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天の真は花を繚う  作者: METEO
第一章:学園事件編
19/23

操られ人は何を思う

戦闘シーンにあるまじき短さ

廊下を爆発音と熱風が走り抜けた。

壁が軋み、床の埃が舞い上がる。だが──敵を打ち倒した様子は、ない。


「今のを受けて無傷なんて......」


七邸先生の炎をまともに浴びたはずの金山は、煤をまといながらもゆっくりと立ち上がる。

その動きに迷いはなく、ただ命令に従う機械のようだった。

瞳には靄のようなものがかかり、焦点が合っていない。そこに生気は感じられなかった。


「これ、操られてるねぇ」


先生が静かに呟く。その声には、確信と警戒が入り混じっていた。

だが、すぐに眉をひそめる。


「でも、それならどうやって今のを防いだんだろう...」


基本的に、魔法は意思をもっていなければ発動しない。どれほど熟達した魔術師でも、それだけは変わらないはずだ。


「何かを盾にしたように見えましたが...それ以上は分かりません」


僕は先生の近くへ行き、今わかっていることを簡潔に伝える。


「まぁ、魔法を防ぐ手段があるなら肉弾戦だね」


七邸先生が軽く足を鳴らす。再び、雷の翼が羽ばたいた。

僕も頷き、息を合わせて前へと飛び出す。


先生は正面から踏み込み、鋭い蹴りを放つ。

僕は走って背後へ回り込む。二方向から挟み撃ち──完璧な連携のはずだった。


「...躱された!?」


しかし、金山は音を置き去りにするような動きで、先生の蹴りを紙一重で躱す。

また人間とは思えない反応速度でその場から飛び退き、僕の腕が虚空を掴んだ。


「くそ......」


焼け焦げた匂いが鼻を刺す。

だが今の僕に作れる門は、1日に25個まで。一つ一つは強力な切り札だが、無闇に使えばすぐに手札切れになる。ここで焦って放てば、後がない。

となれば、動きの止まった一瞬に賭けるしかない...僕は息を整え、先生の背に声を飛ばす。


「先生!金山の動きを止めてください。その時に、魔法を打ち込んでみます!」


七邸先生は振り向かずに、小さく頷いた。

その一瞬で、雷の翼がさらに強く輝く。


「任せたよ、望門くん」


まさに電光石火。

先生の姿が消え、雷鳴のような轟音が響く。次の瞬間には、先生は金山へと接近し、激しいぶつかり合いが始まった。


その間、忍は社を守るように影に潜んでいる。これなら被害を気にする必要はないだろう。


「...今だ!」


金山が一瞬よろける。

僕はためらわず、右手を掲げて魔力を流し込もうとした。

だが──


「...!?待て、望門!!」


忍の声が鋭く響く。

その声には、焦りにも似た確信があった。


何だ......? 一瞬、迷いが生まれる。

確かに先生の攻撃は、誰がどう見ても人外の速さと威力だ。

なのに──金山はまだ立っている。

それどころか、度々繰り出される炎や雷すら防いでいる。


(おかしい......魔法が使えないなら、なんで()()で魔法も防げているんだ?)


七邸先生の掌から雷光が放出される。

その閃光の中、金山の腕がかすかに光って見えた。

鈍い、銀色の光。だが、それには見覚えがあった。


「...金属、か?」


反射的に呟いたその言葉が、胸の奥で嫌な形を結んでいく。

魔法は使えないはずだと思っていた。

でも、もし────

ぞくりと、背筋が冷たくなる。


「...不味い!」


理解した瞬間、全身から冷や汗が流れ落ちる。

魔法は意思をもって初めて発動する。

だが、もしその意思が金山自身のものではないのなら──魔力の供給さえあれば魔法は発動してしまう。

それはつまり、金山の()()()()操っているということになる。


その瞬間、異変が起きた。

本当に、些細なことだった──誰かが喋った。ただ、それだけ。

だが、その一言は...金山の口からこぼれ出ているようだった。


「...面倒だ」


低く、どこか冷めた声。

その口調に、金山本人の意思など微塵も感じられない。

表情は無表情のまま、瞳は靄に覆われ、感情の波一つ起こらない。

おそらくは、別の誰かの存在がそこにいる。

先生もそれは感じたようで、戦いながらも様子を伺っているようだ。


「あまり全力は出したくないんだが...仕方ない。」


空気が震える。

そして、金山の口が、ゆっくりと動いた。


「『完全操作』」


瞬間、目に見えない波動が走った。 それは音ではない。だが、 金山の体から放たれた何か異質なものが、大きな圧を放ったことは確かだ。

次の刹那──その姿が掻き消えた。七邸先生の攻撃をかいくぐり、僕と忍の方へ目にも止まらぬ速度で進撃してきたのだ。


「くっ......『影縫(かげぬい)』!」


忍はその様子をなんとか捉え、足止めを行おうとするが...足に刺さった黒い柱さえも強引にへし折り、速度を落とさずに向かってくる。


「影縫すら突破するのか...」


足止めは通用せず、七邸先生の攻撃すら軽々と躱される。

どうする...僕は一瞬だけ、判断を迷ってしまった。

そのわずかな隙を、襲撃者は見逃さない。

右腕をゆらりと持ち上げたかと思うと、その掌の前に、無数の金属の塊が生成された。

槍のように尖り、刃のように光る。 空気を切り裂く音が、タイムリミットを細かく刻む。


──狙いは、僕ではない。


「......社!?」


状況に意識が追いつくよりも早く、金属の群れは社へと射出された。

俺は止まんねぇからよ...望門達が止まんねぇ限り、その先に俺はいるぞ!

だからよ...止まるんじゃ、ねぇぞ(昇天)


↑文章の短さに対する頭脳労働により過労死した図

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