らされ、僅かな静寂が訪れる。

僕と武尊はその言葉に従い、動かない...いや、()()()()生徒達をかき分けながら扉の前へと立つ。


(おそらく催眠の類なんだろうけど...この人数を動けなくするなんて...)


すでに内村は背を向けて歩き出している。

僕達はそれに続くようにゆっくりと、だがしっかりとその後ろをついていく。


「静かに話をしたいから、屋上に行こう」


背を向け続けながら、内村はそう言う。

表面上は丁寧だが、言葉の一つ一つには圧がこめられている。

了承以外の選択肢は...なんとなく、頭に浮かばなかった。

僕達はそれぞれの返事を行い、内村はそれに満足したかのように頷く。


屋上への扉を開けると、秋らしい冷たい風が吹き抜ける。

日はすでに落ちかけており、鮮やかな橙色の光が街を照らし出す。

そんな屋上に一人、人目を引くような美形の少女が、屋上から街を眺めていた。


「...おっと、絡夜先輩じゃないですか。こんなところでどうしました?」


まさに紳士的、という装いで、内村は少女...絡夜、という人物に話しかける。


「...ん、誰かと思えば...内村か。それと、後ろの二人は...」


絡夜さんは一度内村に目を留め、次に僕達へと視線を投げかける。

僕は、その目が少し見開かれたのを目で捉えた気がした。

だが、それもほんの一瞬。

すぐに絡夜さんは、視線を内村へと戻す。


「ちょっとした後輩ですよ、少し話したいことがありまして」

「ふぅん?なら、邪魔はしないでおくよ...」


そう言って絡夜さんは内村へと歩を進め、何かを耳打ちすると、僕達が入ってきた扉を開けて屋上から出ていった。


「...成る程、興味深い...」


絡夜さんから気になる言葉を聞いたのだろうか、しばらく内村は黙っていたが、その後、初めて僕達の方へと体を向ける。


「さぁ、改めて話の続きをしようか──劣等種」


途端に、僕の体に異変が生じる。

体を動かせない。まるで──強い意思に押さえつけられているように。


「おい望門!?大丈夫か!?」


隣から武尊の声。肩を掴まれる感覚はあるのに、視線すら動かせない。

その様子を見た内村は、感情のこもっていない笑みを浮かべていた。


「絡夜先輩に「気をつけろ」と言われた時は興味が湧いたが...」


声色は柔らかい。だが、その奥には冷たく濁ったニュアンスが含まれていた。


「なんだ、その程度か」


従わざるを得ないような気持ちの悪い感情が、心の奥底で湧き上がる。

どうやら、敵であることを隠すつもりは毛頭ないらしい。

一歩、また一歩、やけに足音が耳に響く。


「や...めろ......!」


かろうじて声を絞り出すも、すでに内村は目と鼻の先。

けれど、体はびくとも動かない。

このまま意識が途切れるかもしれない...そう思った瞬間。


「──望門さん!」


聞き覚えのある強い声が、僕の名前を叫んだ。

同時に屋上の扉が開かれ、社と忍がなだれ込む。

さらに僕の真横を何かが横切り...内村の足元ギリギリで止まって消える。


「内村 扇...そこまでにしてもらおうか」


影の斬撃を飛ばした忍の声は、静かではあったが、明確な怒気を帯びていた。

今日から不定期更新になると思われます

おそらく土日にいっぱい話を投稿する、という形になるかと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ